五十七話
いやっふうう
「守ってくれてありがとう」
とんでもない、むしろ守って貰っていたのは自分である。貧民街で喧嘩に負けた事のない事しか取り柄の中って自分を更生させてくれた上に、重要職に登用してくれたかつての恩義、上流階級の出身でも無ければコネがある訳でもない誹謗中傷に晒された自分を陥れようとする輩からナギサ王女は守ってくれた。今までの恩義の半分も返せていない、それなのに感謝を述べられる。これでは従者としても、男としても失格である。
『う、うォおおおおおお!』
『ス、スライル!?』
「なんだ急に復活したぞ!?」
怪我を押して、血を流して、少女を守るべく、従者として、男として、スライルは立ち上がった。
「渡さない・・・! 祖国も、姫も! かかって来い賊ども!!」
『無茶だ! その怪我でそれ以上動いたら・・・!』
ナギサは大粒の涙をこぼしながら縋るように戦闘の中断を訴える、賊も大したものだと呆れて武器を構える。どちらが勝ってもただでは済まないと言う予想がその場の全員の脳裏に過ぎった瞬間―――
「そこまでだ!!」
「え」
その声に一番近い敵兵が吐血しながら倒れた。暗闇に紛れ姿がいまいちよく見えないが奥の方にも何十人もいる、しかしその声がナギサとスライルには分かった。
「よくぞ立ち上がった、天晴れである」
「あ、あぁ・・・!」
助けに来たのは秘密警察でも青の帝国の兵士でも無かった、見慣れた鎧を身に付けた懐かしい姿。肉親の存在とは追い込まれた時何よりもの心のよりどころになる。
「それで・・・敵国の兵士だ・・・!? 王子の可愛い王女を泣かせたのは・・・!?」
オリオス国第一王子ショウケイ、祖国の武官を連れて窮地に参上、と言わんばかりの気迫である、ショウケイが剣を抜いたのを合図に他の武官も抜刀して怒号を上げて突撃する。戦闘が展開されると同時にショウケイは何よりも先に王女の元へ向かう。
『馬鹿な妹め・・・心配させおって・・・!』
『兄・・・様・・・!』
『フィアー殿が公使館に駆けこんでこなければ私はここに来る事は無かった、本当に無事で良かった・・・!』
「いやぁ副隊長をパシらせて正解だった!」
「じゃあ王子、様秘密警察も戦いますよ」
「ほら立て! まだ戦れるだろ兄弟?」
「フール殿・・・」
差し出された手を取りスライルは屈んだ状態から完全に立ち直る。そして手慣れた構えを取り『B3』の面々に背を預ける。
「その構えってさ、何なの?」
「コレか? 三戦って奴でな、極めると防御力が格段に上がるんだ」
「へぇ、終わったら教えてくれ」
「いいだろう」
「行くぜ!」
戦局はオリオス国の援軍により好転、十分後駆け付けた憲兵や駐屯兵の手によってスクレイパーズは全員逮捕と言う運びになった。
ほっほおおお




