五十二話
チタンぇ・・・
喘息を引き起こした王女の介抱に回った軍人は当然医学の心得なんて無い、ただ慌てふためくしかなかった。
「えぇっとどうしよ! こう言うときってたしかチープ先輩は・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」
以前チープに応急処置の手ほどきを受けた時の事を必死に思い返す。病院に連れて行けと言うのが一番手っ取り早いのだがココから最寄りの病院まではチタンの足でも10分以上かかる、まして人一人抱えてである、その間にもっとひどい症状になりかねないがこのまま放っておくのもマズい。
「えっとこーいう時は・・・!」
暫く思い出す作業で沈黙する。そして一つの選択ルートが現れた。
「人工呼吸・・・だと・・・!」
「はぁはぁはぁ・・・」
人の命がかかっている以上一刻を争う事態である。チタンはとりあえず安静にして苦しむナギサの顔を見つめる。改めて見詰めると可愛い。まずは手当てする側の自分が落ち着く。覚悟を決めて自分に暗示をかけて臨む。
「じゃあ・・・行きますよ・・・!」
「・・・」
無我夢中で気が付かなかった。これがチタンの人生のキス体験だった。瑞々しい唇、艶めかしい(?)息遣い、どれをとっても妄想の産物では得られなかったリアリティを含んでチタンの視覚、聴覚、触角を通して流れ込んで来た。ランで妄想に耽っている時とは別の興奮に目覚めた事に内心恐怖を覚えさえしたが今は目の前の少女を助ける事に集中した。
「っ・・・どうだ?」
「・・・うぅ・・・」
「目覚めてくれ・・・!」
「チタン・・・?」
「っしゃアぁ!!」
目覚めた、歓喜、その一言である。羞恥心を忘れて王女が復活した事にただただ舞いあがった。
「私は・・・」
「あぁ、喘息引き起こしてヤバかったんですよ。ホントすいません、俺が後先考えず走ったりして・・・」
「気にするな・・・私自身の事を把握していなかった私の責任でもある・・・」
「お身体が弱いなんて・・・きょう以降外出は避けた方が・・・」
「構わん、そもそも国法を犯して帝国まで来たのだ・・・多少の危険は承知の上だ」
「しかし、今のようにまた発作が出たら・・・」
「頼む・・・! チタン・・・!」
「え・・・」
王女は泣きそうになりながらチタンに縋って懇願した、訳も分からず再びたじろく。
「私は生まれて13年間自由の無い王宮で過ごしてきてようやく自由を手に入れられた・・・! その自由を手放したくないのだ・・・! 頼む・・・!」
「・・・」
その必死の形相に圧倒されたのではない、不覚にも涙を零す様でさえ可愛いと思ってしまったのだ。言葉を慎重に選び口を開く。
「・・・とりあえず、隊長達と合流しましょう。体調を考えて今日は帰りましょう」
「うむ・・・」
小さな体躯を抱え起こして再び人混みを目指す。走り出す前の様に再びナギサがチタンの袖を引っ張る。
「え」
「その、迷ったらいけないからな・・・保険だ・・・」
「はぁ」
なまじラン一筋な為に男は少女の気持ちに気が付けなかった。何がともあれ歩きだそうとした瞬間を逃さず二人を囲む人影が合った。
おうふ




