四十七話
うううう
忙しい日はその日の内に始まった、一国の王女を何時までもただの練兵所に置いておくわけにはいかんと引っ越しが始まった。非番の兵士はくまなく召集をかけられて重たい荷物を運ばされた。『B3』の面々も人手に駆り出されていた。
「なんで俺らこんな事してるんスかね」
「んーまぁ上手く言えないけどただ突っ立てるよりは良いんじゃないかな」
と、呟いて大人が五人は座れる程度の革のソファーを両肩に一つづつ担いで顔色一つ変えず運んでいるドグマにチタンは改めて畏怖の念を覚える。ニシキに関してはそのドグマの倍以上の荷物を運んでる。あちこちで屈強な男たちが野太い声を上げて重たい荷物を運ぶ様には何処か感じるものがあるチタンだったがこらえて作業に集中した。
「ふぅ・・・流石って言うのか何と言うのかガタイの良い男達が集まれば引っ越しもすぐ終わるな」
「あぁ、山の様な荷物を半日で・・・っていってもB3(おれたち)と平の兵士とじゃ運んだ分量が釣り合わんが」
「俺の方が運んだ方が重たいし量もあった」
「は? 副隊長舐めんなよ? 俺の方がお前より働いた時間長いし」
「俺はスライルと戦った直後で満身創痍だった」
「そもそも人の努力を比べる事がおかしいと思いますー」
お馴染みの副隊長と戦闘員の口げんかが勃発したところでその日の作業は終了した、一応国賓扱いでもナギサの存在は一般には伏せられていた。使節団の滞在期間である三ヶ月間はB3も館に滞在してその周辺の警護をせねばならない、良い様によってはサービス残業的な要素があるが守る要人が二人なら仕事量が減ると密かにほくそ笑んでいるのは何物にも秘密である。
「さて、秘密警察のお仕事はこれからだな、今日から三ヶ月間御姫様を守らねばならないなぁ」
「隊長一人で万事解決な気がしますけど・・・」
「いやキツイって」
「私の出番なんて有りますかね? 御姫様の傍で銃乱射したらそれこそ危ないってもんじゃないですか?」
「お前には柔道があるだろ? 柔道が」
「いやぁ・・・最近腕鈍っちゃって・・・」
「鍛錬が足らんな、鍛錬が」
「そこは隊長が守ってやるって言うとこでしょ」
「ん?」
「何でも無いでっす」
「ん? そうか、じゃあ御姫様へ報告へ・・・」
「はーい」
引っ越しがひと段落したところで国賓のいる部屋へニシキは通訳のチープを付けてそそくさと足を進めた。二階の中で最も奥まった場所にある寝室にナギサとスライルはいた。一礼して話し始める。
「たった今荷物の搬入が終わりました。明日からゆるりとお過ごしください」
「有難う、ニシキ殿、何から何までして貰ったようで・・・」
多少の訛りは有るものの流暢な帝国の言葉でナギサは感謝の言葉を述べた、まだぎこちない様子である辺りまだ完全に習得している訳ではないのだろう。帝国語の分からないスライルは何処か身構えた様子で聞き入っていた。ソレを察したナギサは通訳を入れる。その光景を見て自分の役割を果たそうとチープは二人に近づいた。
「改めまして、私達が本日より貴女方二人の護衛を務めます、秘密警察「B3」その隊長ニシキと通訳兼科学者のチープです」
『聞いておる、宜しく頼む。いざという時はこのスライルもなんなりと使ってくれ』
通訳で数十秒の時間が流れる。会話は再開される。
「それは心強い、スライル氏の強さは既に聞き及んでいます、何でも私の部下を手玉に取ったとか・・・」
『それもそうだろう、何せ私の従者は祖国一の士なのだから』
『ひ、姫・・・』
「ですが私と立ち合った時同じことが言えますかな・・・?」
「(隊長・・・良い性格してんな・・・)」
その一説はあえて訳さなかった。社交辞令を混ぜつつの挨拶を終えて「B3」の二人は部屋を後にする。いずれにせよこれが一つの波乱の始まりである事に違いは無かった。
ああああ




