四十五話
まァぶっちゃけた話
オリオス国の王女ナギサとその従者の青の帝国への密航事件は発見者の『B3』の面々、そして青の帝国とオリオス国の使節団の一部の者にのみ伝えられた。事件発覚後ナギサとスライルは帝国軍の練兵所に一時的に抑留された、スライル個人の計り知れない武力を警戒せよとある隊員の進言からいついかなる時でも対処できるよう戦闘が得意な集団の傍に置かれたのである。抑留されてから3日目にして今日はナギサの兄であり第一王子のショウケイが練兵所に訪れていた。
『ナギサ、説明しろ。何故今回貴様は密航などと大それたことを企てた』
『お兄様。わたくしはただ祖国の未来を案じ青の帝国で学びたく、いやしくも密航と言う形で帝国に参りました』
通訳官は概ねそのように訳した。ナギサの方も腐っても一国の王女と言うべきか、問い詰められるその姿さえも何処か凛としており、聞いた話によるまだ数え年で13歳とはにわかに信じがたい物があった。その長いまつげをぱちくりさせながら続ける。
『わたくしはオリオス国の現状には満足しておりません、殿方のみが権勢を振るい民を虐げる国家を王女として放置しておけません、わたくしが思いますに―――』
『黙れ! 本来女が政に携わる事自体が違法だ! のみならず貴様は王女が国外へやって来るなどと言う大問題を起こした! これは我が祖国にとっても類を見ない事だぞ!』
『危険を冒さずして何を変えられましょうか、そのような女性を排他的に考える保守的な考え方が国の発展を妨げているのです』
『言わせておけば・・・! 祖国ならいざ知らず、貴様は今現在この地においては重罪人と言う事をゆめゆめ忘れるな!』
通訳官を含めオリオス国の言葉が分かる若干名の立会人以外はこの兄妹の会話を傍観せざる終えなかった。口論が止まる事を知らずそろそろ耳が痛くなってきた頃で十将の一員で二番手の神虎がやって来た、外交も司る者としてやってきたのだろう。
「難航しているようだね、ニシキ君」
「えぇ、俺はオリオス語が分かりませんが口論が過熱している事は確かです」
「ふふふ、そうなるだろうと思って。『失礼します、王女様』」
『ん?』
不意に神虎がオリオス語で話し始めたので周囲には一瞬動揺が走ったが神虎は構わず続ける。
『御初目にかかります青の帝国で外交の一切を司る神虎と申す者です、この度はショウケイ王子とナギサ王女の御尊顔を同時に配する機会に恵まれて幸運に思います』
『ソレを言うのなら神虎殿、王子一人と罪人一人であろう?』
『あるいはそうかもしれません、しかし私は今ナギサ王女が罪人で無く一人の国賓として扱われる権利を保障した書状を持っております』
『なんだと?』
すると神虎は懐から書状を取りだし読み上げた。
『一つ、今回青の帝国に密かに入国されたオリオス国第一王女ナギサ及びその従者は罪人で無く国賓として扱われる権利をここに保証する。一つ、滞在中その身の安全は十将およびにその直属の軍隊によって守られる―――と皇帝陛下から賜った次第です』
『ほへぇ・・・』
『そんな・・・本来なら重罪なのになぜ皇帝陛下は・・・』
『軍人の私には陛下の意図は分かりかねます、しかし相手が相手です、言葉は悪いですが、両国の間に余計な溝は作らない方がそちらとしては好都合でしょう?』
それは遠まわしに「お前たちの身など俺達の胸先三寸でどうとでもなるのだぞ、仮に戦いになってもお前らなど相手にならない」と言っている様な物だった。ショウケイは動揺を隠し切れていない一方でナギサはあまりに急な展開を迎えて呆然としている。
『今日中にナギサ王女には相応の仮住まいに移っていただく手筈ですのでコレ似て一件落着と』
『まっ待ってくれ!』
『なにか?』
『本当に滞在してよいのだな!? 私は、私はともかくスライルも!』
『勿論です、その間の安全はこちらの・・・』
「でっすよねえ」
神虎はニシキの肩を掴んみ、ニシキは若干読めかけていた事柄に相応のリアクションを取る。再び振り返って神虎は言う。
『しかし滞在の条件は・・・』
『条件は・・・?』
『政治について学び帰国後祖国でその技量をいかんなく発揮する事です』
モデルは黒執事




