四十四話
完全にあれですよ
1か月以上の船旅を終えて人目を掻い潜りこの薄暗い部屋に潜んで2、3時間、もしかしたらそれ以上経過しているのかもしれない。もうじき仲間は帰って来る筈だがやけに遅いと思っていたら部屋の外で方向が聞こえた、1つは聞き覚えのあるもの、そのほかは知らないものだった。誰かに見つかって戦いに発展したのだろうか? 案じるも確かめる術は無い。ただただ事態の収束を祈り10分は経っただろうか、突然扉がけ破られ光が差し込んだ。銀髪モヒカンの大男がズカズカ入り込んで来る。
「はぁ・・・なるほどね」
「なるほどってどーいう・・・あれ?」
男に続いてその仲間と思わしき2人もやって来る、まさに万事休すであった。
「さて、訳を離して貰いましょうかね? お嬢ちゃん」
「くっ・・・、此処までか・・・」
フールと交戦した男が守りたかったもの、それは干支を1周しているかも怪しい程の歳の少女であった、服装こそ立派であったが短くボサボサした髪の毛がちぐはぐな印象を与えた。
「初めまして、青の帝国秘密警察『B3』隊長のニシキです、ここは貴女のお嬢ちゃんの来るところでは無い筈ですが?」
「スライルはどうした・・・! さっきの叫び声は明らかにスライルの物だった!」
「おっと勘違いなされないよう。質問しているのはこちらですよ?」
「(なるほど、さっきの男スライルって言うのか)」
すると外から叫び声が聞こえた、スライルと言う男の者らしい、怒りと言うよりは何かを心配するような。
「アンタに対するアイツの異常な執着、そして明らかに年上の大の大人を呼び捨てにするお嬢ちゃんの態度。これらから導き出される答えは・・・」
「(そーいうプレイなんじゃねえの? おっと今のはちょっと心が汚れてるな)」
「お嬢ちゃん、オリオス国の者だな、しかも一般人じゃなく王女か高貴な身分の者であっちのアイツは従者ってところか?」
「・・・!」
返事はないが今の沈黙は肯定と取っていい様だ。少女から目を離してフールの方に目をやると、スライルが生まれたての小鹿の様におぼろげに立ち上がろうとしていた。ソレを見下すフールと言う構図であったが、遠目に見ても2人に闘志は消えうせていないのは見てとれる。
「・・・・・・!」
「主人の為に何度も立ち上がる、うん、いいね、そんな忠義に厚い奴がもっと帝国にいたらな・・・って言ってる場合じゃないな」
スライルは折られた右手の指をかばいながら構えを取る、ソレを見てフールは何か思い立って様に上着を脱ぎ始めた、ジャケットを脱ぎネクタイを解くに至り、シャツを脱いだ所でチタンは仰天した。シャツを脱いだフールの肌には1つ5キロは有ろうかと言う重りを視認できる範囲で8つは身に付けていた。
「目測で40キロは有るぞおい・・・どこまで怪物だよフール先輩・・・」
「これ外して戦うのは久しぶりだな。まあ外しても俺の今の体重百125キロだけど」
「あーフールが重り外してる。珍しいねー」
「そーなんスか? ラン先輩」
「そーだよ? 隊長からの命令で鍛錬の為に普段からずっと重り付けてんだ」
「すげぇッスね。さすが怪力無双・・・はニシキ隊長の方だから・・・えっと何だろ、疵面(スカ―フェイス)?」
「ちなみに重りを外すとスピードとパワーが倍になるって言う設定があるらしいよ?」
「うるさい! ある事無い事吹きこむなよ! ラン!」
などと会話を終えたところでフールはスライルと向き合い構える。
「さあて、もう一回だ。さっきみたいに上手くはいかねえぞ?」
「!」
二頭の獣が再びぶつかり合うその瞬間―――
「はーい止めーストップー!」
「「?」」
スライルの仕えていると思しき少女を携えて割って入った。
「こちらのナギサ御姫様が自首することで決着だー」
『姫・・・? 何故・・・!?』
と、恐らくオリオス国の言葉でスライルは呟いた。
あれ・・・




