四十三話
簡単にまとめると
「チタン・・・まだいけるか?」
「いけます・・・けどコレ以上は面倒ですよ・・・?」
宴席に紛れ込んだ不逞の輩の後を付けてみたところ期せずして戦闘の運びとなったフールとチタンはその男と先ほどから拳を交えていた。二対一にも関わらず状況は『B3』側が不利と見えた。二百センチの男を相手取り体格で劣る二人は苦戦を強いられていた、正しくは男の使う武術の動きが余りにも馴染みが無い為に対応し様にも出来ないのだ。フールは上着を脱ぎ腕まくりをして再び構える。
「とりあえずランが増援を連れて来るまでに何とかなるかと思ったが相当な使い手だな・・・動きが洗練されている・・・」
「どんな鍛え方したのか聞いてみたいっすね・・・もっとも・・・」
「!」
男が突っ込んで来る、攻撃を仕掛けて来たのだ。手前にいたチタンに放たれた右ストレートはチタンの頬を掠めて虚空をさまよった、隙を見たフールがすかさず手刀を繰り出した、肘に命中した者の手ごたえがなかった。受けた側に反応が無いのである、まるでダメージが無いかのような。
「ふっ!」
「!」
「観念しろおおぉ!」
チタンの得意技の至近距離からの蹴りとフールの左アッパーが男目がけて放たれる。チタンの蹴りは防がれたがフールのアッパーはクリーンヒットした、それでも男は―――
「うっそだろ、おい・・・」
「・・・」
「(言葉だけじゃなくて常識も通じんのか? この男・・・)」
『B3』内で抜群の格闘センスを誇り一、二を争う怪力の持ち主の攻撃を受けてなお平然を保つ様子に二人は内心恐怖すら覚えていた。男は漆黒の燐光をギラリとフールに定めて一対一に持ち込み攻めを開始した。不規則な軌道で繰り出される攻撃にやはり防戦一方のフールの起死回生の一撃は敵の鳩尾を捉えた、これは流石に応えたらしい。追撃を警戒して敵は距離を取った。フールは呼吸を整えながら尋ねた。
「ッ・・・!?」
「ふっううう・・・強いな、お前」
「・・・」
「シカとかよ・・・まぁしゃあないわな、お前さんどう見ても青の帝国の者じゃないし、肌の色からして明らかに南方の者だ」
「・・・」
「そして、その独自の格闘術を取ってみても体系が俺やチタンのカラテとは根本から異なる、言葉が通じないお前に言っても無駄かもしれんが、お前やっぱりオリオス国の者だろ」
「(先輩・・・今追撃のチャンスじゃ・・・)」
フールの推理ショーは男に言葉が通じれば少なからず心理的に追い詰められたかもしれないが、通じない以上何の意味も持たない一人ごとにすぎないのだが先輩の少し得意げな顔を見て止めるに止められなくなったチタンであった。一方男は息こそ切らしてはいるもののまだ体力に余裕は有りそうな様子であった。
「さあて十分休んだだろう? 再開しようや」
「!」
その一言で戦闘を再開した二人をしり目にチタンは先ほど男が入ろうとしていた部屋に何かあるのではと調べに行こうと踵を返した、すると―――
「ま・・・待て!」
「あ、ちょおま! 中断とかすんなし!」
「え」
男が突然戦闘を中断してチタンに向かって走り出し攻撃した、攻撃をかわす刹那に二人は確信した、『あの部屋に何かある』と。
「黒だな、チタン」
「ええ黒ですね」
「黒だ、良くやったお前ら」
「あ、隊長。ラン先輩も」
不意にチタンの肩に手を置いた人物はランの一報を受けて増援に賭けつけたニシキとランだった、鋭い目つきで敵を舐めまわす様に観察してからニシキは言い放った。
「おぉ・・・久しぶりに見たぜ・・・あんな純度の高い実力を持った男は・・・」
「そこまで言いますか?」
「間違い無い、最強の俺が言うんだ、間違い無い」
「ははは・・・最強・・・」
ややツッコミどころのあるやり取りを終えてニシキは二人を押しのけて男に近づき話しかけた。
「よう、次は俺と闘ろうぜ?」
「っ!」
野生の本能か、防衛本能なのか知る術は無いがニシキの圧倒的強さを悟った男は正拳突きを繰り出すが、風船でも掴むかのようにニシキは受け止める。
「あれれ? 不思議だな今度は当たらないね?」
「!?」
「せーの」
「ぐあっ!!?」
何の躊躇いも無く右手の指を潰した、苦痛に悶える男をよそ眼に歩みを進め、ドアの前に立つと蹴りを一発繰り出して扉を吹き飛ばす。十秒ほど見渡して葉巻を取りだして火を灯しながら言った。
「ははぁ・・・なるほどね・・・」
フールを一人見張り役にしてランとチタンは部屋を除いた。
チタン→❤→ラン→❤→ニシキ




