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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
北方騎馬民族連編
35/65

三十五話

突然の・・・

 気が付いたらランを押しのけてトウジンの胸ぐらを掴んで戦闘時と同じ目つきで怒鳴っていた。自分の事は何を言われてもいい、しかし仲間や隊長の事を侮辱された事で怒りが臨界点を迎えた。



 「てめぇ今なんった!」

 「は? 離せよ、その手」



 この大声に流石に周りも見逃すわけにはいかず辺り一帯の視線は三人に注がれる。ざわつく周囲をよそ眼に二人は加速する。



 「一応確認するけどそれって宣戦布告? 言っとくけど俺強いよ?」

 「関係ねえなぁ。敵う敵わないは別だ、俺は単純にムカつく野郎に喧嘩売ってるだけなんだわ」

 「ふっ、人狼って言うより、野犬だな」

 「喋れなくしてヤンよ」

 「フフッ。戦争たたかいよりも実戦けんかの方が得意って顔だな。俺もだけど」



 チタンがトウジンを突き放した刹那、二人は拳が交える体制を整えた。一瞬にして距離を縮め打ち合う。背が高く上から攻撃するトウジンと相手の攻撃を防ぎつつ攻撃しなければならない不利なチタンの武器、それは―――




  「っラぁあ!」

 「っ!」



 異常に打点の高い超至近距離からのハイキックがトウジンの顔面に決まる。よろめく敵に近寄るチタンだったが思いのほか回復の早かった敵はこちらの反応よりも早く反撃して来た。



 「なめんな人狼!」

 「!?」



 スピードに自信のあるチタンが攻撃を捌き切れなかった理由、それはトウジンのファイトスタイルにあった。青の帝国近衛部隊の隊員として一通りの格闘技を習得しているトウジンが選択したのは格闘技最速のコンビネーションを誇るジークンドー。チタンは空手をベースとする徒手空拳、しかし速さと言う点に置いて速さに勝る縦拳を使うトウジンの拳がコンマ0.1秒で勝りチタンを捉えたのだ。



 「ちょ、二人とも! こんな所で止めなさいって!」

 「ぶっ殺す!」

 「かかってこいや!」



 足を止めて更に打ち合う二人を止めるすべはないように見えた、むしろ周りは面白がって囃し立てている風にさえ見えた。二人を引き離そうにもランには入り込む余地は無くもう暴走は止まらないかに見えたが――――



 「止めろ! 二人とも!」

 「「は?」」



 良く通る怒号が轟いた。全員がその方向へ振り向くと三人の人物がこちらに歩みを進めていた。そのうち二人はニシキとレイで知っていたが真ん中のもう一人は知らなかったが周りは何やらただ事ではない様子でたじろいていた。その訳はトウジンの様子を見ればすぐに察せた。


 

 「マスタング・・・長官?」

 「え・・・」

 「貴様ら、陛下が用意して下さった宴で乱暴狼藉を働くとはどういうつもりだ? 返答次第ではただではおかんぞ?」




 その場にいる誰よりも長身の男、ガタイだけならニシキを遥かに上回る分厚い男、両腕とも義手の男。視線を言ってに受ける男はチタンが今戦っているトウジンの親玉に当たる人物、青の帝国で最も皇帝に近くにいる男は早足で二人に近づくき、そして厳かな声で言った。



 「トウジン、どういう次第でこのような事態になったのだ、説明しろ」 

 「長官・・・それは・・・」

 「どうした口を開け」 

 「そのモヤシがウチの先輩をたぶらかしてたんです」

 「なに?」



 自分でも分からない、余りにも突然過ぎた展開に思考は追い付かないがチタンはトウジンを貶めるのに有効そうな言葉を発していた。マスタングは眉間に皺を寄せてチタンに問いかけた。問われた側は極めて冷静なのか頭が沸騰したように混乱しているのか分からないまま返した。



 「ハイ、この目で見ました。その男がウチの先輩にちょっかいを出していました、先輩も迷惑そうだったので仲裁に入ったら逆行した相手が突っかかって来たので口論になり今に至ります」

 「チタン・・・?」

 「人狼てめえ! でたらめ言ってんじゃねえ!」

 「は? こっちが手を出させる理由を作ったのはソッチだろうが?」




 生憎な事にマスタング達駆け付けた三人は一部始終はおろか事の起りすら見た者はいないのだから当事者たちの証言を頼りに判断を下さねばならない。客観的に見て正当性のあるチタンの肩を持つのは仕方のない事なのだがトウジンはソレが不服なのは言うまでも無く火が付いた様に反論して来るが、もはや耳を貸す者などはいなくマスタングは判断を下した。大きく腕を振り上げたかと思えば大振りのパンチをトウジンに喰らわせた、鈍い音と共に衝撃で数メートルも大きく転がりながら吹き飛んだ。





 「今回の事案、俺の権限でこの一発で不問とする・・・! 頭を冷やせ・・・!」



 爆発寸前、と言う言葉が皆々の脳裏に過ぎった。今度はチタンに歩みを進めたかと思うと突然しゃがみ込み胡坐をかきランとチタンの二人に深部下と頭を下げた。




 「『B3』の御二方・・・ウチのモンがとんだご迷惑をかけちまったようで・・・面目もない、どうかお許しいただきたい・・・!」

 「「え」」

 「マスタングさん!」



 この光景に一番動揺をしているのは殴り飛ばされたトウジンでも、仮定被害者のチタンとランでも、周囲の軍の関係者でもなく、秘密警察の最高責任者であるニシキだった。今までに見たことも無い焦った様子で駆けよって来てチタンの頭を強引に掴み床に押し付けて自分も頭を付加部下と下げてこう述べる。



 「面目ないのはコッチの方だ! ウチの新米がとんだ無礼を働いてしまった、詫びるのは近衛部隊そちらじゃなくて秘密警察ウチの方だぜ!」




 この間僅か四分強、宴は突如としてカオスな空間に様変わりし『B3』は途中退出、警備に当たっていた近衛部隊一部の関係者も一部撤退と言う形で収束した、ニシキに叩き付けられて気絶していたチタンは約一時間後に目を覚ましてニシキに散々叱られ、顔面に一発貰ってまた気絶した。

おうふ

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