三十二話
おしさし
秘密警察『B3』を含む青の帝国遠征軍は西涼の地より帰還した、一足先に向かった早馬によって勝利の報告を聞いた皇帝は軍の面々を労うと宴を設けると言い今回の戦いで指揮を取っていた七将レイ始め遠征軍の幹部を呼び寄せた、その中には当然秘密警察のメンバーも含まれているのは言うまでも無い。
「あー・・・なんて言うか慣れませんね、正装なんて・・・まぁ軍服ですけど」
卸したての軍服に袖を通しながらチタンは呟いた、ソレを聞いて妙に着こなせているニシキは言う。
「慣れだ、慣れ。俺も最初は慣れなかったけど回数重ねてるうちに板について来たぜ?」
「そんなものなんですか?」
「そんなものだ」
ニシキの軍服の胸にはやたらギラギラした勲章が数多付いていてその数だけの武功を立ててきた証拠である。やがて着替えを終えた男組は更衣室を後にしてまだ着替えを終えていない女性組を待つ構図となった。普段と変わらない様子で葉巻に火を灯すニシキにある男が話しかけて来た。
「火、貸してくれませんかね? ニシキ君」
「ん? あぁ神虎さんか、どうぞ」
声をかけて来たのは若干ニシキより背の低い中華服の男性だった。チタンを除いてフィアーはじめ先輩たちは一斉に姿勢を正してにしきの後ろにつく。いまいち状況を理解できていないチタンにフィアーが耳打ちで教えてくれた。
「(馬鹿野郎! 早く並べ! 副将神虎さんだぞ!)」
「え」
指摘されて始めてチタンの中での神虎の名と顔(覆面をしている様な物だが)が一致した。ばったり道端ですれ違って様な感覚で話しかけて来たこの男こそが帝国軍の実質的な二番手の軍師である。そうと分かるや否やチタンも列に加わる。
「ハハっ、面白い狼を飼っているのねニシキ君」
「いやー飼いならせば中々使い勝手が良くて助かっていますよ、噛みつきませんし。はいどーぞ」
「そりゃあ良かったね、どーも」
自分の煙草にニシキの葉巻から火を移した神虎は大きく吹かしてから言う。
「それにしても今回は驚かされた、まさか一か月かからず敵を降伏させるなんて僕にも易々と出来る芸当では無い。もしかしてニシキ君は軍師の素質もあるのかな?」
「いやはや! そんな過大評価ってもんですよ! 俺には敵とドンパチする方が性に合ってるんで」
「フフッ。君がそー言うのなら別に強制はしない。一隊長に留まらず将軍号もゲットできる実力なのにもったいないと思っていたんだ」
「御気使い痛み入りますな」
なんて会話をしている内に神虎は突然時間を気にしだしてツァオと合流せねばと足早に去って行った。いったいなんだったのだと思っていたチタンをよそ眼に女性組がやって来て秘密警察勢は祝賀パーティーに向かってゆくのだった。
さよなら




