三十一話
二○の極み!!
「撃ち方用意ッ! ・・・ッ撃てェェェ!!!」
乾いた音が木霊すると同時に鉛玉が連射される、直線上に飛び込むのは北方騎馬民族連の十八番の騎馬隊である。吸い込まれるように弾が命中した騎馬兵隊たちが一斉に馬と共に倒れる。後続の敵兵が続々と屍を乗り越えて来る状況にジゥは慌てずに指示を下す。
「一列目下がって弾込め、二列目あがれ!」
鉄砲を持った兵を三列に分けて、一列目に何時でも発砲可能にして、二列目は一列目が弾切れになるまで待機、三列目は弾込め、と言った風に並ばせて向かって来る敵に対抗する策である。何故青の帝国への降伏が決定した北方騎馬民族連が攻めてきているのか。簡潔に言って盟主マースイは部下の説得に失敗して降伏に一部の反対派の者がこうして特攻を仕掛けてきていると言う事である。
「くそ・・・! きりが無いな・・・!」
敵の余りのしつこさに百戦錬磨のジゥも流石に愚痴をこぼす。レイに指揮を任されている以上は命に代えてもこの場で敵を食い止めると決めている。自身も銃を抜いて応戦するが暫くは敵の攻撃がやむ気配はない。すると。
「お」
突然一体の騎馬兵の頭部を一発の銃弾が撃ち抜いた、明らかにジゥの率いる隊の放ったものではない事は撃たれた方角から察する事が出来る。その銃弾を放った人物が誰だか分かるのに時間はかからなかった。
「レイ将軍・・・か」
離れている敵を遠方から一方的に攻撃できる事が狙撃手最大の魅力とレイが語っていた事をジゥは思い出す。ちなみに件のレイが居るのはこの戦場から二、三百メートル離れた場所である。開戦時と比べて敵は帝国側の防衛線に近づいている。やがて弾薬が底を尽きかけた時遂に敵の騎馬隊が弾幕をかいくぐり突撃して来た。
「副将ジゥ覚悟ォォォオ!!」
敵の一人がジゥ目がけて咆哮する、しかし。
「はい、御苦労さん」
「うあああああぁ!」
両者の距離が百メートルを切った時点で急に爆音が木霊する。真っ先に突っ込んで来た先ほどの騎馬兵が地雷を踏んだのだ。馬ごと爆発と共に吹き飛ばされた騎馬兵もとい焼死体は後続の有象無象の中に紛れていく。今さら引き返せす事も出来ず勢いづいている騎馬隊はまさに飛んで火に入る夏の虫といった具合で次々に地雷原の餌食となっていく。
「突撃だ!」
「かかれえええ!!」
爆発で馬と機動力を失った負傷した敵目がけて帝国軍の歩兵隊は一斉に切りかかった。馬が無ければただの近接接戦闘に不慣れな負傷兵の集団である。技術力に劣る北方騎馬民族連の片割れと技術、人数ともに勝る帝国軍との勝敗は火を見るより明らかだった。この一戦を区切りに帝国軍は西涼の地から撤退し始めた。開戦から僅か三週間の事であった。
片割れを討伐し終えたジゥ始め、帝国軍側にもこの不自然とも言える北方騎馬民族連の開戦から降伏までの速さに疑問を抱く者も少なくない。秘密警察の活躍によるものだと言う事は帝国軍には広く浸透しているがその早技には何かカラクリが隠されているのではないかと噂されている。しかしその真相を知る者も、知る術も無い事は言うまでも無く、この戦いは不透明さの残ったまま終結したとしてその後語られるのだった。
北方騎馬民族連編・完・
アぁー!!!




