二八話
おう
「ん・・・・・・」
朦朧とする意識の中で発する事が出来たのはこの一言だけだった。ヒスイは段々と気を失う前の記憶をパズルを当てはめるように取り戻してゆく。完成したのは敵と遭遇した自分と部下の光景だった。ここでヒスイの記憶は鮮明になった。
「あ!」
辺りを見渡すと見慣れた幕屋の中だった。寝床の傍には胡坐をかいた弟が居た。
「体、大丈夫? 姉ちゃん」
「え、あ・・・うん、てかアンタこそ大丈夫?」
「うん、思ったよりは」
マースイはニシキとタイマンを張って惨敗した、左目には分厚く包帯が巻かれており、体中打撲箇所に薬を塗られたせいなのか若干薬品の臭いが鼻にしみる。ヒスイは自分が気絶世てからの事の顛末を懇切丁寧に聞かされた、そして最後の言葉に驚愕する。
「え、それ・・・本当?」
「間違い無い。親父の言っていた事と照らし合わせたけど偽物では無い。ニシキさんは―――で間違い無い」
「そーだったんだ・・・でもなんで・・・」
「姉ちゃんが思っている事は今夜の話し合いの場で俺が聞いてみる。謎はまだまだあるけどとりあえず親父の悲願とやらが達成されるかもしれない」
「そう・・・か、父さんの悲願ね・・・」
この秘密警察『B3』ニシキと金剛族先代族長カンスイの関係、その背景での出来事に関して気がかりな人はいるだろう。ここで二人の話を掘り返せばとてつもない長文になるのでまたいつか話せる機会に一つの編として書きたいと思う。
「はーい作戦会議始めまーす。んじゃあフィアー君号令を」
「起立、礼、お願いします」
何故か学校の様な始めり方をした『B3』の作戦会議に誰も疑問を抱くものはいなかった、概ねニシキの気まぐれなのだろうとしか思っていない。
「今から数えて三時間後の北方騎馬民族連の族長との会合に際してですが連れて行くメンバーをまずは決めたい、んじゃあ来たい人挙手」
その一言で全員が挙手する。午前の戦いでは出番の無かったフィアー、ランを始め、まだ戦い足りないフールとチタンとドグマ。そのドグマに付いて行きたいチープ。流石に全員は連れていけないなとニシキは口を開く。
「えーと落ち付け? んじゃあまず俺の留守中を託せる人間は副長のフィアーしかいねえだろ? あとドグマは今日既に活躍しているから留守番、フールも同じ、じゃあ残ったチタン、ラン、チープか・・・」
三人手を降ろしてから腕組みをして考える。三十秒後。
「そうだな・・・じゃあチープとチタンだな」
「はい」
「了解です」
小回りが利いて戦場を駆けまわれて奇襲に速攻で対処出来るチタンと負傷した場合に医学の心得があるチープは選ばれたのだろう。かくして会議の本命の議題はあっさり結論が出て終了する。会合までに大分時間があるので仕方なく三人は仮眠を、他のメンバーは鍛錬したり、談笑したりするしかなかった。
あう




