二十五話
眼鏡が出土した
「秘密警察『B3』御一行御到着です!」
「来たか・・・」
そう言ってレイは葉巻を灰皿に擦り付けて消火してソファアに体を深く委ねて一行の到着を待つ。やがて部下の案内で幕屋に入って来た『B3』の先頭の男にレイは毒づいた。
「おいニシキッちゃんと可愛い妹と上手い酒持参したんだろうな?」
「それは当然です将軍。後ほどユルリと嗜みましょう」
「じ、持参したかって・・・私は物かっ・・・」
レイの言葉に反応した秘密警察『B3』の狙撃手のランだった。十人の大将軍七番手の妹はどうやら酒とたばこなどと同じ感覚で扱われているらしい。社交辞令的会話はここら辺にして両者は仕事の話に突入した。
「まぁ今回、秘密警察に加勢を頼んだのはアレだ。隠密行動が得意なお前らに破壊工作を頼みたいって話だ」
「外交官兼スパイですね。任せて下さい」
海賊に続いて騎馬民族との戦いに参戦したのは三か月前に山賊相手に壮絶な戦いを繰り広げた秘密警察『B3』だった、表立ってのドンパチはレイ達が引き受けてニシキ達が裏で上手い事やるという作戦だった。相手を上手くやり込めて降伏してくれたら万々歳、拒まれたら敵の大将に毒を盛るなり様々なやり方が存在する。
「んでニシキよ。私の可愛い妹を今回も捕虜役なんかに使うつもりじゃねえだろうな?」
「っ・・・いやあの時はあの作戦がベストだったと判断しまして、部下もその事を覚悟の上で軍人をしていますので」
「ほぅ・・・今から貴様と一戦交えてもいいんだぞ?」
「そうなれば―――」
ニシキが言いきる前に後方に構えていた、フィアー始め戦闘員達が武器に手をかけて臨戦態勢を取っていた、若干ながらチタンは出遅れて少し恥ずかしい思いをした、レイの発した『捕虜役』と言う言葉の意味について考えていたからである。張り詰めた雰囲気が場を支配する、だと言うのにニシキは笑顔を絶やさずに平然と言い放った。
「仮に一戦交えようと仰るのならば私どもでは実力不足でしょう。他のお相手をお探し下さい」
「ふん、なんだジゥにも劣ると言うのか。んな訳あるか」
レイは親指で自分の傍に立つ男を指して言う。アンダーフレームの黒ぶち眼鏡をかけた痩躯の男はジゥと言ってレイの腹心だった。役職は狙撃部隊の副隊長、『B3』で言うフィアーと同じポジションであるが仲間にイジられたりしない真面目を絵に描いた様な真人間だと言う。
「まぁこの位にしておこう。さぁ座れ」
「痛み入ります」
チタン以外の隊員は対して思わないが普段自由奔放なニシキが年下に対して慇懃な敬語を使用している事にチタンはどこか違和感を覚えていた。ニシキ始め『B3』の隊員が席に着く中一人分席が足りない事が発覚した。歳と階級で言えばチタンが一番下なのでランに何か一言添えて席を譲ろうとしたチタンだったが―――
「あぁーラン。お前の席はココな」
「将軍・・・」
そう言ってレイが促したのは自分の座っているソファアだった。自分の左隣の位置を手でポンポンしながら早くしろと目で催促して来る。流石のランも立場を考慮せず姉妹として意見する。
「ここは戦場なんだよ!? お姉ちゃん!」
「普段一緒に過ごせない分ココが戦場だろうが私は姉としてお前と一緒に過ごす時間を確保したい。さぁ座れ」
「ちょ、後輩もいるんだから・・・」
その後結局ランが折れてレイの左隣にチョコンと座った。レイの左腕がランの肩に絡み付き密接な体位が完成したところで本格的な作戦会議が始まる。ランが赤面しているのは言うまでも無い。
「今回の最終目的は敵勢力、北方騎馬民族連の全面降伏か殲滅だ。降伏勧告は『B3(おまえたち)』に一任する、殲滅に関しては私たちが全力で叩きつぶす」
「それについてですがレイ将軍」
「なんだ?」
「今回我々は正式な外交官役ではなく隠密役という解釈でいいですか? 恐れ多くも青の帝国の代表として敵大将に見えた方が穏便に済むかと」
「ふむ、そこだよ問題は。角が立たないのが理想だが、降伏したのに理不尽な扱いをしては後々の災いを生んでしまう、なので予めツァオに相談して条件を提示しておこうと思った」
そう言ってレイは何かの書面を取りだして広げる。そこに書かれていた内容はこうである。
「『貴殿らが青の帝国に全面的に降伏するのならば以下の事を保証する。一つ、北方騎馬民族連及びバジュラ族族長マースイは青の帝国に服従した物として皇帝に伺候して礼をもって拝謁し、以後帝国の矛となり、盾となり忠義を尽くすならば所領の半分は保障する。二つ、所領の半分を差し出し残りの土地の自治権を認める。三つ、親族を人質に差し出して忠誠を示すなら以後両者は刃を交えず普遍的な平和を保障する』・・・ってさ」
「成程・・・筆頭は寛容なお方ですな」
「ツァオの野郎は基本的に敵に情け容赦無いからな。これは物凄く優しいと言える」
「その条件を提示して交渉してみます」
「頼んだ。お前たちは基本的に戦う事はない・・・のかな?」
「まぁもし戦わざる終えない状況に陥っても御心配無く。私の部下はそれなりに強いですから」
「まかせたぞ、ニシキ」
会話自体はシリアスその物だがレイは会話の先頭からずっとランの頬を真顔で抓ったり引っ張ったりして弄り倒していた。その場の全員、チタンを除き冷静に会議に参加していた。
「物見の報告によれば敵陣地に参陣する一行があったとのことです」
「ほう・・・敵の精鋭部隊か・・・?」
「精鋭は精鋭で間違いなさそうですが」
「どうした?」
「精鋭は・・・七人の男女でした・・・」
「なに?」
部下の報告を聞いたマースイは耳を疑った。たかだか七人増えたところで何が覆ろうか。十万人の北方騎馬民族連に対し青の帝国軍は十五万と七人・・・何か特別な作戦でも練っているのだろうかとマースイは頭を捻るが特には思い付いたりはしない、深くため息を落としてから部下を下がらせて暫く一人で考え事をしてみる事にしてみた。
「ふむ・・・作戦の見直しが必要だな」
マースイは書簡を開いて紙を別に用意する。隊を組みなおす事にした。
「(まずは我が軍きっての精鋭部隊の編成だな。姉ちゃんを入れないと面倒な事になるかな・・・姉ちゃんを隊長として部下は大体振り回しやすい八千人だよな。騎兵が六千人、長槍隊が五百人、歩兵が五百、鉄砲隊が千人かな)」
紙に大体の変更点を書き込んだマースイは間髪いれずに次の変更を考える。そんな作業を一時間も続けて自分の思いつく限りでの改善点と変更点をまとめ上げた後に幹部の集う会議で発表して討論をする予定である。筆をおいて小休止した。身長が二メートル三センチもあると座高も馬鹿に出来ず猫背にならないと机上の紙面に文字が書けないのだ、その為に背中への負担はかなり大きい。
「おーい入るぞ」
「ん」
一息ついていた矢先に姉のヒスイが入って来た。何事かとマースイは姿勢を正す。
「どうしたヒスイ将軍」
「あーアレだ、物見の報告で敵さんが軍を分割し始めた」
「そうか・・・本格的な攻撃が近いのかな・・・」
「だから気を引き締める様に言ってくれ、ってなんだその紙は」
「あぁコレは―――」
かくかくしかじか説明がなされた。ヒスイは頷いて話しだす。
「うん良いんじゃないか」
「じゃあ幹部との会合を介してコレで決定だな」
マースイは書簡を丸めて机の隅に置いて再び楽な姿勢になる。ヒスイも近くの椅子に座って少し歓談した。
「姉ちゃんさっきまで鍛錬だったの?」
「あぁ、若輩どもを鍛えていたがすぐバテやがる。徴兵される前まではロクに剣を握った事の無い輩だから無理も無いが」
「姉ちゃんまだ二十四だよね・・・」
「戦いのキャリアは断然私の方が上だ」
「そうだったね・・・」
「見ろ、この鍛えられた体」
「いや俺の方が腕太い」
「なにぃ」
マースイは自身の上腕二等筋を悠然と見せる、それにヒスイは対抗心むき出しで突っかかって来る。
「くそぅ、弟何時の間にそんな逞しい体になったんだ・・・」
「努力叩き上げです」
「いつもいつもその肉体を上半身裸で見せびらかしやがって・・・」
「サイズが合わないんですー」
「私も脱ごうかな・・・」
「マジでヤメテ」
ヒスイが振り返って衣服を脱ぎ背中を半分見せた所で制止が入る。うなじが凄まじく卑猥だった。流石にマースイには劣るとしてもヒスイもかなり高密度に発達した肉体を持っていた。
「それにしても弟よ。この曇天のなかそんな恰好で寒くは無いのか?」
「いや肌寒いかな、流石に」
「そうかそうか。じゃあ姉が温めてやろう」
「え」
そう言ったヒスイは弟の右腕に纏わり付いて体を押し付ける。体温よりも柔らかさが鮮明に伝わってくる。
「胸当たってる」
「当ててるのだ」
「・・・」
くどいようだがここは命のやり取りをする戦場である。
北方騎馬民族連盟主、バジュラ族族長・マースイ・(23)
2メートル3センチ
129キログラム
特技・乗馬、槍術、料理
股下・一メートル二十センチ
(VC・未定)
B型
北方騎馬民族連の盟主にして名門騎馬民族バジュラ族の若き族長。筋肉隆々とした肉体に刺青が特徴の巨漢、常に耳当てを付けている。姉のヒスイから溺愛されており少し戸惑っているが甘んじて受け入れている。幼いころからナイーブで周りから将来を心配されていたがやる時はやる性格の様でピンチの時には必ず駆け付けてくれる事で部下たちから慕われている。先代の急逝から逞しくなってゆきいつの間にか姉の身長を追い越していた。『B3』のニシキとの知られざる縁については作者のみが知るところである。
北方騎馬民族連副盟主・ヒスイ・(24)
183センチ
?キログラム
特技・懸垂、乗馬
(VC・沢代みゆき)
B型
Iカップ
マースイの姉、男勝りな性格にしなやかな長身に刈り込んだヘアースタイルが目印。両親を早くに失っており親代わりに弟を溺愛しており母性が働いているのか十代前半で既にDカップはあったらしい。幼い頃は典型的な男の子になりたいから男の子と遊んでいた女の子で成長と共に伴って来る女性らしさに抵抗を抱いていたが弟にとって母親代わりになってやろうと決してからはややズレているながらも常に気を配っている。裸眼での視力が少し弱く文明の利器である眼鏡を24歳の誕生日プレゼントに弟から貰って以来大切にするあまり使うのを躊躇っている。
どう頑張っても小学生低学年男子の眼鏡はダサい




