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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
蕉海ウォー・タイプ海賊団編
24/65

二十四話

馬ってイイですよね。かっこいいし、美味しいし

 今回の戦で帝国は騎馬兵を主力とする北方騎馬民族連に対して近代兵器を整えた七将レイ率いる狙撃部隊中心に編成した軍隊をあてがった。人数は北方騎馬民族連が十万人に対して青の帝国は十五万人と揃えて来た、しかし数の差を地の利で覆す事は出来まいかとマースイは考えていた。帝国あいての具体的な戦力はまだ情報が十分ではないが少なくとも騎馬を扱うこちらが機動力では上回っている筈である。なんて事を考えながら今日は布陣を特に変更することも無く敵と睨み合いが続いただけで大した動きも無く夜を迎えた。



 「姉ちゃん・・・くすぐったくない・・・?」

 「平気だ。動くなよ? 変な所に当たったら痛いぞ?」

 「うん・・・」



 族長のプライベートが詰まっている完全個室の天幕では何の変哲のない普通の姉弟の風景が広がっていた。膝枕されているマースイのポニテがヒスイの柔らかい太股をくすぐっていた。、ヒスイはムズムズするのをこらえて耳掻きを動かして耳掃除を続ける。



 「敵さんは今日も睨みを利かせるだけで動かなかったね・・・」

 「まぁ敵の性格な力の分からない内は戦っても無駄な戦力の消耗だからな、十分に偵察をしてから攻めて来るのかもな」

 「なんか俺、先代おやじの名前だけで族長になったばかりか連合の盟主になっちまったけど。どう考えても姉ちゃんの方が適当だよね」

 


 マースイは姉の膝を指先でなぞりながらボソボソと言う。


 「くすぐったいぞ、弟よ。そうは言ってもわたしは女だ。鉄の掟で女は戦えても族長にはなれない。いかに私が男っぽい格好しても根底は覆せない、月に一回の出血も―――」

 「やめて、そのネタは」

 「ハハっスマンな」



 マースイは2メートル3センチの長身に上半身に肩、三角筋、顔を中心に刺した刺青タトゥーが西涼最強の戦士の名に疑い無い物々しさを語っていた。見た目通り槍使いの実力は申し分ないが生まれ付きナイーブな性格が災いして何処か積極的になる事の出来ない事が周りから心配されていた。そんな息子を案じてマースイの父親、つまりは先代はあらん限りの英才教育を施し立派な次期当主に育て上げた。昔から活発な長女ヒスイを次期当主に推す派閥は確かに存在したが先代は掟に物を言わせてねじ伏せてマースイを育て上げる前に急逝した、若い頃からの苦労が祟り病気で没したのだ。



 先代が没してからはバジュラ族はマースイの時代となった。姉のヒスイは将軍として弟を支え以来今日まで姉弟二人三脚で頑張って来た。そして現代の乱世に陥って連合軍に味方すると決定して今は青の帝国と相対しているのだ。今までにない敵の規模に不安を禁じ得ない現当主は普段通り平生を装いつつも軍務の合間に必ず訪れる姉との二人きりの時間になってはこうして内心を素直に告白しているのだった。




 「大きくなったけど、お前は変わらんなぁ。何時までも姉に甘えてちゃいかんぞ?」

 「甘えてねーし」

 「父さんが生きていたらって考える事が無い訳でもないが死者は生き返らない。私たちは私たちが信ずる道を行くだけだ、若かりし頃の父さんの様にな」

 「東の地で仲間と暴れまわって義賊やってたって聞いたけど。俺は病気しがちな親父の姿しか知らねえや」

 「そーだな・・・ハイッ耳掃除終わりっ。起きろ? ロン毛」

 「ポニテだし・・・」



 そう言い返してマースイは耳当てを付ける、中々ベストフィットのポジションが見つからず苦戦したがやがて落ち着く位置を見つけて手放す。グッと伸びをしてもう遅いので配下の陣を見回ってから寝ようかと思い立った矢先にヒスイが突然横に並んで来た。



 「ん?」

 「あぁーやっぱデカイわ。何だよ二メートル越えって私がチビに見えるだろ」

 「いや、姉ちゃんも十分大きいじゃん・・・」



 その通りヒスイは女性ながら183センチの長身で鍛えられた逞しい体つきだった、当然その体よりも胸に目が行ってしまう事は言わないのがマースイの中の暗黙の了解である。左の側頭部を刈り込んだモヒカンもどきのボーイッシュな髪型が中々受けが良く男勝りな性格と精悍な顔立ちから女として見られた経験が少ないが女性としてはかなり美系な部類だろう。



 「そんな巨体じゃ馬がすぐに疲れちゃうだろ縮め」

 「無理です」

 「くっそ! 小さい頃はあんなに可愛かったのに! 縮め! コラ!」



 そう言ってヒスイは両手で頭を掴んで上から圧力をかけて来る。予想外の馬鹿力に思わずマースイも体勢を崩すが何事も無いかの様に抵抗しない。もしも戦士としてではなく普通の家庭に二人揃って生まれていたら・・・、なんて事を時々マースイは考える。戦いの無い平和の内に暮らせていけたらどれだけ幸せな事だろうかと妄想しては結局は戯言にすぎないと決めつけて槍を振るっている。明日こそ敵と戦う事になるのだろうか、そうだとすれば自分が仲間やヒスイの事を守り抜かねばと決意を胸に灯すマースイだった。

 

馬刺しうめえ

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