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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
蕉海ウォー・タイプ海賊団編
22/65

二十二話

ワン●-スって、昔の方がおもろかった

 中国後漢王朝の末期の208年の七月の事。河北を平定した魏の曹操は南下を図り長江の赤壁で呉の孫権、後の蜀の皇帝劉備連合軍と激突した。数で圧倒的に劣る連合軍の作戦は火攻めだった。劉備の軍師諸葛亮と呉の周喩が考案した策で、風向きが変わるのを待ち風下に陣取る魏軍の水軍へ火を帯びた船が突撃して一気に燃え上がった曹操軍八十万は大敗北を喫した話は今日でもメディアなどでも取り上げられて有名である。



 今まさに業火を眼前にしたウォー・タイプ海賊団はさながら曹操軍だった。退路は無く引き返せない状況に都合よく策など浮かぶ筈も無くいよいよシュウは『自分がもっと早く気が付いて対応していれば・・・』という責任感と罪悪感と緊張感から気が触れて部下に介抱されている始末である。



 「兄ちゃん! 後続へも連絡して来た! 大船長も今幹部に指示を出している! 策は・・・兄ちゃん!?」

 「ユウの兄貴! 副船長がおかしくなりました!」

 「はぁ!? この緊急事態にか!? おいしっかりしろよ!」

 「ふふふふふふふふふふふッ! お魚! お魚!」

 「ダメだ! 十三歳の時暗記物に没頭して頭がパンクした時と同じだ!」

 


 突然頼れる上役の精神的な負傷に海賊達は不安を抱えた。ユウはシュウの事を思いっきり殴ってみるが危機は覆りそうにはない。やがて早足で包帯を巻いたままのハイルイが甲板にやって来る。



 「お前たち! 状況を報告しろ!」

 「あっ大船長! 敵の奇襲で陣形が崩れてるんですけどそれ以上に兄ちゃんの頭がッ!」

 「は、何言って・・・それ以前に早く炎上している船の消火活動の援護と伏兵の始末だっ!」

 


 ふと前方を見れば魚隣の先端を担う船団は火の海だった。火が穿海号に回るのもこのままでは時間の問題だ。まんまと海軍にしてやられたと言わざる終えない状況にハイルイは歯噛みをして悔しがった。



 「赤国へ到着するのは無理かな・・・」

 「大船長! 諦めないでください!」

 


 いつかは分からないが恐らく連中は自分の傘下の海賊と通じて今夜の作戦を周到に用意して来たのだろう。誰が裏切ったかなんてどうでもいい事だがこの窮地に陥って世界最強の海賊は絶句した。



 「はぁ・・・悲しいぞダイダル。こんな形で俺とお前の決着が着くかもしれんなんて・・・」

 「だから意味深な事を言わないでください!」

 「ユウよ俺は三十三年生きてきて楽な事はあまり無かったがお前たちに出会えて嬉しかったぞ」

 「大船長!」



 もはや投げやりと言えるハイルイの言葉にその場の全員が耳を疑った、大火を映したその遠い目の眼に生気を灯すのは不可能かに見えた。こうなったら是が非でも考え直してもらおうとユウはシュウをボールを落としたように雑に置いてハイルイに詰め寄ろうとした。すると頭を強くぶつけたからなのかにわかにシュウが正気を取り戻して躍動して起き上がった。



 「お、俺は何を・・・!」

 「兄ちゃん!」

 「あ、そうだ裏切り者! 裏切り者がいます! 大船長!」

 「分かってる! 今まさにヤバい状況なんだよ!」

 「え? うおおぉおぉおお!?」



 外の地獄絵図を目の当たりにしたシュウは驚愕の内に完全に正気を取り戻したようだった。



 「大船長! 撤退しましょう!」

 「それが出来ないから困ってるんだ!」

 


 気が付いたら火の手は穿海号と生き残った船を取り囲むように燃え盛っていた。世界最強と謳われた海賊団の命運はもう尽き果てたと誰もが思った。火の子を免れようと海に飛び込んで溺れた者、炎に焼き殺された者はもう数えるのが億劫なまでに増え上がっていた。生き残ったのは穿海号とその周りを護衛する精鋭の幹部の海賊団の船十隻ばかりである。



 「大船長・・・あれ・・・」

 「ん」



 ユウの右手が指す方角には燃え盛る船の残骸を押しのけて砲台を何時なんどきでも打ちこめる準備を整えたと思わしき裏切り者が乗った船が近づいていた。おそらくあの砲弾をこちらに打ち込んで沈める算段だろう。橙連邦で補充した火薬に引火して大爆発お起こして俺らは海の藻屑か・・・とハイルイは考えていた。今日の昼ごろにダイダルに言われた言葉がフラッシュバックして不意に笑みさえこぼれた。



 「ふふふ・・・面白いじゃないか・・・」

 「あ、今度は大船長が壊れた・・・」

 「俺は壊れん! 操舵手はどこだ!」


 このお決まりのフレーズにシュウとユウ、その他は何となく作戦を察してしまった。心の何処かで呆れながらもこの状況を打破で来るやもしれぬ破天荒さに賭けたくなったのも又事実だった。要するに今から裏切り者へ向かって特攻を仕掛けてやろうと言うのである、実にハイルイらしい策も弄さないやり方だった。


 

 いちおう戦闘態勢らしきものが敷かれてあとはもう特攻するだけとなった時、ハイルイの脳裏にはダイダルの事がふっと過ぎった。やっぱりアイツとはちゃんと決着を付けたかったな・・・と思えて来た。



 「(いやいや、この戦いを乗り切って野郎をぶちのめすんだろ!?)」


 

 やがて意を決したウォー・タイプ海賊団連合の残党は全速力で裏切り者達へ突進を開始する。激しい先頭の後に当たりの島々に轟くほどの大爆発があったという。近くの島の漁師が翌日に現場に行ってみるとそこにはまだ消え切っていない火薬の匂いのこびり付いた灰と炭と化した船の残骸が無数に散らばっており世界最強と謳われた海賊達の姿は確認できずこの真夜中の出来事は謎に包まれた『ウォー・タイプ海賊団連合消息不明』として世界中を駆け巡るのだった。





 蕉海ウォー・タイプ海賊団編・完・

逆に今の方が面白い漫画ってなんだろう

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