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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
蕉海ウォー・タイプ海賊団編
21/65

二十一話

やばい

 既に勝負ことを終えた男たちに言葉は無い。ハイルイはそれ以上は何も言わずに立ち去り仲間と合流して大将討ち取ったりと勝鬨を上げる。ダイダル瀕死の重傷に戦意消失した海軍はすぐさま戦闘を止めて踵を返し大将の救援に向かった。肉体的な疲労よりも、頭脳的な疲労よりも、精神的な疲労と負担が大きな戦いだった。思えば一時の感情に任せて因縁に事つけて部下の指揮を放棄した自分にハイルイは狂気を感じた。



 (久しぶりに戦ったからかな・・・平和ボケなのかなんか呆気なかったな・・・ダイダルの奴)



 穿海号に乗り込んで傘下の海賊船の陣形を組みなおして再び海を切って大船団は進む。流石に小競り合いの時とは違って本格的な被害を被った、沈められた船は計五隻。死者負傷者両軍合わせて五十人。軍艦の残骸を分けて進む中にあって参謀も兼ねているシュウは何処か違和感を感じ取っていた。



 「いや、いやいや。十将だぜ? あんなに呆気なく負けるのか?」

 「勝ったんだからいいじゃんもう。兄ちゃん」

 「しかしだ、俺の目にさっきの戦闘は違和感の塊でしか映らなかったぞ?」

 「え」

 「そもそも前提として海賊おれらをあんな容易に接近させたあたりダイダルの本心さくせんが見えない。いや青の帝国の思惑かな?」



 潮騒に掻き消されぎみのシュウの声はまずこう述べる。そもそも連合団が橙連邦に入港した時点でその情報は早馬で辺り一帯にすぐ伝わる筈である。ソレを世界中に情報網を有している青の帝国が拾わないなどあり得るのだろうか、そして匿ってくれた橙連邦に何らかの介入が三日間の間で一回も無かった事も不自然である、『出来なかった』のか『しなかった』のかの二択と思われる。



 「でも兄ちゃん、青の帝国と桃海と蕉海との狭間までかなり距離があるよ? 情報をリークして大急ぎでやって来ても間に合わないでしょ?」

 「そこだ。オレが腑に落ちない個所は・・・」

 


 シュウは親指を噛みながらシリアスな表情を作る。仮に追いつかれたのではなく、伏兵を配置されていたのでもなく、敵は他の方法で潜んでいたとしたら―――



 「そもそもだっ! 海の天災と恐れられる海軍ダイダルがただの肉弾戦に賭けただけの作戦に出ると思うか!? ダイダルだけじゃねえ! 神虎シェン・フーとかいう軍師が黙っちゃいねえ筈だ!」



 謎が解けない苛立ちと、もどかしさがシュウの感情を掻きたてる。シリアスな表情はいつしか怒りに満ちた顔に豹変していた。言われてみてユウも疑問を感じ始める。



 「なんかさ、船。重くね?」

 「は?」

 「いや行軍スピードって言うのか、なんか鈍いなって」

 「トウカン殿から頂いた物資のせいだろ」

 「なら良いんだけどさ」


 双子の謎解きは有耶無耶のまま、過労でぶっ倒れたハイルイの船長代理の業務に追われると言う形で終結した。やがて戦いの熱気も冷めきって一日の疲れを癒すべく海賊達も寝床に就く時間になった頃。月明りに照らされる大船団の中央にて守られる穿海号のマストの見張り台には双子の姿があった。どうやらまた謎について話し合っているらしい。



 「眠い。俺今日二十人倒したんだよ?」

 「俺は十人分の頭脳を使った」

 「おお、じゃあ解けたの?」

 「全く」

 「時間返せよ。こんな所にまで呼び出しやがって」

 「まぁ聞け。仮説くらいは立てたから」

 「そー言うなら・・・」

 「今夜は寝かさないぞ?」 

 「うるせー」


 微笑してからシュウは語り始める。



 「まず俺達が経験した今日の戦闘。これには違和感があった」

 「ほうほう」

 「一つは大将ダイダルの圧倒的な弱さ。あっさり負けやがった」

 「大船長が強かったんだろ」

 「それは疑わないが一考の余地はある。敗北アレって実はわざと負けたとすれば話を組みたてられる」

 「へー」

 「そもそも大船長とダイダルは当代きっての海の戦士だ。戦えばどちらかが死ぬか重傷を負うのが当然だのに今日は大船長が圧勝、こうして俺らに疑われている辺り演技が下手と言わざる終えないがな」

 「演技?」

 「あぁ。俺達ウォー・タイプ連合海賊団が勝利に沸いて前途洋洋で再出発させるところまでが演義さくせんじゃないのかなーって飯食いながら思いついたのね」

 「ほう。つまり今日の勝利は御膳立てされた偽物だったと」

 「それな。ダイダルが負ける事で俺達はこの先に罠やトラブルが無いと思い込ませる布石だとして俺らを安心させる事が目的だった」

 「ただその先は?」

 「え」

 「アレ達を安心させてどうすんの? 帝国は」

 「良い質問だな弟よ、少しは脳みそが詰まって来たようだな」


 と言ってシュウはユウの頭を雑に撫でる。鬱陶しそうに払いのけてユウは説明を求める。



 「つまり連中はこの先に何か仕掛けて来る可能性大ってわけ」

 「兄ちゃん・・・どこまで卑屈なんだよ」

 「軍師と言え。屁理屈では無く理屈だ」

 

 これにて疑問が解かれたと仮定して残る最後の疑問についての補足をシュウは躊躇いつつ言う。


 「んでさ・・・最後の説明・・・」

 「早く! 教えてよ!」

 「それがさ・・・」

 「ん?」 

 「合わないんだよ・・・船の数が・・・」

 「は?」

 「その・・・最初に気が付いた時に言うべきだったんだけどさ・・・直ぐに海軍との戦闘になってさ・・・言いだせなかったんだけど・・・」

 「ちょ・・・兄ちゃん・・・」

 「橙連邦を出港した時が七十隻・・・んで昼間の戦闘で五隻沈められたから俺達ウォー・タイプ連合海賊団の船は計六十五隻の筈・・・んで飯食う前に点呼を取る感覚で数えたのね・・・」

 「・・・」

 「今、六十八隻・・・あるのね」

 「怖ッ! 怪談かよ!!」

 「ゴメン! 兄ちゃん怖くて言いだせなかったんだ! 仮説が正しけりゃ多分―――」

 「おい! 先頭は何をしている!」



 突然下の方から見張りの大声が響いた。思わず双子も確認すると陣形の先頭部分の先導役の船三隻が帆を返して逆走しようとしていた。しかも何やら芝や松明と思わしき物体に大火を灯して。



 「兄ちゃん! アレ!」

 「きやがった! ユウッお前は大船長の寝室へ行け! 俺が指揮を取る!」

 


 シュウの立てた仮説のまとめ、それとはすなわち青の帝国海軍部隊は我々に追い付いたのでも無く、待ち伏せられていたのでも無く。最初から紛れ込んでいたと言う大胆な作戦だったと言う仮説である。あの戦闘の後にこっそりと海賊船になり済ました軍艦がどさくさに紛れて仲間の数を数える余裕も無いウォー・タイプ海賊団に潜入して何食わぬ顔して同じ釜の飯を食っていた・・・、なんて嫌な考えが脳内で低空飛行している間に仮説それは現実となってしまった。シュウはマストを降りて大急ぎで指示を出す。



 「敵襲だ野郎ども! 寝ている奴ら叩き起して来いッ!」

 


 甲板は突如として混乱の渦中に突き落とされた、同じく異変に気が付いた傘下の船も何時なんどきでもどう言った行動もとれるようにすべく騒然とした雰囲気に包まれた。シュウの読みがこのまま当たれば恐らく大火を携えた逆走する軍艦が何処かの船とぶつかって大船団は火の海に包まれるだろう、停止しようにも今更後続の船の前進を止める事は出来ない。



 「ハハっ! なんかヤバくなってキヤガッタ!」

 「副船長! 正気に戻ってください!」



 文字通り絶対絶命を体現しているシュウはいよいよ気が触れた様な顔になった

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