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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
秘密警察『B3』編
19/65

十九話

歴史検定を持っている俺が言うのもアレだけど、過去は振り返らない方が良い

 あの頃はよかったな。きっと誰しもが口にした事のある言葉じゃないだろうか。中学生が小学生の頃は楽しかったな・・・、とかつての日々を思い出す様に、そして高校生になったら中学生の頃は楽しかったな・・・と、大学生になったら高校生の頃は楽しかったな・・・と、大人になっても、中年と迎えて、老後に突入してもこの言葉を繰り返して最後を迎えるのだ。結論として今が一番楽しいのかもしれないが、少なくともハイルイは今が一番楽しい気がする。



 アレは忘れもしない、二十年前の事。まだ十二歳だった自分は幼い兄弟と一緒に漁に出る父親の漁の準備の手伝いをしていた。網の整備か、船の掃除だったか、水彩絵の具の様にぼんやりとした記憶だったが何気ない日常の光景であった。そしてその日の夜、突然現れた海賊団に自分たちの住む村が襲撃された。父親は村の男たちと武器を手に何処かへ消えてしまった、幼かった兄弟たちとは離れ離れになり今は所在なんて知るところでは無い。ただはっきり覚えているのが自分は逃げ遅れてその海賊団に捕まったと言う事である。 



 思えば自分の潔癖な性格はこの時から生まれたのだろう、少しでも怠け心を出すと海賊団の船長の鞭を喰らうからだ。希望など見えなかったが掃除を一生懸命することで自分には便宜が図られる事もあった、そんな生活をしている内に自分にとっては先代にあたる十四代目ウォー・タイプ海賊団と捕まっていた海賊団が交戦して自分は身柄を引き取られた。自分の村がやられた様に十四代目たちは完膚なきまでに敵を叩きつぶした。環境が変わっただけで自分の役目は変わらなかった、毎日雑用の為にこき使われるだけの日々。ただ強いて言うのならば手際が良くなっていたのでそこそこ実力を認められて雑用をまとめ上げる役割を与えられた。記憶の糸を辿っていくとそういえば自分と同じような同い年の子供がいた事をハイルイは思い出した。そうそう、仲良くなってよく一緒に飯食ったな・・・あいつの名前は確か―――



 「久しぶりだな・・・ダイダル、か」



 砲弾の音と怒号の飛び交う戦場の中でハイルイはかつての記憶を思い起こしていた。既に艦隊とは開戦しており傘下の船と軍艦が激しくぶつかり合っていた。手すりに肘かけながら虚ろな目をしているとシュウが怒鳴って来た。

 

 


 「大船長! 感傷に浸ってないで! 早く安全な場所に!!」

 「そんな所、この戦場には無い。おい操舵手!」

 「ここに!」



 ハイルイは操舵手に作戦を告げる、ソレが聞こえていた辺り一帯の戦闘員は呆然とする。無謀、無策にも程がある作戦に賛同するのは鼻息荒いユウのみだった。波に揺らされる穿海号の船上は一時的に混乱に陥った。


 

 「良いっすね! その作戦!」

 「だろう? よーし早速全軍に伝達しろ!」

 「大船長! ちょっと待って下さい! それ作戦じゃなくて、無茶って言うんです!」

 「うるせえ! ここまで追い詰められて黙っているのが男かっ! 久しぶりにダイダルの間抜け面を見たくなったんでね」



 ハイルイは剣を天に掲げて全軍に伝える。



 「野郎ども! 今からダイダルの居やがる軍艦に突っ込むぞぉお!!」



 少し遅れて怒号が響き渡る、いくら潔癖な大船長に調教されようが元々は荒くれで派手なこと好きな海賊たちは意気揚々に船の舵を切って一斉に艦隊の本体に帆を向ける。占めて七十隻の大船団がダイダルに向かって突進してゆく。





 「特攻を仕掛けて来る、か、ウォー・タイプよ」

   


 船主に仁王立ちで構えるダイダルは目を細めてぼやく。その腰にぶら下げた分厚いサーベルを抜き腕をまくる。第一戦とはうって変わりここら辺はまだ戦闘には巻き込まれていない為に不気味な位の静けさに包まれていた。ダイダルは顔の右半分をほぼ覆っている傷を撫でながら不敵な笑みを浮かべて指示を出す。



 「ようし! 全軍迎撃態勢だ! 社会の癌どもを叩きのめして休暇を取るぞ!」


 心なしか、海賊討伐の為に青の帝国の軍港を出港した時よりも気合いの入った怒号が軍艦に木霊した。海兵たちが武器を掲げて戦闘準備に入る。サーベルを担ぐように構えて船主から降りると副長が訪ねて来る。


 「ダイダルさん、よりによって相手はウォー・タイプですけど」

 「まぁかせなさいシャチちゃん、僕はこの戦いが終わったら愛する妻と食事に行く約束をしているんだ」

 「それ・・・死亡フラグです。奥さん大事にしてあげて下さい」

 「してます。さぁ早く帰って神虎シェン・フー君に報告するべ」



 ダイダルはにやにやしながら副長のシャチの頭を撫でる。二メートル十五センチのダイダルからすると百六十センチンのシャチは調度撫でやすい位置に立っていた。海兵がドタバタとヤカマシイ中ダイダルは愛刀の海刀鯨芙かいとうげいふを甲板に突き刺して胸ポケットから写真を取りだしして満足げになり再びしまう。写真に写る人物こそこの戦いが終わったら食事の約束をしているダイダルの妻その人である。常に任地に写真を持ち込む愛妻家だが海賊達からダイダルは『海の天災』とまで言わしめるほどの男であった。その由縁は。



 「おっしゃあ! そろそろ射程距離だな!? 弾丸でも銛でもブッかましてやれえぇッ!!」

 「イエッサァアァア!!」



 弾幕は雨の如く張られた。先鋒を任せられた海賊船十隻の内三隻はこれで沈んだ。子供が水の張られたバケツをばら撒くのと同じ感覚で弾幕は浴びせられる。それも介さずに海の荒くれたちは悠然と突進を止めない数は力である、このまま盾となる船を完全に沈めなければ接近を許して近接戦闘になるだろう。というよりかはもう戦況は近接戦闘に決しそうだった。



 「あ~僕らに此処まで近づくか・・・」

 「ダイダルさん!! 呑気な事言っていないで!!」

 「分かってるよシャチちゃん」


 結果から言って艦隊は海賊船の突撃を受けて船首は潰れてくっついた様な奇形になる。海賊団の戦闘員は歓声を上げ武器を手に軍艦に突入して行く。早速の開戦に場は混沌とする。予想よりも早い敵の到着にダイダルは感心すらしていたが慌てない。数に物を言わせる作戦と見える海賊達は数人一組になってダイダルに襲いかかる。


 「死ねえええ! ダイダル!」

 


 一人のその一言で五人程一斉に飛びかかって来た。ダイダルは海刀鯨芙の鎬の部分で難なく受け止めて押し返す。腕力ならば凡人の数倍ある男に力で挑んだ海賊達は無策と知りつつ再び斬りかかった。


 「おーおーやっぱただの無策バカかよ」

 


 一瞬の出来事だった、おそらくその動きを捉え切れた物はその場に一人いれば良い方だっただろう。重さが小柄な女性くらいはあるサーベルを鞭のように振り回して繰り出された斬撃は袈裟斬りの要領で五人を切り裂いた。どさりと重力に身を任せて転げ落ちた海賊達は動かなくなった。


 「さぁて今日は何人狩れるかな?」


 一方的な、徹底的な、絶望的な蹂躙が始まろうとしていた。ダイダルが海の天災と言われる由縁、それは海上では荒くれとして人々に恐れられる海賊がまるで子供の様に震え上がらせるほどの圧倒的強さと海軍でありながら海賊と間違われる威圧感にあった。五人一気に切り捨てたダイダルの加速は止まらない、オーケストラの指揮者が指揮棒を振る様に海刀鯨芙を振るい次々と敵を討ち取ってゆく。重力を感じさせない太刀筋にはハイルイ達が思わず見入る程だった。


 「船長。俺が」

 「バカ野郎ユウ俺も一緒に行く。馬鹿なおまえじゃすぐ死んでしまう」


 

 ダイダルと交戦する戦士に舎弟頭のユウと副船長のシュウが名乗りを上げた。ハイルイは頭として部下の命を預かる身である。作戦の考案こそすれ命を軽率に扱う様な事は絶対に口にしない。部下を危険に晒すくらいならば自分がかって出たい位であった。


 「正直俺はダイダルの実力をお前たちの誰よりも身を持って知っている。だからこそ言わせてもらうがアイツにゃあ幹部おまえらが束になっても掛かっても敵うか微妙なラインだ・・・」

 「何言ってんだよ船長! たかが大男一人になにビビってんだ!」

 「ユウ! 口を慎め!」

 


 こうして口論をしている間にも仲間たちはダイダルの手によって一人また一人と討ち取られていく。ハイルイはギュっと槍を握りしめて口を開く。


 「ここはやっぱ大将どうしで・・・だろっ!」

 「・・・」

 「最初から・・・そのおつもりで?」

 「わりぃお前たち。背中は任せる!」



 ハイルイは既に傾いた足場に飛び移り身軽な身のこなしで大将ダイダルに突撃してゆく。集団の頂点として単独行動は許されまじ行動だが、ハイルイの個人的な事情を把握している傘下の海賊達は不満一つ言わずに目配せのみで自分たちの事を解したように戦闘を展開する。ハイルイの後ろ姿を見届けたシュウは指揮を取る。



 「野郎どもっ!! 大船長の決闘の邪魔をさせないぞぉおお!」

 「おおぉおおぉ!!」



 

 ウォー・タイプ海賊連合団総出の決戦が始まろうとしていた。





十五代目ウォー・タイプ連合海賊団副船長・シュウ(22)

   233センチ

   125キログラム

  (VC・内山昂輝)

  特技・垂直懸垂

  苦手な事・教養の無い者に対して行う小難しい話と説明

    B型


 副船長で舎弟頭ユウの双子の兄。全長140センチの大剣が獲物。肩書は海賊ながら元々勤勉な性格らしく読書家で屈指の物知り。10歳の時にハイルイの部下になった。気難しい男なので扱いが難しい。既婚者で子は無し。一卵性では無いので若干ユウとは顔立ちが違い精悍。




 十五代目ウォー・タイプ連合海賊団舎弟頭・ユウ(22) 

  233センチ

  122キログラム

(VC・斎藤壮馬)

 好きな物・鳥類カッコイイから

 嫌いな物・虫(気持ち悪いから)

   B型


 連合の幹部を取り仕切る舎弟頭。兄とは違い楽天的な性格でいわゆるプレうボーイで財布の中にゴム製品が入って無かった事はない。自分の身の丈ほどある長槍が武器。普段は明るく人懐っこいがキレたり戦いになると性格が豹変するタイプ。甘いマスクが年上に受ける。 

 

気が付けばホラ。黒歴史が輝いているよ? 一番大きく光っているのは髪の毛を伸ばして左目を隠して自分は特別な存在だと信じていた中学一年の頃の自分、その隣には先生をお母さんと呼んでしまった小学校低学年の自分☆

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