十八話
計画性のかけらも無い俺だけれども一つだけ決めてい守っている事がある。それは父親の様には絶対にはならないと言う事
「ようこそ御出で下さいました。同志ウォー・タイプ海賊団船長ハイルイ殿」
「手厚いで迎え感謝するぞ。国主トウカン殿」
そう言って両者は握手をする。右側には世界最強の海賊ハイルイ、左側には橙連邦若き国主トウカンが。本日ハイルイたち一行は打倒青の帝国を掲げる同志連合軍へ合流する航路の途中物資の補給や休息も兼ねて同盟の橙連邦の港に立ち寄っていた。密航では無く国賓扱いには少々驚いたがハイルイは海賊である自分を寛容に受け入れてくれたトウカンに感謝の言葉を述べる。
世に聞こえる若き名君トウカン。僅か十三歳にして王位を継承し、以後善政をしいて国を繁栄させていると言う聡明な青年とハイルイは噂で聞いていたが実際に顔を合わせてみると納得した。健全な褐色の肌に鍛えられた肉体、全てを見透かす青空の様な瞳、年齢は二分の一ほどだが人生経験豊富なハイルイにも勝るとも劣らない才を有している風にも見えた。トウカンは言う。
「さぁハイルイ殿、船は私どもの方で管理しておきますので部下の皆皆様を連れて宮殿へ行きましょう。もてなしの準備は出来ております」
「それは有り難い、長旅で全員疲れているが五万人分も作るのは大変だったでしょう」
「何を、革命の同志なんですから。それにわが国には『家宝を売ってでも客人をもてなせ』という諺があります。御気兼ねなくゆるりと休まれてください」
二人は歩きながら話す。道中にはハイルイを歓迎する民衆が溢れており海賊達はただただ壮大なもてなしに拍子抜けするのみだった。やがて壮麗な宮殿に到着して美女に囲まれて案内をされる。一面大理石の絢爛豪華な部屋で催された宴にここ数日倹約を命じられて質素な暮らしをしてきた海賊団は舞いあがり酒池肉林の宴に身を投じる。これほどもてなすかとハイルイはトウカンに尋ねた。
「トウカン殿・・・こんなに豪華な宴まで用意していただくとは・・・感謝の言葉が見つかりません・・・」
「国主として当然です。おや、杯が空ですよ、さぁさぁ一杯」
「すまない」
年齢が二分の一の青年にここまでされては示しが付かないとは思いつつ所詮は海賊と言うアウトローな存在である事を認識しているハイルイには何処か心が狭い気分になった。金の杯に並々注がれた表面張力で揺らぐ酒がハイルイの思いを表している様だった。酒を飲み干すとシュウが傍に来て座り耳打ちをする。
「大船長・・・ここまで大仰な出迎えとは予想外でしたね・・・」
「あぁ・・・流石金持ちの国だ・・・海賊の宴とはレヴェルが違う・・・!」
なんて二人で話していると何処かでユウが声を張ってはしゃいでいた、突然の騒ぎになにか迷惑をかけていないかと二人に、何事かと気になり振り返るトウカン、振り返りそこに合った光景は。
「あっ母上」
「あらトウカン~、私も御客人をおもてなしすべくお手伝いさせて貰ってますわ~」
「えっ皇后様だったの!? おばちゃん!?」
「ユウ貴様! 皇后様になんて事を!」
酒に酔っているせいかユウの酒の共をしていたのはこの国では皇后でトウカンの母親に当たる女性、その名をサイアンと言った。上流階級にありがちな十代で結婚してすぐに子供を授かったパターンの女性であった。それにしても歳を感じさせない張りのある褐色肌にやたらと揺れる主張の激しい母性の象徴が目を引く三十代後半の人妻だった。ユウを他の美女に任せるとハイルイ達の元に来た。
「不肖の息子が何か不手際を起こしていないでしょうか? ハイルイ様?」
「あっいや、行き届いております・・・」
「そうですかぁ? 何か足りないものがあったら御気兼ねなく仰ってくださいね」
「いやぁトウカン殿の年齢は私の二分の一なのに御立派ですなぁ・・・」
「あらまぁ! ハイルイ様わたくしと同い年でしたの!?」
「皇后様は三十七歳であの我がままボディか・・・」
「兄ちゃんのお嫁さんより胸大きいね」
「ちょっと面出な。ユウ」
この宴は日暮れまで続きウォー・タイプ海賊連合の五万人はみな等しく満足して宿屋に案内されてその日はだらしなく寝た。なおハイルイ始め幹部たちはトウカン達橙連邦重臣たちと今後の作戦会議に入っていた。青の帝国に目を付けられている以上はゆっくりしていられないのだ。今日より三日後にそれぞれ陸路と海路に分かれて進軍を開始する。トウカンは地図を指さしながら話す。
「この先の海、蕉海の関所に話は既に通しているので進軍はスムーズででしょう。私たちは陸路から李河を反って行軍をします。一か月もあれば赤国の領土に入れる筈です」
「何から何まで痛みいる。トウカン殿。我々は七十隻の大船団なので少し一カ月より遅れるでしょう」
「蕉海は桃海と比べて穏やかな海ですので難破などの心配はないでしょうが御気をつけください」
「うむ」
至れり尽くせりな若き君主のもてなしはその後出発予定の三日後まで途絶えなかった。大量の食糧、物資を補充して船の損傷も修理してもらった。出発の日にハイルイ達ウォー・タイプ海賊団とトウカン達の間には名残惜しいモノが芽生えていた。ハイルイは感謝の言葉を探したが何と形容すれば分からずにたじろくしかなった。出発際して二人は港にて握手を交わして赤国にて再開する事を誓う会話を交わしてハイルイは『穿海』号に乗り込んだ。大船団の背後の港が豆粒ほどの大きさになる時までハイルイはトウカンとの会話を思い返していた。
「橙連邦の領海にも近頃青の帝国の軍艦が見かけられています。案外近くまで接近されているのかもしれません」
背後の守りに不安がある訳ではない、言葉は悪いが傘下の大船団七十隻で組んだ陣形が穿海号を挺する様に守っており盾には困らないのであるから。いざとなれば傘下を盾に交戦すれば心配はない。海軍部隊は遠征な訳で人員と物資には海賊団に利があった。何の兆しか知った事ではないが出港時には晴天だった空は曇天に包まれて怪しい雲行きになっていた。悪い予感ほど的中する人生を送って来たハイルイの読み通りそれは敵襲と言う形で的中する。見張りのクルーが大声を上げて皆に知らせる。
「青の軍艦だぞっ!! いや艦隊だっ!! 数揃えてきやがった!!」
「こっちからも来ているぞ!! 囲まれた!!」
船尾のクルーも声を大にして言う。既に武器を構えたユウがハイルイに詰め寄る。
「大船長・・・コレって・・・」
「やめろ・・・!」
「それなりの軍事力を持つ橙連邦が領海に侵入した軍艦を野放しにする筈ないだろ!! 蒸気噴き叩いて此処まで進軍して来たってか!? 違うね! アレはどう見ても伏兵だろうが! 何処に隠れていたかって橙連邦に隠れ場所を提供してもらってたに決まっている!!」
「やめろ!」
「やたら俺らに親切だったのは冥土の土産だったってか!? ふざけんな!」
「少し黙れ!! ユウ! 今彼らが裏切っていたかはどうでもいい! この方位を切り抜けるのみだ!」
好感を抱いていた人物を悪く言いたくはなかった、疑いたくなかった。だがこの状況がトウカンと青の帝国が仕組んだ物だとすれば自分たちへのあの善意は全て偽りの鍍金に塗り固められた物だったのだろうか。ハイルイにはそうは思えなかった、離間の計として納得して口早に伝達する。
「全軍戦闘準備だっ!! 青の帝国の連合艦隊と俺らの大海賊船団、決着付けてやらぁ!!」
自身も剣を抜いて大声を上げると続いて傘下の部下たちも怒号を上げて大砲を持ちだして場が引き締まった空気に支配される。どたばたと騒がしく戦闘準備が整う中さっきの見張りが望遠鏡を片手に再び報告をする。
「大船長ッッ!! 大変です!!」
「どうしたぁ!!」
「ダイダル、ダイダルです!! あの前方の軍艦、あのダイダルが乗ってやがります!!」
「はぁ!?」
ハイルイ自身も望遠鏡を手にして確認すると。前方の海を覆い尽くす先頭の軍艦には浅黒い肌の、右目を中心に顔の大部分に傷を負った二メートルは超えているであろう巨漢が仁王立ちで佇んでいた。現代の海に置いて海賊達が最も恐れる物。人によって意見は分かれる、疫病だったり、物資の不足、敵襲や裏切り、暴風雨だったりもするが、皆が一様に必ずと言っても良いほど上がるのは前述のいづれでもなく。青の帝国海軍司令長官にして十将の六番手、ダイダルに航海中出くわす事だと言う。
男だから、男のくせに、男なのに、関係ない




