十三話
胸糞悪いときほど健全な作品が書ける
山賊達の強姦を経てホウスウの部屋に連れられたランは先ほどの様に拘束される訳でもなく手枷をされる位で寝床にポツンと座らされた。衣服と言えば脱がされたシャツを羽負らされたのみで後は部屋の冷気がランの体を冷やすのみである。その後チタンは無事帰り付く事は出来たのだろうか、後輩を信頼して伝達の任務を託したがやはり心配である。そんな事を考えていると―――
「物思いに耽る姿も中々美人じゃねえか、スナイパー」
自分を拉致した張本人、オシドリ山賊団の新頭領ホウスウが姿を見せた。相変わらず憎たらしい面を引っ提げて現れた男にランはゴキブリを発見した時と似た嫌悪感を抱く。男はランに歩み寄る。
「全くアンタには驚かされたぜ。処女だってのに男に嬲られてもそんな正気を保っていられるなんてよ?」
それに対する言葉は。
「五月蠅いわねガキが」
こちらも相変わらずの減らず口と言ったところだろうか、逆にホウスウは高笑いをかます。
「はっはっは! そーいう所気に入ったぜ! 一緒にいた人狼屋がてっきりタイプなのかと思ったぜ、てか俺達一個くらいしか変わらないっしょ?」
「あれはただの可愛い後輩よ」
ランは悠然と足を組んで見せる、股がズキズキ痛むが実際に戦場に何度も立っている軍人からすれば可愛いものだった。相手を煽ったのかは分からないがいきなりホウスウはランを押し倒して口を吸い寄せて次に首筋に舌を這わせた。当然抵抗を受けるがお構いなしと言った形勢である。
「ん・・・離っせ・・・!」
「オオっと」
隙を突いて放ったランの金的蹴りは寸手の所で受け止められてる。
「女ってのはみーんなソコを狙うんだよなぁ、知ってる? 金的って出産の二百倍痛いんだぞ?」
「それであんたが苦しむのなら私は何回でもしてやる」
「言うねぇ」
そう言ってホウスウは上半身の衣服を脱ぎ捨て再びランに覆いかぶさる。そして耳元で囁く。
「どの道アンタには仲間になってもらうまで俺は何度でもあんたの事を慰み者として晒す。そのまま生きるのと少し後味は悪いが同僚を裏切って俺等の仲間になる・・・いや違うな、ラン、俺の正室にしても良いぜ?」
「断るって言ったら私は一晩寝かせて貰えないのかしら?」
「まぁそうなるぜな、俺避妊とかしないからな?」
「じゃあ逆に私が言ってあげる。オシドリ山賊団頭領ホウスウ、無駄な抵抗はやめて秘密警察に投降しなさい。部下の命くらいは保障するわよ?」
依然として気品さえ感ぜられるランの態度にホウスウはそろそろ呆れさえも感じていた。そこでハイ分かりましたと言っていては山賊は務まらない。逆上したホウスウはランに食ってかかった。
「本っ当あんたって立場が分かってないなぁ・・・」
「だって、たかだか山賊風情に私はもったいないわ」
「手前ぇ・・・」
見た目こそ小綺麗で知性を感じられる見た目ではあるがランに蹴りを乱発してきたシーンを思い出すあたりその本性は乱暴な性格なのだろう。その性格には必ず隙が生まれるはずとランはひたすら辱めと嬲りに耐えてただただ挑発を続ける。対して髪の毛を掻きあげながらホウスウは語る。
「俺の事をそこまでおちょくったのはあの馬鹿女以来だな・・・」
「んで、投降するの? しないの?」
「するわけねえだろ馬鹿野郎」
しばし無言の時が二人を包み込んだ、ホウスウは口を開く。
「山賊団はな、アンタを味方につけたら連合軍に合流する手筈なんだよ」
「はぁ?」
「アンタ程の凄腕が味方なら心強いと思ってんだよ」
「それにしてはアプローチが雑じゃない? 物を頼む態度じゃないでしょ? どう考えてもアレ」
「それはぁー・・・済まなかった。俺の悪い所だ、ついカッとなっちまった」
「アンタみたいなガサツな男が一番嫌いなの」
「・・・・・・悪りぃ」
潮流が自分に向いてきた、そうランは確信した。このままこの男を丸めこめば自分の物だと詰め寄る。
「全くアンタみたいなのが跡取りじゃあ死んだ先代も草葉の陰でなんとやらね」
「殺しておいてよく言うな・・・!」
「男なら誰誰の責任にするな。チタン・・・じゃなくて人狼から聞いたけどオシドリ自分も殺されるつもりで謀略の限りを尽くしていたと聞いたけれど? たかが女一人に自分で無く部下に手を下させるあたり正直アンタには何の覚悟も度胸も見受けられないのよ」
ランは溜めこんでいた罵詈雑言を吐きだした、ホウスウは青筋を立てていたが投げ返す言葉が見つからないと言った様子だった。
「それ以上はまた痛い目見るぜ・・・!」
「ほらまた言葉だけ。実際私を犯そうとして押し倒して終わり。この素人童貞が!」
その言葉で案の定怒りが頂点に達したのかホウスウは拳を振りかざしてその拳はランの頬を捉えてまた新しい痣を作る。
「それ以上反抗的な態度を取れないようにしてやろうか・・・!」
「えぇ望むところよ。むしろ軍人を落とす事が出来たら仲間でも妻にでもなってやろうじゃない」
そうしてホウスウが上半身の衣服を脱ぐべく両腕でシャツを捲り顔が隠れたところで―――
「セイッ!」
「ぐああああああ!」
相手の顔が隠れて視界が不明瞭になったのを見計らってランの放った金的蹴りがホウスウにクリーンヒットした。例外なくどんな屈強な男でもアソコをやられたら立てなくなる、古今東西普遍的な事実である。ホウスウはのた打ち回り苦悶の声を叫ぶ。その隙にランは跳ね起きホウスウのズボンからチラついていた鍵を奪い取り手枷を外し部屋から逃走を図る。裸足のまま部屋を走り出し、全身のダメージも介さずただ出口を探して走る。
「脱獄だ! 逃がすな野郎ども!!」
少し遅れてホウスウの咆哮が轟き見張りの兵士が集まりだす。アジトの廊下の曲がり角から調度一人出てきた。
「逃さんぞ女!」
繰り出された右拳を―――
「まだ十九歳だぞコラ!」
ランは踵で急ブレーキをかけて相手の右拳を取り振りかえり鮮やかな一本背負いを決める。軍隊格闘術の一環では無く幼い頃地元で弟と一緒に習った東洋に起源を持つ柔術の技である。頭を強く打った男は白目をむいて気絶した。服を奪って変装しようかとも考えたが体格が男の方が遥かに大柄なのともう既に追手が迫っている事を考えると悠長に着替える事は出来ないと判断したランは武器の刀を奪って先を行く。アジトの全体を把握しきれていないので当然迷う事になる。無駄な往来を繰り返し追ってと戦いながらではいずれ物量と体力の問題で再び捕まるだろう。五分も走っているともう何処だかよく分からない場所に辿りついていた。
「あれぇ? 此処何処だぁ?」
見たところアジトのはずれの部屋のようである、食糧の貯蔵庫かと確かめるべく中に入ると。
「お」
そこは自分が最初に慰み者にされた牢獄のある所だった、自分の入っていた牢獄の他に複数あるが暗闇の中良く目を凝らして見るとどうやら他に囚人がいるようだ。その中でも特に目を引いたのは―――
「あれは・・・」
ランが見つけたのは調度自分と同じくらいの年頃の少女たちが収監されている房だった、自分に助けを求めないので不思議に思いよく観察してみると意識はあるが自分に気付いていないだけらしい。声を掛けてみたが反応はない。考えられる事は―――
「薬物・・・か?」
昔からこう言った稼業では定法とされる攫った娘たちが逃げ出さないように薬物を微量に摂取させて中毒者にさせて自我を奪い自分たちの都合の良いように出来る女にする、この少女たちもどこかの集落から人攫いにあい薬物を投与されてきたのだろう。
「下衆共の好きにされてきたのね・・・かわいそうに・・・」
本来自分は脱獄囚で追われている身だが曲がりなりにも人を助ける警察という立場上、そして同じ女性として助けてあげたいという考えが過ぎり左手の鍵を調べ始める。マスターキー的な物があればいいのだが、この時間がランの運命を大きく分けた。最初に鍵に手を掛けて二つ目の鍵を調べている間に追手が迫って来た、それも一兵卒のような下っ端では無く。
「悠長なことしているな。娘」
「!」
反射的に振り返りそこにいた人物はそう。自分を完膚なきまでに叩きのめしたあのベンケイと呼ばれていた大男だった。ドグマには及ばないが頭の頂点が天井についている。
「アンタ・・・何時の間に」
「拙僧の武とは象の如き巨体を持ってして蜘蛛の如き無音の足運びとを旨とする」
「期待していない答えを有難う・・・!」
する事は決まっている、この場であの雪辱を注ぐのみである。相手も状況を察して袖の破れた修行服を揺らしながら構えを取る。少なくともこの狭い部屋の中では自分の方が有利なはずだ。
「娘よ。先ほど拙僧は生け捕りを命じられているが故に加減をしたが今回は命の保証は致さぬぞ」
この場で無駄なやり取りをしている暇はない、ランは牢屋を背に刀を構えて対峙する。
「でやあぁ!」
先手必勝とランが仕掛ける、ベンケイは瞬きすらせず真剣白刃取りをかましてみせる。それにランは驚きこそしなかったがベンケイは刀身を白羽取りのまま小枝の様にポキリとへし折った。
「はぁ!?」
「歯を食いしばられよ」
折った刀身と手放しベンケイは右手で手刀を弧を描き真一文字に放つ。しゃがんでかわしたランの変わりに鉄格子が断ち切られて鈍い音が木霊する。その光景を目の当たりにしたランはまともに戦うのは馬鹿の所業だと悟る。ベンケイの追撃は緩まない。
「小賢しい!」
「ぐっ!」
ベンケイの右足がランを捉えて高く打ち上げる、相手の攻撃が早すぎて実感は沸かないがガードした左腕から血の気が引いたあたり骨折したのだろう。打ち上げられた勢いで天井に強く頭を打つ。
「ふむ。よく飛んだな」
重力に身を任せるままに落下して地面に激突する、左腕はもう使えない。絶望に絶望を重ね塗りされ、
さっきの攻撃を受けたあたりから勝算が薄れ始めた。
「痛ってぇ・・・」
もはや立ち上がる気力も体力も無かった。先ほどから自分を追いかけてくる足音が地面越しに段々大きくなって来るのが分かった。三分もしない内に追手でこの牢獄は満ちるだろう。
「ベンケイ! とっ捕まえたのか!?」
「ハイ、頭領」
部下の肩を借りながらやっとの思いで歩いてきたホウスウの言葉に合掌で頭を下げながらベンケイは答える。ホウスウはランに歩み寄り唾を飛ばし罵倒する。
「このくそ女! 舐め腐った真似しやがって! 野郎ども今度こそ逃げられないように閉じ込めとけ!」
ランは再び抱えられて何処かへ連れて行かれる。次に連れて行かれたのは拷問器具が豊富な禍々しい部屋だった。椅子に縛り付けられて再び暴力をうける。今度は性の伴わない暴力である。ホウスウのリンチは夜明けまで続いた。
最強の童貞を目指すべくまい進中




