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監査官レオノーラと元黒柴フェンリルの婚約事情 〜すれ違い続けた二人が、想いを通わせるまでの話〜  作者: 柴門そら


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4/5

第4話 鈍くてど天然同士、幸せになろう

後日談ミニ連載(全5話予定)です。

婚約しているのに、なぜか距離が縮まらない二人の物語。

次回で完結予定です。


薔薇園は本当に見事だった。


「綺麗ね」

「ああ、今が見頃だって聞いてたからな」


二人、庭のガゼボに座って一休みだ。


お茶の準備がしてある。

今日は貸切にしてくれたそうだ。


そんなことできるのね。本当にデートみたいだわ。


「今日、聞きたいことがあるって言っていただろう?」



ああ、やっぱり。何かあるのよね、きっと。

キュッと心臓が痛くなったが、冷静を装って返事をする。



「ええ、何かしら?」


ルシアンがちょっと姿勢を正した。緊張しているようだ。


「お前が、旅の途中で倒れて3日間、目が覚めなかった時があったな。」


「ええ」


「あの時なのか?全てを思い出したのは。」


「そうよ、どうしたの?今になって。」


「その直前、オレが本当はルシアン・ルーンベルクだと知った時、

なぜあんなに様子がおかしかったんだ?


それまでオレたちは1度しか会っていない。


あの宮廷の庭だ。」


そう言えばあの時の庭にどこか似ている。

この赤い薔薇のせいかもしれない。


ルシアンの瞳と同じ色なのがあの時も印象的だった。そんなことを思い出していた。



「なぁ、なぜあんなに動揺したんだ?

そしてオレのこと、どう思ってた?

どうして知らない間に、第二王子アドリアンとの婚約を決めていたんだ?」


レオノーラが、すっと真顔になった。


「どうしてそんなこと聞きたいの?」


「オレは聞きたいんだ。」



沈黙が苦しい。

ようやくレオノーラが口を開いた。


「話せないわ。」


とレオノーラは言った。


「そうか」


ルシアンが小さく息を吐いた。

そして大きく息を吸って、話を切り出した。



「じゃあ、今度はオレの話をしよう。


今回、隣国にお前が行くと聞いて、

着いてきたくなかったっていうのは嘘だ。


今でも、

お前が隣国に行ってしまうんじゃないか、

お前が短剣で自らを刺した時のこと、

お前がもう目が覚めないんじゃないかと思っていた頃


その頃の悪夢で今でもうなされるんだ。


今回、隣国へ来たことで、お前が、


もう国には帰らない。

私の居場所はここなの、って言われたらどうしようかとずっと思っていた。」



「そんなこと__あるわけないじゃない.....」


レオノーラの声が震える。



「なぁ、レオノーラ。


もう、どこにも行かないでくれ。


居場所がないなんて言わないでくれ。


オレはアドリアンのようにスマートになんでもできるわけじゃない。


不器用で、粗雑で。


女王陛下がオレとの婚約を決めた、と思っているだろう?


違うんだ、オレが女王陛下に望んだんだ。


オレから求婚しても、きっとあいつはYESと言わないだろうからって。


だから、オレはアドリアンのことをどうこう言える立場じゃないんだ。


情けない奴だと笑ってくれてもいい。」



「でも、ここでちゃんと言わせてほしい。」



ルシアンがすっと膝をついた。

真顔で__そして覚悟を決めたようにこちらを見た。


「オレと結婚してほしい」


飾り気のないたった一言。



レオノーラは涙が止まらない。


「ルシアン___


はい、はい、どうか私をあなたのお嫁さんにしてください。」



ルシアンは立ち上がり、ぐっとレオノーラを抱き寄せた。



その後、意外に器用なルシアンが、温かいお茶を入れ直して、

レオノーラが落ち着くのを待った。



「あの時ね___」


「あの時?

ああ、全てを思い出した時か?


もう、いいんだ。

無理に聞いて悪かった。」



「ううん、いいの。言わせて。

聞いてほしいの、そして謝りたいの。


あの時、今までの歴史からいくと、あなたも私も助からないって、思ったわ。」


「ああ、そうだな」


「私、あなたとエイミーが、私を犠牲にしないように、私一人を助ける計画をしてるってわかったの」


「ああ」


「そんなこと、私には耐えられない。

だから、必ず、絶対にあなたが助かる道をとることに決めたの。


あなたが生きていてくれさえすれば、それでいい。そう思ったわ。


でも、将来、あなたの隣にあなたが大切に思う誰かが立つという姿を、見るのは耐えられなかった。


全てが終わった後に、もし私が生きていたなら、

私は全てから逃げるつもりだった。


だから、私は、弱い人間なの。そしてずるい人間なの。


アドリアンに対しても誠実じゃなかった。


あなたと婚約してからも、

こんな、こんな私でもいいのかっていつも思ってた。


本当にごめんなさい。」



ルシアンは、テーブルの上でレオノーラの手をきゅっと握り、



「アドリアンは、あいつは、全部、全部知っていたよ。

だから向こうから婚約をしないことを提案したんだそうだ。」



レオノーラは目を見開いて


「そうだったの…..」



「そして、だな。


レオノーラ、オレが、お前のことをずっと好きだった、と言ったらどうする?

それも、初めてあった時から_______」



「え?」



「うん。最近気づいた。」



「えええー!」



「そもそも、お互い、そこから噛み合ってなかった。

だからオレもアドリアンのことは何も言えないんだ。」



真っ赤になってジタバタしているレオノーラがめちゃくちゃ可愛い。

こんな面白い奴、他にいるわけない。



「だから、鈍くてど天然同士、幸せになろう」



その時、庭園の茂みからドサドサっと人が倒れてきた。


「何その色気のない決め台詞ー!!!ありえない!」

エイミーの叫び声だ。


なだれのように、


エイミー、キース、トーマスが折り重なって倒れている。

その後ろに、苦笑いをしながらルドが立っている。



イマドキ、こんな古典的な盗み聞きある??



「エーイーミー!!!!」



「わぁ、レオノーラ様、じゃなかったレオノーラ!

よかった。

本当によかった。

これにて一件落着ね。もう心配で心配で。」


とおいおいと泣いている。


「そうでございますよ。じれったいにも程があります」


とトーマス。


「妖精姫、おめでとうございます!」


今日のキースは騎士団で檄を飛ばしてる時のように

キリッとして珍しく腹から声を出している。



「「「今日はお祝いだー」」」



ルドがパンパンと手を叩き、


「はいはい!みなさん!

今日は、街の一番美味しい食堂をアドリアン陛下が貸切にしてくれてるそうですよ!

両陛下もお忍びでご参加だそうです。」


「くっ、激重陛下のドヤ顔が思い浮かぶ。なんだか悔しい」

「今日は毒舌魔導士もかたなしね。」


「さぁさ、馬車が迎えにきてますよ。行きましょう!」


ルドが先頭で、


私は、エイミーに手を取られ、


キースとルシアンは肩を組み、


トーマスがその後を涙目でついてくる。


「王妃様、レオノーラ様はようやく本当に幸せになられますぞ。

お約束は果たせましたか?」


と青空を見上げて呟いた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

仲間の後押し、いい仕事してます(たぶん)


少しずつ距離が変わり始めた二人を、もう少し見守っていただけたら嬉しいです。

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