第2話 婚約者だから、手を繋ぐのが普通らしい
後日談ミニ連載(全5話)です。
婚約しているのに、なぜか距離が縮まらない二人の物語。
前話から続きます。
朝食の席で
目の前のお皿に山盛りパンを乗せてもくもくと食べるルシアン。
「うーん、この国のパン、なかなか美味いな!」
黒柴とフェンリルの姿だった時は、トーマスがかいがいしく世話をしていたわよね。
人の姿に戻ってから、トーマスがちょっと寂しそうなのよね.....
「アドリアン陛下が、ルシアンのために国中のパンの中から選んで、
王宮の料理人にあなたの好みのパンを焼かせたそうよ。」
「ほう、珍しく気がきくなぁ。」
「多分、昨日のお礼よ」
「なるほどなぁ。マルガレーテ王妃と仲直りできて、
一件落着でよかったじゃないか。うんうん。
アドリアン、あいつは本当に鈍くてヘタレだからな。困ったもんだ。」
((((ルシアン、お前もな!))))
という、レオノーラ以外からの声にならないツッコミが炸裂していた。
「もう、ルシアン、野菜も食べてよね。」
「小麦も作物だから野菜だ、野菜。うん。」
「仲がいいですな!」
「そうですね!」
トーマスと、エイミーが生温かい目で頷きながらこっちを見てる。
いやそんなんじゃないから。
そういわれると、なんだかもにょもにょするし、
変な感じだ。
この婚約はこの国の女王に即位した、姉様が決めたんだからね。
と、心の中でつぶやく。
キースはぼそりと「妖精姫、婚約しちゃったな....でもよかった。」
と呟いている。
明日は合同訓練。
騎士団だけではなく魔術師団も参加なので、ルシアンも参加予定なのだ。
ただ、今日は1日フリーなので、城下町に観光に行くことになっている。
「レ、レオノーラ、私はルドとデートの約束をしてますので、
ルシアンと二人でお出かけしてくださいね。
ルシアンがいれば護衛もなしでOKでしょう?
デートですからしっかりおめかししないとね!
今日は裕福な商家の娘風でいきましょう。フフフ。腕がなります。
ルシアンはそれにあった服、準備してあるから勝手に着替えてね」
「「いつもの格好でよくない?か?」」
声がかぶる。
「相変わらず、お二人はそんなところまで仲が良いようで。
いえ、婚約者同士のデートですから。
レ、レオノーラ、官吏の服か、またいつもの動きやすいワンピースを考えてらっしゃいましたね?
ダメです。私の楽しみを奪わないでください。
そしてルシアン、魔導士のフードとローブで出かけるのはどうかと思うわよ。
その服装に無頓着なところ、二人ともそっくりです。」
「エイミー、様付けは取れてるけど、噛んでるし、あと、めっちゃ敬語よ。なんか変。」
「そんなこと言うと、コルセットを使うドレスにしますよ!」
「ひー、それだけは勘弁して!昨日の王宮で正装したらすごく疲れたもの。」
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「じゃじゃーん!しごできエイミーの会心の出来でございます!」
商家の娘風のレオノーラが完成していた。
いつもストレートの白銀の髪はゆるふわに巻いてあり、サイドは編んでハーフアップ。
生成色の上品なワンピースに
ベルトとピアスは赤で差し色に。
ルシアンの瞳の色だ。
ルシアンはシャツにベスト。
ベストには青の刺繍、私の瞳の色だ。
一応ローブも、あ、裏地が青....
「なんか、変じゃないかしら?
えっと、お揃い感が出てるっていうか。」
「婚約者なんですから、お互いの色を使うのが普通ですよ!
私も今日のルドとのデートではお互いの色を使ってコーディネートします。
そ・れ・が、普通ですからね!」
「そ、そう?わかったわ。」
「よくわからんが、
レオノーラ、に、似合ってる」
赤面したルシアンが言った途端、
ボッと赤面する私・・・
ヒューヒューとみんなに冷やかされながら、馬車に乗った。
んー、なんなのよ、もう!
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馬車に揺られながら、
しばらく沈黙の時間が流れる。
「なぁ、レオノーラ」
「何?」
「今日、聞きたいことがあるんだ。」
「何?改まって。いいわよ、なんでも聞いて」
「うん、あとで聞く。ぜったいトーマスが聞き耳立ててるからな」
「うぉっほん。何も聞いてませんぞ。」
というトーマスの咳払いが聞こえた。
「「やっぱり聞いてるよね」」
顔を見合わせて笑った。
こんな日が来るなんて、
こんな平和な日が来るなんて
思ってもいなかったなぁ。
としみじみ幸せを噛み締める。
でも、こうして一緒にいるのに、どうしてこんなにも距離がある気がするのだろう。
カタン、と馬車が止まり、
「レオノーラ様!着きましたぞ。街の中心部です。
今日はお祭りだそうで、屋台もたくさん出てるそうです。
私は馬車で待ってますんで、昼食までの間、
お二人はその辺を散策してみてはどうですか?」
「そうね、トーマス、ありがとう!」
「そうそう、お二人とも。お祭りですから混雑してますので、
はぐれないように、手を繋いでいってくださいね。
婚約者同士なら普通ですからね。」
「「え?」」
ここまでお読みいただきありがとうございます!
少しずつ距離が変わり始めた二人を、もう少し見守っていただけたら嬉しいです。
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