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婚約破棄で追放された悪役令嬢ですが、隣国で『魔道具ネット通販』を始めたら金貨スパチャが止まりません〜私を追い出した王国は経済崩壊しました〜  作者: はりねずみの肉球
第11章:聖戦と資本主義の激突

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シーン4:【神の失墜と独占市場(モノポリー)】地下牢の敵対的買収(M&A)と新たな世界のルール

カツン……カツン……。


冷たく湿った空気が漂う、帝都の地下深くに位置する特別牢獄。

普段は凶悪な大罪人しか足を踏み入れないこの陰惨な空間に、私のヒールが鳴らす場違いなほど優雅な足音が響き渡っていた。


「……ここですね」


分厚い鉄格子の前で足を止め、私はミッドナイトブルーのドレスの袖を軽く払う。

背後に控えていたガラン隊長が無言で頷き、重々しい鍵の束を回して鉄の扉を開け放った。


ギギギギィィ……。


薄暗い牢の中央。

粗末な藁のベッドの上にうずくまっていたのは、かつて十万の軍勢を率い、神の代行者として大陸の西側を支配していた男――西方教国の大教皇だった。

常に顔を隠していた黄金の仮面はすでに剥ぎ取られ、そこにいるのは、魔力枯渇で頬がこけ、白髪を振り乱しただの惨めな老人に過ぎなかった。


「……悪魔、め……」


私の姿を認めた大教皇が、ひび割れた唇から呪詛を吐き出す。

その目は、未だに自分の敗北を――絶対的な神の奇跡が、ただの『帳簿の計算』に敗れ去ったという現実を、受け入れられずに狂乱の光を宿していた。


「ごきげんよう、元・大教皇猊下。少しはお加減、よくなりましたか?」


私は鉄格子の内側へ一歩足を踏み入れ、彼を見下ろして完璧な令嬢の微笑みを浮かべる。

私の肩の上では、ウニが「キュプッ」と短く鼻を鳴らし、敗者に対する微かな威嚇のポーズをとっていた。


「十万の聖騎士団は、見事に私が**【吸収合併(M&A)】**させていただきましたよ。彼らは今、帝国の温かいスープと毛布の前にひれ伏し、神ではなく『セシリア商会』への絶対の忠誠を誓っています」


「き、貴様ぁ……! 神の軍勢を、ただの労働奴隷に貶めるとは……! 天罰が下るぞ! 必ずや、神の雷火が貴様のその薄汚い商会を焼き尽くす……っ!」


「天罰? 神の雷火?」


私は扇子をパチンと開き、心底可笑しそうにクスクスと笑い声を立てた。


「あのね、お爺さん。奇跡だの天罰だの、そんな不確定で非効率な『オカルト』で世界が回る時代は、もう終わったんですよ」


私は扇子の先を、大教皇の鼻先に真っ直ぐに突きつける。

その瞬間、私の瞳から令嬢の愛想笑いが消え去り、冷酷な資本主義の化身としての『絶対的な支配者』の冷気が空間を凍らせた。


「十万の兵の胃袋を満たすのに、自分の命を削って奇跡を起こす? 馬鹿馬鹿しい。私なら、物流網サプライチェーンを最適化し、各地の倉庫から自動で麦を転送する仕組みを作ります。……**【継続可能なシステム】**を持たない力など、一発限りの手品と同じ。大衆を恒久的に支配することなど不可能です」


「あ、あぁ……っ」


大教皇の喉から、絶望の呻きが漏れる。

彼が生涯をかけて信じ、縋ってきた『神の威光』が、私の提示した圧倒的な『経済の合理性』の前に、音を立てて崩れ去っていく。


「さて、本題に入りましょうか。わざわざこんなカビ臭い地下牢まで足を運んだのは、あなたに『サイン』をいただくためです」


私が指を鳴らすと、ガラン隊長が一枚の分厚い羊皮紙を大教皇の目の前に突きつけた。


「それは……?」


「教国が保有するすべての領地、教会資産、および魔力資源の採掘権を、セシリア商会に無償譲渡するという**【完全降伏および資産移転の同意書】**です」


「な、なんだと……!? ふざけるな! 神の土地を、貴様のような魔女の商会に明け渡すなど……絶対にサインなどせぬ!」


大教皇が血走った目で羊皮紙を睨みつける。

だが、私は痛ましく首を横に振った。


「勘違いしないでください。これは交渉ディールではなく、ただの手続き(タスク)です。……あなたがサインしなくても、すでに教国の本国は、私たちの支援物資と流通網によって経済的に完全に制圧されていますから」


武力を失った教国など、もはや手足をもがれた案山子かかしに過ぎない。

私の商会が物資の供給を止めれば、明日にも教国は飢えで滅びる。生殺与奪の権は、完全に私の掌の上にあるのだ。


「サインすれば、帝都の外れの修道院で、静かに余生を送る権利くらいは差し上げます。……ですが拒否するなら、かつての宰相バルディスのように、すべてを失った難民たちの真ん中に、あなたを裸で放り込みますよ?」


大教皇の肩が、ビクンと大きく跳ねた。

神の代行者としてのプライドと、生物としての根源的な恐怖。その二つが天秤に掛けられ――数秒後、彼の手はガタガタと震えながら、ガラン隊長から羽ペンを受け取っていた。


カリカリ、という乾いた音が、地下牢に響く。

世界最大の宗教国家が、一人の商人の前に完全に屈服し、その資産を丸ごと飲み込まれた瞬間だった。


「……賢明な判断(損切り)です。お疲れ様でした、元・大教皇猊下」


私はサインされた羊皮紙をサッと奪い取り、背を向ける。

もはや、彼にかける言葉は一文字も残っていなかった。


地下牢を出て、地上へと続く螺旋階段を上りながら、ガラン隊長が感嘆の息を漏らした。


「……これで、西方教国も完全に我々の手中に落ちました。アルフェン王国、南方大陸、そして教国。……セシリア様、あなたはこの大陸のすべての富とインフラを、本当に独占してしまったのですね」


「ええ。ですが、ガラン隊長」


私は地上の眩しい光が差し込む扉を押し開け、帝都の澄み切った青空を見上げた。


独占市場モノポリーを完成させたからといって、歩みを止める商人は三流です。……世界を一つの巨大な『私の商会』に染め上げるまで、まだまだやれることは山のようにありますよ」


帝国軍に吸収された十万の元・聖騎士たちは、今頃、私の商会の物流網をさらに拡大するための『巨大な街道ハイウェイ』の建設に汗を流しているはずだ。

システムはアップデートされ続け、富は雪だるま式に膨れ上がる。

誰も傷つかず(逆らう愚か者は別だが)、誰もが私の商品に依存して幸せな顔をする、狂気と合理性の支配する新世界。


「さあ、ウニ! 次はどの市場の常識ルールを破壊して、金貨の雨を降らせてやろうか!」


「キュイイィィッ!!」


私の高らかな宣言に、相棒の魔獣が嬉しそうに鳴き声を上げる。

婚約破棄され、祖国を追放された悪役令嬢。

彼女の果てしない強欲と、冷徹なビジネスモデルが、異世界そのものを完全に【ハッキング】し尽くす日は、もうすぐそこまで来ていた。

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