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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第8章:侵略宇宙盗賊 編

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第487話 絶望の経理

ホローフィンガーの旗艦が展開する偽りの平和の結界を突き破り、要塞千代田がその心臓部へと肉薄する。だが、その行く手を遮るように現れたのは、かつて卑屈な笑みを浮かべていた事務員、サブロックの成れ果てだった。


今の彼は、以前のような路傍の石ではない。神々から与えられた捏造の絆を、自らの憎悪で煮詰め、純化させた結果、存在そのものが一つの銀河に匹敵する質量を持つ超常の怪物へと変貌していた。


「無駄だ、理子社長。今の俺は、宇宙のすべての経費を独断で却下できる。俺が否認すれば、あんたたちの突進も、その命の鼓動さえも、一円の価値もない不適切な支出として消滅するんだよ!」


サブロックが虚空に巨大な赤いペンを走らせる。その一振りで、要塞の外装がバグのように歪み、アーサーの聖剣が紙の束へと変質しかける。これまでの敵とは比較にならない、兆を超える出力の拒絶権。


「理子、あいつ……本当に兆強いわね。存在の根源にある『計上理由』そのものを消しに来ているわ」


脳内の葛城総理の声に緊張が走る。だが、理子は不敵な笑みを崩さなかった。


「強いわね。でもサブロック、あんたは大きなミスをしているわ。……アリス、全システムの制御をマニュアルに切り替えなさい。これより、当社に伝わる伝説の操舵術を執行するわよ」


「了解しました、理子最高経営責任者。因果律のハンドル、ロック解除。……。理子様、例の座標に、……インド人が出現しました」


要塞のメインモニターの中央、次元の歪みから突如として、ターバンを巻いた概念的なインド人が、不思議なポーズで宙に浮かび上がった。サブロックの放つ超常の攻撃が、そのインド人の周囲で激しいノイズとなって渦巻いている。


「な、何だ、その不純物は!? 俺の完璧な否認ロジックに、そんな無関係なデータは存在しないはずだ!」


サブロックが狼狽し、ペンを振り下ろす。だが、理子の鉄の義手が、要塞のメインコンソールに備え付けられた黄金のハンドルを力強く掴み取った。


「サブロック。あんたのロジックが完璧なら、その中心にある『理不尽なノイズ』には勝てないわ。……。行くわよ、葛城! 宇宙の平和を、私たちの右側に放り出すのよ!」


理子は渾身の力を込め、黄金のハンドルを時計回りに一気に回しきった。


「インド人を右に!」


理子の叫びとともに、要塞千代田の全質量が、物理法則をあざ笑うかのような鋭角で右へとスライドした。その動きは、サブロックが構築した完璧な拒絶の軌道を完璧に回避し、同時に中心にいたインド人の概念が強大な遠心力となって、サブロックの存在そのものを弾き飛ばした。


「な、……。バカな、……。俺の兆の力が、……。ただのハンドル捌きで、……。右にやられただと……!」


サブロックの叫びは、要塞の加速音に飲み込まれて消えた。難なく、そしてあまりにも呆気なく、宇宙最強の事務員は因果の彼方へと追放された。


そのままの勢いで要塞千代田はベギルの玉座へと突入し、彼が盾にしていた平和の権限を、文字通り右から左へと受け流して粉砕した。


「……。終わったわね。アリス、ホローフィンガーの残党の全資産、および平和の主権を、当社の特別利益として計上しなさい」


理子は司令席で深く息を吐き、コーヒーを一口啜った。


「理子、見事だったわ。あのインド人を右にやる判断、私でも一瞬迷ったけれど、あれこそが真の経営判断ね」


葛城の称賛を受け、理子の不敵な笑みが、真の平和が戻り始めた星々の光の中で、誰よりも誇らしげに輝いていた。


新生ユグドラシル社、決算完了。

宇宙の平和は、今、彼女たちの完璧な帳簿によって、誰の手にも届かない黒字の向こう側へと守られた。

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