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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第8章:侵略宇宙盗賊 編

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第485話 塵と弾丸

暴落の赤い光が宇宙創造株式会社の本社ビルを飲み込み、因果律の電子音が悲鳴のように響き渡る中、神崎理子は司令席から冷徹にその光景を見つめていた。敵の株価はもはや0に近い。だが、追い詰められた巨大企業というものは、その死に際に最も醜悪で、かつ強力な足掻きを見せるものだ。


「理子最高経営責任者、報告します。敵の本社役員会は、最後の防衛策として、保有するすべての優良宇宙資産を切り離し、それらを物理的な障壁として展開し始めました。彼らは、自らが生み出した生命の輝きさえも、当社の突入を阻むための防弾チョッキとして利用するつもりです」


アリスの声が、ノイズの混じる空気の中で響く。モニターには、かつて美しく輝いていた銀河が、ただの質量爆弾として要塞千代田に向けて射出される様子が映し出された。


「自分の子供たちを盾にするなんて、本当に腐りきった経営陣ね。葛城、あんた。あんな汚い連中に、私たちの綺麗な黒字を汚されたくないわよね?」


理子の問いに、脳内の葛城総理が鋭く応じる。


「当然よ。あんなものは資産じゃない、ただの塵よ。理子、今こそあの戦術を使いなさい。敵が投げ捨てたゴミを、敵の心臓を撃ち抜く最高の弾丸に変えてやるのよ」


理子の口角が不敵に吊り上がった。


「ええ。アリス、ネット。全社員に告げなさい。これより、究極の資産整理、ダストアンドショットを執行するわ」


1. 塵の掃き溜め、あるいはダストの回収

ダストアンドショット。それは、暴落した市場に漂う膨大な負債の断片と、価値を失った宇宙の残骸を、力ずくで一箇所に圧縮する荒技だった。


「アリス、敵が放り出してきた銀河の残骸、および物語の死骸をすべて一円で買い叩き、要塞の重力炉に放り込みなさい。ゴミの分別なんて必要ないわ。すべてを等しく負債という名の塵として定義するのよ」


「了解しました。ダスト回収プロセス、開始。敵が防御として展開した全ての質量を、当社の特別目的会社(SPC)を通じて一括で引き受けます。彼らは重荷が取れたと喜んでいるでしょうが、その重みこそが、彼らの存在を繋ぎ止めていた唯一の錨だということに、まだ気づいていないようですね」


要塞千代田の各所から伸びる漆黒の磁気触手が、宇宙に散らばった敵の残骸を次々と吸い込んでいく。それは、死にゆく企業が切り捨てた過去の栄光を、理子が冷徹にゴミとして処理していく光景だった。


2. 圧縮の旋律、あるいはショットの装填

回収された塵は、要塞の中央でネットのデバッグによって極限まで圧縮された。数千億の絶望、数兆の未払い残業代、そして数京の物語の残骸。それらが一つの点に凝縮され、物理法則を無視した超高密度の弾丸へと変貌していく。


「ネット、照準は合わせられた?」


理子の問いに、神経を極限まで加速させたネットが汗を流しながら答えた。


「完璧です、理子さん。敵の役員会が立て籠もる本社のメインサーバー、その唯一の法的脆弱性、取締役の利益相反ポイントに完全にロックしました。この弾丸を撃ち込めば、物理的な破壊だけでなく、彼らの会社としての法的地位そのものが、内部から爆散します」


理子は鉄の義手を掲げ、その指先を敵の心臓部へと向けた。


「宇宙創造株式会社。あんたたちが使い捨てたゴミの重み、その身をもって清算しなさい。これが当社の最終的な、そして最も慈悲深い回収方法よ」


3. ダストアンドショット、執行

「ダストアンドショット、発射!」


理子の咆哮とともに、要塞千代田から放たれたのは光ではなかった。それは、光さえも吸い込む漆黒の塵の塊。宇宙のすべての負債を詰め込んだ、概念的な絶対質量弾だった。


弾丸が放たれた瞬間、敵の展開していた防壁は、自らの一部であった塵に共鳴し、バターのように易々と切り裂かれた。そしてその一撃は、宇宙創造株式会社の本社ビルを、その最深部にある登記簿の原本ごと貫いた。


爆発は起きなかった。代わりに、巨大なビルが、内部から灰となって崩れ落ちていった。彼らが積み上げてきた虚飾の資産、粉飾された利益、そして誰かを踏みつけにして得た地位。それらすべてが、理子が撃ち込んだ「塵」の重みによって、一瞬にして歴史の闇へと押し潰されたのだ。


「……チェックメイトね」


理子は静かに、しかし誰よりも傲慢にそう告げた。


モニターには、時価総額が完全にゼロになり、法人格が消滅した宇宙創造株式会社の最後の記録が映し出されていた。かつて神々を支配していた大企業は、今や宇宙の隅に漂うただの塵へと戻った。


4. 経営の真髄

「理子、見事だわ。塵を集めて弾丸に変える。不毛な残骸さえも武器にするその手腕、まさに私の見込んだ経営者ね」


葛城の称賛に、理子はふっと笑みを漏らした。


「ゴミだって、集めれば立派な資源になるのよ。……アリス、勝利に浸っている暇はないわ。今撃ち込んだ塵の回収作業、および倒産した敵の全知財権の接収を急ぎなさい。黒字を確定させるまでが、私の仕事よ」


「了解しました、理子最高経営責任者。戦場跡地の清掃作業、および遺産分割協議書の自動作成を開始します。……。どうやら、次の四半期の収支は、宇宙をもう一つ買い取れるほどの利益が出るようです」


理子は、窓の外で静かに崩壊していく元巨龍の残骸を見つめ、新しく届いた苦いコーヒーを一口啜った。


不自由な自由。

不条理な経営。


その果てに、理子はまた一つ、この不毛な宇宙に新生ユグドラシル社の黒字を刻み込んだ。


理子の不敵な笑みが、崩壊した星々の光を背にして、誰よりも誇らしげに輝いていた。

彼女たちの、情熱に満ちた残業は、宇宙の果てまで、永遠に終わることはないのだから。

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