子爵令嬢の真実(3月30日午後4時 教会内応接間での密談)
「すべては私のせいなんだ。妻の死に正気を失い、彼女があんなに楽しみにしていた娘の人生を台なしにした…」
自嘲気味に薄く微笑みながら呟くガブリエルをニクラウスがじっと見つめる
「公爵家の瑕疵になろうとあの娘を公爵籍に入れるべきだった…今更何を言っても遅いんだがね」
「ガブリエル様…」
「陛下に会いに行って全部話そうと思っている。こんな騒ぎになってしまったんだ、黙っている訳にはいかないだろ?誰かが責任を取らなくちゃ」
冷めてしまったカップの紅茶を飲み干してガブリエルはスクッと立ち上がった
「取り潰しまではいかないだろうけど、降爵は免れないかな?せめてあの娘だけは守りたいんだが…」
コツコツと扉に向かって歩きながら独り言のように呟く
ドアを開ける瞬間、ガブリエルはニクラウスを振り返り
「紅茶をご馳走様。あの娘を頼むよ、ニクラウス」
と声をかけると、すっきりとした笑顔で部屋を後にした。
ニクラウスはしばらくの間、ガブリエルが出て行った扉を見つめていたが、大きく息をひとつ吐き出すと手を伸ばしテーブルの上に置かれた小さな小箱を手に取った
蓋を開け、中の光る球を取り出し、冷めきった自分の紅茶カップの中に沈める
ガガッと言う音の後にピーというエラー音が鳴り、録音されていた音声が消去された
「私も陛下に会いに行かねば」
そう呟いて立ち上がると扉に向けて歩きだしたが、ふと何かを思い出した様に立ち止まると、くるりと振り返り執務机の引きだしの中にある調書の音声記録のシートを1枚取り出し、一部を破り捨てた。
「誰かが責任を取らなきゃいけないのは確かですが、それは貴方である必要はないんですよ、ガブリエル様」
勝手に音声を消した箱と破損させたシートを1枚手に持つとニクラウスは扉を開けて部屋を後にした。




