聴取記録:セバスティアン・フィール元子爵~3月25日 午後3時 教会内応接間
―遠くまでありがとうございます。本日は、フィール子爵家の養女でいらっしゃいますアリサ嬢のことでいくつかお伺いしたくお呼びさせていただきました―
はい、大体のお話はお手紙でお知らせ頂いているので存じております。お尋ねになりたいのはアリサの出自でいらっしゃいますね?
―はい、そうです。彼女は何処の孤児院に預けられていたのですか?―
あの子は、どこの孤児院にも在籍しておりません
―それは、どういう?―
あの子の出自については、お許しが出ないと私ではお答えすることができないのです。
私がお話しできるのは、あの子は孤児院の出身ではないということだけでございます
―許しですか?それは何方からの?―
それも私の口からは…
ただ、こちらに呼び出された際に手紙を送りましたので近々折り返しの連絡が届くかと存じます
許可が出るかどうかは定かではありませんが、許可が出ましたらすべてお話させていただきますので、今はご容赦くださいませ
―では、本日は別の話をいたしましょう。お送りしましたお手紙には出自の問い合わせの事しか書いておりませんでしたが、この度、アリサ・フィール子爵令嬢が『聖女』と認定されました―
そうですか、やはりそうだったのですね
―フィール元子爵様がフィール嬢に『聖魔法』を使うことを禁じ、そのことを誰にも話すなとお命じになったと伺いました―
命令ではありませんが、何があるかわかりませんから他人の前で使用はしない様に教えておりました
―フィール嬢の『聖魔法』は一体いつどういった状況で現れたのですか?―
あの子が10歳の時です
領内で、果実を取りに森の中に入った子供が一人、行方不明になったのです
町の大人たち総出で探索したのですが、なかなか見つからず一晩が立った時、アリサがふと「あの子は穴の中にいる。足を怪我していて登ってこれない」のだと言い出しました
本当の事かどうかは不明ですので、息子と私とアリサの3人でアリサの言う場所に行ってみたのです
獣が掘った小さな穴の中にその子供がおりました
その子は、落ちた際に折ってしまったのか足首が酷く腫れていて、痛みと疲れからか意識は朦朧としておりました
息子が穴から引っ張り出し、抱き上げて運んでいる最中にアリサがその子の腫れている脚に手をかざしたのです
その瞬間、アリサの手から眩い光が発せられ、その子の足を光が包みました
その光が消えた時、腫れていたはずの足は綺麗に治っていたのです
聖魔法だと気が付きました
その場でアリサにこの力を隠すように言い含めました
―『聖魔法』を使える者を見つけた際は教会へ連絡するのが義務だとご存じなかったのですか?―
いえ、存じ上げておりましたが、私の一存で決められることではありませんでしたので…
―それは、誰か他の人間の許可が必要だったということですね―
はい、そうでございます
―それは、今連絡を入れている相手と同一の人物ですか?―
…はい
―貴方がそうまでして守るということは、相手はもしかして…―
大変です、ニクラウス様!
―何ですか、お客様がいらっしゃるのですよ―
申し訳ありません、ですが、それどころではないのです
『聖女』様が連れ去られました
―何ですって?!―
教会に向かう馬車が襲撃され、『聖女』様が連れ去られてしまったのです
―いったい誰がそんな…―
同乗していたシスタークララの話ですと、サミュ………
(以降、音声記録なし)




