聴取記録:サミュエル・コモンノルド公爵令息~3月24日 午後1時 王城内聴取室
―本来ならば殿下を諫める立場でいらっしゃるのに、なにゆえあんな暴挙に出た殿下に同調を?―
申し訳ございません
―謝罪をしてほしい訳ではありません。理由を訊ねているのです―
殿下が望まれましたので、その様に…
―貴方もバスティア侯爵令嬢がフィール子爵令嬢に嫌がらせをしていると考えていたのですか?―
いいえ
彼女は気がきついが正義感の強い女性なので多分彼女ではないだろうと思っていました
―では、なぜあんな真似を?―
殿下から婚約を破棄したいので協力してほしいと頼まれましたので…
―あんな騒ぎを起こして、王太子の位をはく奪される可能性は考えなかったのですか?―
考えました
―まさか、殿下を王太子の座から引きずり下ろすつもりだったのですか?
引きずり下ろすつもりは…ただ、そうなっても仕方がないとは思っていました…
いや、違うな…そうではない
あわよくば廃嫡された後、除籍されて平民へ落されるのでは…と少し期待しておりました
―何故そんなことを?―
平民になればアリサと婚姻を結ぶことができなくなるでしょう?
『聖女』だったとしても、そうじゃなかったとしても初婚の貴族は平民とは婚姻ができない…
殿下が平民になれば、養女といえど子爵家の令嬢であるアリサとは結ばれない…
何の罪もない侯爵令嬢をたくさんの人間の前で貶めたのですから、それ相当の罰を受けなくては…
殿下はそこまで考えが及んでいなかった様ですが
―殿下をそそのかしてあんな真似をさせたのですか?―
いいえ、そそのかしてはいません
ただ傍観していただけです
嗜めず、注意せず、ただじっと見ていただけです
―どうして、そんな…―
アリサを誰にも渡したくなかったのです
―ご自分も廃嫡され除籍されるかもしれないとは考えなかったのですか?―
私はあの場にただ黙って立っていただけです
バスティア侯爵令嬢を罵ってもいなければ殿下の言葉に同調もしておりません
―それはただの詭弁です―
傍から見ればそうでしょう。しかし、私の父ならばそう考え、除籍までは行わない
せいぜい、『嫡男の座をはく奪』され、『わが家が所持する子爵位を継承』させるという処分で済む
子爵になればアリサとの婚姻も可能になるでしょう?
―コモンノルド公爵令息はフィール子爵令嬢が『聖女』ではないと考えてらっしゃるのですね―
リノリーや殿下はそう言っていますが、私は自分の目で見てはいませんので
―フィール子爵令嬢と釣り合う爵位を得るために殿下の暴挙をずっと傍観してらしたのですね―
殿下の暴走は好都合でした
―なんという馬鹿なことを…―
それもこれも父上が彼女との婚約を許可下さらないから
何年も訴えているのに、爵位の差や、元平民だからという理由で却下されてしまう
教養もマナーも上位貴族のそれと全く遜色がないというのに
―コモンノルド公爵令息はフィール子爵令嬢と昔から知り合いだったのですか?―
セバスティアンは我が家の侍従長でしたので、昔、フィール子爵領に遊びに行った時に出会いました
私が11歳、彼女が9歳の時です
初めて会うのに何故かとても懐かしく感じた…
この出会いは運命なんだと思いました
―そうですか。これは余談ですが、貴方のお父上の性格から望み通り貴方は廃嫡され子爵位を継承することになるでしょう。ただ、残念ですね。昨日、フィール子爵令嬢が『聖女』だと判定されました。手続等はまだ行われておりませんが教会はこれを認証し近々国中に発表する予定です。―
え?なんだって…?聖…女?そんな…
―『聖女』様の婚姻の規約によりますと、子爵位の貴方とは婚姻を結ぶことは不可能ですね、残念でしたね―
…そんなっ




