聴取記録:ビンセント・エルモア伯爵令息~3月23日 午後11時 王城内聴取室
―エルモア伯爵令息はベルモンヌ子爵令息からフィール子爵令嬢の話を聞いたとき、どう思いましたか?―
特に何も
―はっ?―
だから、特に何も
―『聖女』様だと聞いても何も思わなかったということですか?―
そうだな、特に何も思わなかったな
―ベルモンヌ子爵令息の話を聞いても、『聖女』様だと聞いても何も思わなかった?―
ああ、そうだ
―でも、貴方は殿下と一緒になって彼女の事を『聖女』様だと、周りに吹聴して―
ああ、殿下がそう望んだからな
―もしかして、貴方はフィール子爵令嬢が『聖女』様であるとは信じていなかった?―
俺が信じているか信じていないかは関係ないだろう?
殿下がアリサを『聖女』だと言い、それを学園の皆に発表したいと言った
だから俺はアリサが『聖女』だと学園中に振れ回った
それだけだ
―ただ、殿下がソレを望んだから…ということですか?―
そうだ
―なぜ?そんな…―
なぜ?
それは親父から『《《殿下の言うことは聞く》》』ように言われているからに決まってるだろう
主人の言うことを忠実に聞くのが立派な家臣だと教わっているからな
―では、貴方は殿下が『誰それが気に入らないから殺せ』と命令したらその者を殺すのですか?―
何を言っているんだ?
殿下はそんなことを言わないだろう
―そういった命令をしない方なのは知っています。今は例えばの話をしているのです―
そういうお方でないのを知っているならそんな例え話を何故したんだ?
おかしな奴だな
―もう結構です、申し訳ありません。つまり、エルモア伯爵令息は殿下が望んだからフィール子爵令嬢を『聖女』様だと触れ回り、殿下が望んだからバスティア侯爵令嬢を弾劾なさったということですね―
そうだ
俺にとってはアリサが『聖女』か、そうじゃないかはどうでも良いし、バスティア嬢がアリサに嫌がらせをしていたのか、していなかったのかの事実はどうでも良い
殿下が望むなら、そう行動し忠実に動く、それこそが忠臣の証だから
―その所為で何の罪もない令嬢が国外追放されそうになったのですよ―
それは、俺も少し驚いた…
まさか殿下がそんなことまで言うとは思ってなかった
殿下の言葉通りバスティア嬢は国外へ追放されるのか?
―いいえ。令嬢の身の潔白は証明されております。それに、もし、本当に令嬢が嫌がらせを行っていたとしても殿下の一存で国外追放できるものでもありません。きちんとした精査と手続きが必要です―
そうか、それなら良かった
―最後にもう一度確認させていただきます。つまり貴方は、殿下が望んだことなのですべて殿下の望むままに行動なさった。そして、フィール子爵令嬢の事は『聖女』様かどうかは気にもしていなくて、バスティア侯爵令嬢の行ったとする嫌がらせに関してはどうでも良い事だったということですねー
まぁ、そうだな
―そうですか、ありがとうございます。本日の聴取は以上とさせていただきます。ただ、最後に一言だけ―
なんだ?
―貴方は少し『自分で考える』ということをなさった方が良い。では失礼いたします―




