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聖女騒動~聴取の音声記録と調査官の日記  作者: マツモト和磨


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調査官 アリウーラ教会 司教 ニクラウスの日記~ブロックバルド暦821年3月22日

 間違いなくアリサ・フィール子爵令嬢は『聖女』様だった


 140年振りに現れた『聖女』様に教会内の人間が浮足立っているのが少々気にかかるが、まぁ、気持ちは良く解る

 フィール嬢の手がアリウーラ様の像に触れた瞬間に降り注いだ光を目にしたとき、私も興奮のあまり声を出してしまったのだから


 しかし、あんなに美しい光を見たのは初めてだ

 まさか私の生きている時代に『聖女』様が顕現してくださるとは…


 これでフィール子爵令嬢が『王族の血を継ぐ高位貴族の血脈の娘』であることが判明した訳だが、この先の調査は慎重に行わなくては…


 何処の家の血を引いているのか?

 どうして孤児院に預けられていたのか?


 歴々の王女様が降嫁なさった家は、コモンノルド公爵家、イルギオーレ侯爵家、ギネット侯爵家、リリオッジェラ伯爵家の4家である

 そして、王族の血を引くという点では、王弟であらせられるフィリップ・エイダール公爵閣下も候補に挙げねばなるまい

 国外へ嫁いだ王女様もたくさんいらっしゃるが、国外へ出るとアリウーラ様の庇護を離れるため、聖なる力は産まれ出でない

 故に確実に彼女は国内の高位貴族の血を引いていることになる


 有力候補はコモンノルド公爵家とエイダール公爵家だが、フィール嬢の年齢を考えるとガブリエル様の可能性は低いのではないだろうか

 あの頃はガブリエル様の最愛であるアンジェリカ様がご存命でいらした筈だ

 愛人を囲っていらしたとは到底考えられない

 その点、エイダール公爵閣下のところは仮面夫婦であることを公言している上、公の場でも必要な時以外は離れて行動をしているぐらいの関係である

 愛人の一人や二人いても不思議ではない


 いかんいかん、聖職者である身でありながらゴシップ記者の様な事を考えてしまった


 兎にも角にも、セバスティアン・フィール殿には召喚状を送らせていただいた

 フィール子爵領までは馬車で2日ほどだろうか?


 セバスティアン殿が王城にやってくるまでの間は、『聖女』騒動の中心にいた残りの2人、サミュエル・コモンノルド公爵令息、ビンセント・エルモア伯爵令息や嫌がらせ事件に係わったであろうフィール嬢のクラスメイト達から話を聞くことにしよう


 そうか、陛下の隠し子である可能性もあるのか…

 どちらにしても、このことは慎重に慎重に…


 しかし、本当に以前にお会いしたことがないのだろうか…

 お顔を拝見している内に何故か懐かしい気持ちになったのだが…

 もしや、これも『聖女』様の御力のひとつなのだろうか?

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