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第68話 守る者たちの戦

人は。

守りたいものができた時。

自分でも知らなかった力に出会う。

法螺貝が大地を震わせる。

豊後軍。

薩摩軍。

ついに激突した。

槍がぶつかる。

刀が火花を散らす。

鉄砲の轟音が山々へ響く。

土煙が空を覆う。

島津軍は強かった。

鍛え抜かれた連携。

無駄のない動き。

実戦で磨かれた兵たち。

大友軍も必死に応戦する。

だが。

少しずつ押され始めていた。

「右翼、後退!」

「左翼も押されています!」

伝令の声が飛ぶ。

宗麟は静かに戦場を見つめる。

鑑連の神弓が唸る。

放たれた矢は敵将の槍を弾き。

次の矢は馬前へ突き刺さる。

兵を守るための神弓。

だが。

それでも島津軍の勢いは止まらない。

――――――――

その頃。

整命部隊には次々と負傷兵が運ばれていた。

「こちら重傷!」

「止血を!」

「水を!」

アルメイダが傷を縫う。

ハリーが呼吸を整える。

兵たちは担架を運び続ける。

救護に人手を回すたび。

前線の兵は減っていく。

戦況はさらに苦しくなる。

若い兵が叫んだ。

「ハリー様!」

「このままでは負けます!」

ハリーは静かに答えた。

「命を見捨てて得る勝利なら。」

「私は。」

「それを勝利とは呼びません。」

整命部隊は。

誰一人。

手を止めなかった。

――――――――

その時だった。

崩れ始めた前線を見つめる一人の男がいた。

清太である。

混乱。

悲鳴。

負傷兵。

逃げ惑う兵。

その光景が胸を締めつける。

(守りたい……。)

その想いだけが。

心の中で大きくなっていく。

ふと。

ハリーの言葉が蘇る。

――お前は将になる。

(俺が……。)

(将……。)

次の瞬間。

清太は叫んだ。

「右翼は一度下がれ!」

「負傷兵の退路を確保しろ!」

「第二隊!」

「整命部隊を守れ!」

兵たちは一瞬驚く。

だが。

その声には迷いがなかった。

「鑑連様!」

「左翼の援護をお願いします!」

鑑連は小さく笑う。

「ようやく目覚めたか。」

神弓が再び鳴る。

崩れかけた戦線が。

少しずつ立て直されていく。

宗麟が目を見開いた。

「あれが……。」

ハリーは静かに微笑む。

「将です。」

「優しい人ほど。」

「本当に守りたいものができた時。」

「誰よりも強くなります。」

「平和な時代なら。」

「清太は、ただ優しい男で終わっていたでしょう。」

「ですが。」

「守るべき命ができた今。」

「彼は、自分の役割を思い出しました。」

宗麟は大きく頷いた。

――――――――

その光景を。

遠くから黄金の天秤が見つめていた。

整命部隊は敵味方を問わず救い続ける。

大友兵。

薩摩兵。

命ある者すべてへ手を差し伸べる。

そして。

助けられた薩摩兵が。

今度は敵味方関係なく負傷兵を運び始めた。

黄金の天秤は息をのむ。

「敵が……。」

「敵を助けている……。」

脳裏に。

一人の青年の姿が浮かぶ。

レオン。

あの日。

ハリーを見つめていた眼差し。

「……そうか。」

「だから、お前は……。」

「ハリーに惹かれたのか。」

黄金の天秤は初めて。

部下の心を理解した。

そして。

小さく呟く。

「疑いだけでは……。」

「守れぬものも、あるのか……。」

戦は。

なお続く。

だが。

戦場には確かに。

新しい風が吹き始めていた。

優しさは。

弱さではありません。

本当に守りたいものができた時。

優しさは。

人を導く強さへと変わるのです。

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