第47話 一%
一%。
それは。
絶望なのか。
それとも。
希望なのか。
その答えは。
信じる者だけが知っている。
府内城。
一人の男が横たわっていた。
レオン。
呼吸は浅い。
脈もほとんど触れない。
毒は全身へ回っていた。
部屋には。
重苦しい沈黙だけが流れている。
宗麟。
鑑連。
アルメイダ。
整命部隊。
誰も口を開かなかった。
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ハリーだけが。
静かに脈を診ていた。
目を閉じる。
耳を澄ませる。
呼吸。
鼓動。
身体の熱。
流れ。
長い。
長い沈黙。
宗麟が静かに尋ねる。
「……先生。」
「どうだ。」
ハリーは。
ゆっくりと目を開けた。
「……一%です。」
空気が止まった。
誰も動かない。
家臣の一人が震えた声を漏らす。
「一%……。」
「それでは……。」
その先は言えなかった。
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ハリーは。
なおもレオンの脈に指を添えていた。
「人間の力は。」
静かな声だった。
「私たちが思っているより。」
「ずっと大きい。」
誰も言葉を挟まない。
「身体には。」
「生きようとする力があります。」
「その力は。」
「時に。」
「私たちの想像を超えます。」
宗麟は黙って聞いていた。
「まだ。」
「この人に。」
「やるべきことが残っていると。」
「身体が決めれば。」
「全身が。」
「もう一度。」
「生きようと動き始めます。」
ハリーは。
そっとレオンの胸へ手を添える。
「私は。」
「その力を信じます。」
静寂。
風だけが障子を揺らした。
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「助かる保証はありません。」
「奇跡を約束することもできません。」
「ですが。」
「最後まで。」
「諦めません。」
宗麟は静かに頷いた。
「運べ。」
「先生。」
「頼みます。」
「はい。」
ハリーは短く答えた。
「最後に決めるのは。」
「私ではありません。」
「天です。」
「ならば私は。」
「天が答えを出す、その瞬間まで。」
「人として。」
「できることをやり切ります。」
誰も反対しなかった。
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それから。
三日。
レオンは目を覚まさなかった。
昼も。
夜も。
生と死の境界を漂っていた。
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その間。
レオンは夢を見ていた。
青い空。
果てしなく広がる草原。
風が吹く。
その先に。
ハリーが立っていた。
「遅かったな。」
いつもの笑顔だった。
二人は並んで歩く。
戦のない村。
笑う子どもたち。
畑を耕す兵。
傷を癒やす整命部隊。
宗麟が民と笑い合っている。
「これが……。」
「未来だ。」
ハリーは静かに言う。
「一人じゃ作れない。」
「だから。」
「一緒に整えよう。」
レオンは。
何も言わず。
静かに頷いた。
その瞬間。
天から。
一筋の光が降り注いだ。
ハリーが微笑む。
「まだ。」
「お前の役目は終わってない。」
光が。
すべてを包み込む。
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「……レオン!」
誰かの声が聞こえた。
閉じていた瞼が。
ゆっくりと開く。
「先生!」
「脈が戻りました!」
「鼓動も……!」
部屋がざわめく。
誰も信じられなかった。
ハリーは。
静かに目を閉じる。
そして。
誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「……ありがとうございます。」
その言葉が。
誰に向けられたものなのか。
誰にも分からなかった。
ただ。
朝日だけが。
静かに部屋を照らしていた。
人が諦めても。
身体は。
まだ諦めていないことがある。
だから私は。
最後の一瞬まで。
命を信じたい。




