第37話 分断する者たち
人は戦で滅びるのではない。
人と人との繋がりが切れた時、
本当の滅びが始まる。
府内城。
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整命部隊の朝は早い。
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井戸では水を汲む人々。
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川では洗濯をする女性たち。
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薪を割る男たち。
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畑を耕す老人。
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炊事をする母親。
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朝から誰もが忙しかった。
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ハリーは、その姿を静かに見つめていた。
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「先生。」
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清太が隣に立つ。
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「何を見ているんですか?」
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ハリーは優しく微笑んだ。
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「未来ではね。」
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「身体を調べる学問が、とても進んでいます。」
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「身体を切り開いて学び。」
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「薬を作り。」
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「病気を治そうと努力しています。」
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清太は目を丸くした。
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「そんな未来があるんですか。」
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「あります。」
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「素晴らしい未来です。」
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「でも。」
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ハリーは井戸へ目を向けた。
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「この時代には、この時代の素晴らしさがあります。」
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宗麟も話を聞いていた。
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「何が違う?」
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「自然です。」
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「風。」
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「土。」
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「水。」
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「鳥の声。」
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「虫の声。」
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「全部、生きています。」
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「未来では、こんな自然を毎日感じられる人は少なくなります。」
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皆が静かに耳を傾ける。
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「ただ。」
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「この時代の人は忙しすぎます。」
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「水を運ぶ。」
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「薪を割る。」
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「畑を耕す。」
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「炊事をする。」
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「洗濯をする。」
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「家族を守る。」
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「自分の身体を整える時間がありません。」
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宗麟も頷いた。
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「確かに。」
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「自分のことは後回しだ。」
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ハリーは少し考えて言った。
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「だからこそ。」
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「整える時間は特別に作るものではありません。」
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「暮らしの中へ入れるんです。」
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兵たちが首をかしげる。
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「井戸まで歩く時。」
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「呼吸を整える。」
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「薪を割る時。」
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「身体の軸を意識する。」
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「洗濯をする時。」
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「肩甲骨を大きく動かす。」
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「畑を耕す時。」
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「股関節を柔らかく使う。」
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「全部。」
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「整える時間になります。」
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清太は感動した。
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「戦だけじゃない。」
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「生活そのものが鍛錬なんですね。」
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「その通り。」
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ハリーは笑った。
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「それと。」
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「飢えは苦しいです。」
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「でも。」
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「未来は逆なんです。」
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「食べ物が溢れ。」
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「食べ過ぎで苦しむ人が増えます。」
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誰も信じられなかった。
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「だから。」
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「今ある食べ物を大切にしてください。」
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「この時代の食べ物は、本物です。」
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「水も。」
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「空気も。」
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「自然も。」
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「全部が命を育てています。」
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宗麟は空を見上げた。
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「未来とは。」
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「不思議なものだな。」
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その頃。
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薩摩。
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レオンのもとへ、新たな報告が届く。
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「ハリーは兵だけでなく。」
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「農民や町人にも身体の使い方を教えています。」
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レオンは目を閉じた。
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「……そういうことか。」
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「この男は。」
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「軍を変えているのではない。」
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「国を整えている。」
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一方。
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黄金の天秤商会。
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エドワードは静かに笑った。
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「やはり危険ですね。」
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「人を繋ぐ者は。」
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「我々にとって。」
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「最も厄介な存在です。」
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静かに。
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新たな陰謀が動き始めていた。
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今回のテーマは、
「暮らしそのものが整え」
でした。
特別な時間がなくても、
歩く。
働く。
呼吸する。
笑う。
その一つひとつが、
身体を整える時間になります。
そしてハリーが本当に変えようとしていたのは、
兵ではなく、
「人の生き方」でした。
次回、第38話。
「見えない戦場」
黄金の天秤商会が、大友家を内側から分断するための最初の一手を打ち始めます。




