第33話 守る者たち
人を守る者にも。
守る者が必要なのかもしれない。
府内城。
朝日が差し込む。
整命部隊は今日も元気だった。
笑い声。
鍛錬。
呼吸。
食事。
以前の大友軍とは別の軍になりつつあった。
だが。
一人だけ。
元気のない男がいた。
アルメイダである。
「先生」
「どうした」
宗麟が声を掛ける。
アルメイダは答えない。
いや。
答えられなかった。
昨夜の脈。
あの乱れ。
あれが頭から離れない。
「ハリー殿か?」
鑑連も気付いていた。
「……あの男」
「何か隠しておる」
アルメイダが呟く。
その頃。
城下。
ハリーは老婆の手を握っていた。
老衰。
もう長くない。
家族は泣いていた。
「ありがとうございました」
「先生」
「もう十分です」
息子が頭を下げる。
だが。
ハリーは微笑んだ。
「まだ手は温かい」
「もう少しだけ」
優しく背中を整える。
呼吸を合わせる。
静かに。
静かに。
やがて。
老婆は微笑んだ。
「ありがとう……」
その言葉を最後に。
静かに眠るように旅立った。
家族は泣きながら感謝した。
だが。
家を出た瞬間。
「ぐっ……!」
ハリーは壁に手をついた。
胸が痛む。
呼吸が苦しい。
視界が揺れる。
しかし。
「歳だなぁ」
笑って空を見上げる。
その姿を。
遠くから。
宗麟と鑑連が見ていた。
二人は偶然、
老婆の家へ礼に向かっていたのだ。
宗麟は初めて見る。
誰もいない場所で。
苦しそうなハリーの姿を。
鑑連も言葉を失う。
「……あやつ」
「いつも笑っておるではないか」
ハリーは二人に気付かない。
やがて。
何事もなかったように歩き出した。
宗麟は呟く。
「誰かを守る者を」
「誰が守る」
鑑連も珍しく真面目な顔だった。
「宗麟様」
「今度は我らの番かもしれませぬ」
その夜。
宗麟は酒を飲まず。
一人。
月を見ていた。
「ハリー」
「お主」
「どれほど一人で背負ってきた」
風が吹く。
返事はない。
だが。
宗麟の心の中では。
いつの間にか。
未来から来た不思議な男ではなく。
一人の大切な仲間になっていた。
一方。
島津陣営。
レオンもまた。
報告書を見ていた。
「ハリーは病人を診ている?」
部下が頷く。
「戦とは関係のない民まで」
レオンは静かに目を閉じる。
「何故だ……」
「何故」
「そこまでする」
その問いに。
まだ答えは出ない。
今回のテーマは、
「守る者を守る者」
でした。
優しい人ほど。
強い人ほど。
一人で抱え込むことがあります。
だからこそ。
その人を支える仲間も必要なのかもしれません。
次回。
第34話「数字では測れないもの」
レオンの価値観が、
初めて大きく揺らぎ始めます。
そして。
誰よりも先に。
レオンがハリーの異変に気付き始めるのでした……。




