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第27話 眠れる獅子たち

強さとは。

誰かを倒す力ではない。

誰かを守りたいと思う心から生まれる。

府内城。

 整命部隊が発足して三日。

 城の裏庭には。

 足軽。

 荷運び。

 馬番。

 炊事係。

 若者。

 老人。

 様々な者が集まっていた。

「まず呼吸です」

 ハリーが言う。

 兵たちは顔を見合わせた。

「呼吸?」

「戦の訓練では?」

 笑いが起きる。

 だが。

 ハリーは真面目だった。

「胸だけで息をするな」

「腹でも呼吸しろ」

 兵たちが戸惑う。

「胸は戦うため」

「腹は生きるため」

「両方必要です」

 宗麟も見学していた。

 興味深そうだった。

「次」

 ハリーが言う。

「二人一組」

 兵たちが並ぶ。

「お尻の横」

「大臀筋をほぐしてください」

 全員が固まる。

「は?」

 鑑連まで吹き出した。

「戦の訓練だぞ」

「尻を揉むのか」

 周囲が笑う。

 だが。

 数分後。

「軽い」

「足が上がる」

「腰が違う」

 驚きの声が上がり始めた。

 ハリーは頷く。

「そこは大きな筋肉です」

「流れが変わる」

「疲労も抜けやすくなる」

 次。

「頭です」

 兵たちはまた困惑した。

「頭?」

「手ぬぐいはありますか」

 皆が手ぬぐいを出す。

 ハリーは笑った。

「未来ではヘッドスパと言います」

 誰も意味が分からない。

 だが。

 頭をほぐされた兵たちが。

 次々に驚く。

「目が開く」

「頭が軽い」

「眠気が消えた」

 宗麟が笑った。

 久しぶりだった。

 こんな明るい訓練風景を見るのは。

 その時だった。

 一人の若い兵が言う。

「俺」

「絶対負けられません」

 皆が見る。

「妹がいます」

「親父も病気です」

「俺が守らないと」

 静かになる。

 すると。

 別の兵が言う。

「俺もだ」

「妻と子供がいる」

 さらに。

「俺は母親だ」

「弟たちもいる」

 次々と声が上がる。

 皆。

 守りたい人がいた。

 ハリーはその光景を見ていた。

 少しだけ。

 未来を思い出す。

 現代。

 便利な時代。

 豊かな時代。

 だが。

 一族が集まることは少なくなった。

 祖父。

 祖母。

 叔父。

 叔母。

 従兄弟。

 皆で支え合う姿も減った。

 核家族。

 孤独。

 便利さの代わりに。

 失ったものもある。

 そんな気がしていた。

 だが。

 この時代は違う。

 一族で生きる。

 一族で守る。

 一族で泣く。

 一族で笑う。

 不便だ。

 苦しい。

 戦もある。

 それでも。

 少し羨ましかった。

「良い時代ですね」

 ハリーが小さく呟く。

 宗麟が聞いた。

「何がだ」

 ハリーは笑った。

「皆」

「誰かを守るために生きている」

 宗麟は静かに空を見る。

 そして。

「それが人だ」

 とだけ答えた。

 夕日が城を赤く染めていた。

あとがき

今回のテーマは、

「守る力」

でした。

強さとは、 誰かを倒す力だけではありません。

誰かを守りたいという気持ちも、 大きな力になります。

そしてハリーは、 戦国時代の一族の絆に少し羨ましさを感じていました。

次回、

第28話 兵糧を超える知恵

ハリー流の「脂肪をエネルギーへ変える整え術」が本格的に始まります。

そして後の安納芋伏線へも少し繋がっていきます。

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