第25話 見放された少年
人は生まれながらに強いわけではない。
傷が。
人を変えることがある。
島津領を離れる道中。
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宗信の家族。
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清太。
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見張り兵。
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皆が静かに歩いていた。
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無事だった。
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誰一人欠けていない。
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だが。
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ハリーの頭からは。
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レオンの顔が離れなかった。
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「先生」
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清太が聞く。
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「レオンって何者なんですか」
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ハリーは少し考えた。
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「分かりません」
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「でも」
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「一つだけ分かる」
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全員が見る。
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「誰も信じていない」
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宗信の妻が息を飲む。
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確かにそうだった。
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レオンは。
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誰も信用していない。
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部下も。
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仲間も。
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家族も。
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誰も。
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一方その頃。
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島津陣営。
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レオンは一人で酒を飲んでいた。
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部屋には誰もいない。
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静かだった。
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窓の外には月。
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その光を見ながら。
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ふと。
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昔の記憶がよみがえる。
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幼い頃。
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痩せた少年だった。
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勉強しかできなかった。
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力もない。
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家柄もない。
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友もいない。
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「役立たず」
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「弱虫」
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「お前には価値がない」
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何度も言われた。
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何度も。
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何度も。
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だから。
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勉強した。
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数字を覚えた。
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計算した。
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分析した。
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努力した。
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そして。
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気付いた。
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「人は結果しか見ない」
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結果を出せば。
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褒める。
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結果を出さなければ。
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捨てる。
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それが現実だった。
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レオンは杯を置く。
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「だから私は正しい」
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自分へ言い聞かせるように。
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静かに呟いた。
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その時だった。
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部下が飛び込んでくる。
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「申し上げます!」
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「宗信の家族が消えました!」
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沈黙。
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長い沈黙。
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だが。
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レオンは怒らなかった。
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笑った。
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「やはり面白い」
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部下が困惑する。
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「レオン様?」
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「ハリー」
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その名を呟く。
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「お前は」
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「人を信じ過ぎる」
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月を見る。
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遠く。
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大友領の方角を。
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「だから必ず失う」
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その目は冷たかった。
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だが。
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どこか寂しそうでもあった。
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一方その頃。
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ハリーは歩いていた。
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ふと。
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胸に違和感を覚える。
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未来視ではない。
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整体師としての感覚だった。
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「レオン」
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小さく呟く。
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「あなたも」
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「1%の人間だったんですね」
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風が吹く。
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誰にも聞こえない言葉だった。
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今回、
レオンの過去が少しだけ見えました。
強い人間ほど、
傷を隠していることがあります。
そして時に。
その傷が信念になります。
ハリーは人を信じる。
レオンは結果を信じる。
二人の対立は、
ますます深くなっていきます。
読んでいただきありがとうございました。




