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第22話 将になる男

まえがき

人を見る方法は二つある。

今ある力を見る者。

まだ眠る力を見る者。

夜風が吹いていた。

 レオン・バルディア。

 ハリー。

 二人は屋敷の前で向かい合っていた。

 互いに笑っている。

 だが。

 互いに探り合っていた。

「整体師」

 レオンが呟く。

「面白い職業ですね」

「そうですか?」

 ハリーが笑う。

「人を見る仕事ですから」

 レオンも笑った。

「私も同じですよ」

 その言葉に。

 ハリーは少しだけ目を細めた。

「あなたも?」

「ええ」

 レオンは頷く。

「私は人を見る」

「能力を見る」

「価値を見る」

「可能性を見る」

 ハリーは黙って聞いていた。

 レオンは続ける。

「人は数字です」

「能力」

「知識」

「実績」

「戦績」

「結果」

「それが全てです」

 ハリーは静かに首を傾げる。

「そうでしょうか」

 レオンが笑った。

「違うと?」

 その時だった。

 荷物を運ぶ若者が横を通る。

 誰も気にしない。

 ただの荷運び。

 レオンも視線すら向けない。

 だが。

 ハリーは見ていた。

 歩幅。

 呼吸。

 目線。

 人との距離感。

 そして。

 周囲への気配り。

「将になりますね」

 ハリーが呟く。

 レオンが笑った。

「彼が?」

「はい」

「将になります」

 レオンは肩をすくめた。

「荷運びですよ」

「文字も読めない」

「家柄もない」

「戦績もない」

 ハリーは静かに答える。

「余裕があります」

「人の話を聞く」

「失敗を隠さない」

「周りを見ている」

「伸びます」

 レオンは少し黙った。

 初めてだった。

 そんな評価基準を聞いたのは。

「面白い」

 だが。

 すぐに笑う。

「非効率です」

「才能がある者だけを使えばいい」

 ハリーは首を振る。

「それだと組織は弱くなります」

「何故です?」

「埋もれた人材がいるからです」

 レオンの眉が動いた。

「埋もれた人材?」

「ええ」

「誰も気づいていないだけです」

 ハリーは町を見渡した。

 荷運び。

 馬番。

 炊事係。

 農民。

 子供。

「人材と思われていない人の中に」

「宝がいます」

 レオンは笑う。

「理想論ですね」

「そうかもしれません」

 ハリーも笑う。

「でも」

「私は何度も見てきました」

「無から有になる人を」

 その瞬間。

 レオンは初めて違和感を覚えた。

 この男は。

 未来の知識があるから危険なのではない。

 人を見る目が異常なのだ。

 その時。

 屋敷の奥から。

 再び子供の泣き声が聞こえた。

 宗信の娘だった。

 ハリーの表情が変わる。

 優しかった目が。

 鋭くなる。

「その子も数字ですか?」

 レオンが黙る。

 短い沈黙。

 そして。

 微笑んだ。

「必要な駒です」

 ハリーの拳が静かに握られた。

 この男とは。

 分かり合えない。

 初めてそう思った。

あとがき

レオンは「今ある能力」を見ます。

ハリーは「まだ見えていない可能性」を見ます。

同じ人を見る能力でも、 方向性は正反対です。

そして今回、 二人の価値観の違いが明確になりました。

次回、

第23話 「救出の夜」

宗信の家族救出作戦が始まります。

読んでいただきありがとうございました。

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