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第19話 奪還作戦


本当に守りたいものがある時。


人は恐怖より強くなれる。



 翌朝。


---


 宗麟の広間。


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 宗信は頭を下げていた。


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「申し訳ございません」


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 額が畳に付く。


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 何度も。


---


 何度も。


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 謝り続けていた。


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「もうよい」


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 宗麟が静かに言った。


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 宗信が顔を上げる。


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「失った信頼は、

 これから取り戻せばよい」


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 宗信の目に涙が浮かぶ。


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 宗麟は続けた。


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「今は家族だ」


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「家族を取り戻す」


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 広間の空気が変わった。


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 鑑連が立ち上がる。


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「俺が行く」


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 即答だった。


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 だが。


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「駄目です」


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 ハリーが言った。


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 鑑連の眉が動く。


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「何故だ」


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「レオンは待ってます」


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 全員が静まる。


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「待っている?」


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「怒って攻めてくるのを」


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 ハリーは地図を広げた。


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「力で助ければ」


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「力で返される」


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「向こうの土俵です」


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 鑑速が頷く。


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「ならどうする」


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 ハリーは笑った。


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「整えます」


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 広間が静まる。


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「またそれか」


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 鑑連が苦笑する。


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 だが今は誰も笑わない。


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 皆。


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 その力を見ている。


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「まず宗信殿」


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「はい」


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「家族の特徴を教えてください」


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 宗信は話し始めた。


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 娘の好きな花。


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 息子の癖。


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 妻の口癖。


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 細かく。


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 細かく。


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 ハリーは聞いた。


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 そして。


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「分かりました」


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「居場所が見えてきました」


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 宗信が驚く。


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「え?」


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 アルメイダも驚いていた。


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「話だけで分かるのですか」


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「人は行動に流れが出ます」


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 ハリーは静かに言う。


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「逃げる人」


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「守る人」


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「隠す人」


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「全部違う」


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 宗麟は興味深そうに聞いていた。


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 未来人というより。


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 まるで名探偵だった。


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 その頃。


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 島津側。


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 レオンは笑っていた。


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「そろそろ来る頃だ」


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 部下が聞く。


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「何がです」


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「戸次鑑連だ」


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 レオンは紅茶を口にした。


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「怒りで動く者は読みやすい」


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「必ず力で来る」


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 だが。


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 その予想は。


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 既に外れ始めていた。


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 大友側は動かない。


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 兵も出ない。


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 鑑連も来ない。


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 代わりに。


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 一人の旅商人が。


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 静かに島津領へ入っていた。


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 麦わら笠。


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 粗末な着物。


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 誰も見向きもしない。


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 その男は。


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 ハリーだった。


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 その目だけが。


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 獲物を探す鷹のように鋭かった。


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今回は救出作戦の始まりでした。


普通なら軍を動かす場面ですが、


ハリーは違う方法を選びます。


力と力。


恐怖と恐怖。


それでは終わりがありません。


だからこそ、


相手の考え方そのものを外していきます。


次回、


ハリーが単身で島津領へ潜入します。


そしてレオンとの距離が、

一気に縮まり始めます。


読んでいただきありがとうございました。

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