第13話 宗麟が最も失いたくなかった人
戦国武将も人間だった。
愛した。
悩んだ。
傷ついた。
そして、 守りたい人がいた。
夜だった。
府内の城。
月明かりが、 静かに庭を照らしている。
宗麟は一人、 縁側へ座っていた。
最近、 少しだけ眠れるようになった。
呼吸も深くなった。
だが。
戦が消えたわけではない。
島津は迫っている。
レオンも動いている。
失うかもしれない。
国を。
家臣を。
民を。
「また難しい顔をしていますね」
優しい声だった。
宗麟が振り返る。
一人の女性が立っていた。
月明かりに照らされる姿。
派手ではない。
だが。
不思議と目を引く。
宗麟の心を、 最も理解している女性だった。
「おまえか」
宗麟が少しだけ笑う。
女性も微笑む。
「御屋形様が笑うようになったと、 城中で噂になっています」
「余計な噂だ」
「良い噂です」
宗麟は黙る。
その笑顔を見ると、 少しだけ肩の力が抜ける。
その頃。
別の場所では。
ハリーが眠れずにいた。
嫌な予感が消えない。
胸の奥がざわつく。
そして。
また見える。
炎。
戦。
血。
そして。
あの女性。
宗麟の隣にいた女性。
微笑みながら。
倒れていく。
「……やめろ」
ハリーが呟く。
見たくない。
だが未来は、 容赦なく流れ込む。
その時だった。
「眠れませんか」
アルメイダだった。
ハリーは苦笑する。
「医者に見抜かれましたね」
アルメイダが隣へ座る。
「何を見たのです」
ハリーは答えない。
答えられない。
未来を語れば、 また身体が止まる。
だが。
一つだけ分かる。
あの女性は。
宗麟にとって、 とても大切な存在だ。
そして。
近いうちに何かが起きる。
風が吹く。
遠くで鐘が鳴る。
戦の足音は、 確実に近づいていた。
歴史に残る武将たちも、 人を愛し、 人を失う苦しみを抱えていました。
今回から、 宗麟の「人間らしい部分」を少しずつ描いていこうと思います。
戦だけではなく、
愛。
友情。
信頼。
そして喪失。
そういった感情があるからこそ、 人は強くも弱くもなるのだと思います。
読んでいただきありがとうございました。




