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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第三章 俺×過去=探し出します。〜過去探索編〜
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95話 俺×余韻=まだ消えません。

祇園の背中が、夜の中に溶けていく光景が、頭から離れなかった。


あの時の表情。


最後に残した言葉。


"会わない方がいいかも"


その意味を、何度考えても理解できない。


拒絶されたわけじゃない。むしろ、拒絶したのは自分の方だ。それなのに、どうしてああなるのか。


「……」


ベッドに横になっても、目を閉じても、浮かんでくるのはあの公園の景色ばかりだった。


あの時、引き止めるべきだったのか。それとも、あれでよかったのか。


答えは出ない。


ただ、胸の奥に引っかかるものだけが、ずっと残っていた。




翌朝。


教室のドアを開けた瞬間、少しだけ肩の力が抜けた。


「……あ」


視線を軽く巡らせる。


そこに、あの赤い髪はなかった。


「……」


理由はわかっている。


副会長の仕事を覚えるために、生徒会室にいるのだろう。


「……」


それだけなのに、妙に安心している自分がいた。


席に座る。


久しぶりに感じる、教室の空気。

ざわざわとした雑談、窓から入る風、どこか気の抜けた雰囲気。ここ最近、まともにこの空間で過ごしていなかったことに気づく。


「……平和だな」


ぽつりと呟く。誰に聞かれるでもなく。


「お、珍しく教室いるじゃねぇか」


後ろから声が飛んできた。

振り返るまでもない。


「……神宮丸か」


「なんだよその反応」


いつもの調子で椅子を引いて座ってくる。


「最近ずっと生徒会だろ?どうしたんだよ」


「たまにはいいだろ」


「まあな」


軽い会話。


それだけなのに、妙に楽だった。


「……」


そのまま前を向くと。

視界の端に、銀色が映る。


「……白ヶ崎さん」


「……なに」


振り返らずに返事だけがくる。

けれど、その声はいつもより棘がない。


「今日は睨まないんだな」


「……」


一瞬、間が空く。


「……対象がいないから」


小さく呟く。


「怖ぇよ」


神宮丸が横からツッコむ。


「うるさい」


白ヶ崎が即座に返す。


「あんたには関係ないでしょ」


「いやあるだろ!?同じクラスだぞ!?」


「ない」


「即答かよ!」


いつものやり取り。少しだけ騒がしい。

でも、それが妙に心地よかった。




昼休み。


「飯行くか」


神宮丸が立ち上がる。


「行くか」


真守も立つ。


「……私も行く」


白ヶ崎も自然に続く。


三人で教室を出る。

結城がいないだけで、こんなにも空気が違うのかと思う。


「あんた、ほんと邪魔なんだけど」


歩きながら白ヶ崎が神宮丸に言う。


「なんでだよ!?」


「なんとなく」


「理不尽すぎるだろ!?」


「存在がうるさい」


「それ悪口だよな!?」


「褒めてない」


「わかってるよ!!」


くだらない会話が続く。


「……」


その中で、真守は少しだけ気を抜いていた。


笑うほどじゃない。でも、気持ちは軽い。


「……」


ふと、祇園の顔が浮かぶ。あの時の、少し寂しそうな笑顔。


「……」


思考が一瞬だけ止まる。


「おい楽々浦、どうした?」


神宮丸の声で現実に戻る。


「いや、なんでもない」


「ほんとかよ」


「ほんとだよ」


軽く流す。


けれど、頭の片隅には残ったままだった。


放課後になった。教室を出て、生徒会室へ向かう。

廊下は静かで、昼間とはまるで別の場所みたいだった。


「……」


扉の前で一度立ち止まる。

軽く息を整えてから、ドアを開ける。


中は、いつも通りの空気だった。無駄な音はない。紙をめくる音と、ペンの音だけが響いている。


「……」


軽く一礼して中に入る。


副会長スペースへ向かう。そこには、葵と結城。そして、山のような書類。


「……」


何も言わず、席につく。


誰も、余計な言葉を発しない。

ただ、作業だけが進んでいく。


「……」


置いていかれないように。


そう思いながら、真守も手を動かす。


集中する。


余計なことを考えないように。

祇園のことも。

結城のことも。

全部、一旦置いて。


「……」


時間は、あっという間に過ぎていった。

気づけば、外は暗くなっている。


「今日はここまでだね」


葵の声で、作業が止まる。


「……はい」


短く返す。


片付けをして、生徒会室を出る。


モヤモヤした気持ちがあったが、あっという間に一日が終わった。


帰宅して、玄関のドアを開ける。


いつもの空気。

いつもの匂い。


「……」


靴を脱いで、ふと足が止まる。

視界の端に、ポストがあった。


「……」


なんとなく、手を伸ばす。


開ける。中に、紙が一枚。


「……」


嫌な予感がした。


指先が、わずかに止まる。それでも、取り出す。


折られた紙を開く。


「……っ」


一瞬で、背筋が冷える。


見覚えのある形式。

無機質な文字。

前回と、同じ。


脅迫状。


「……なんで」


声が漏れる。


心臓が、強く鳴る。


「まーくん?」


後ろから声がした。


振り返ると、真希那が立っていた。


「どうしたの?」


その視線が、手元の紙に向く。


「……それ」


「……」


真守は、何も言えなかった。


ただ、紙を握りしめる。

さっきまでの、少し軽かった心が一気に、沈んでいく。


「……また?」


真希那の声が、少しだけ震える。


「……」


答えられない。


ただ、わかっている。

これは——終わっていない。


むしろ。


また、始まったのかもしれない。

静かな玄関に、不安だけが広がっていった。

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