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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第一章 俺×春=新しい出会いが待っています。〜新生活編〜
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8話 俺×先輩女子生徒=運命の再会?をしました。

会議室に、不穏な空気が流れていた。

本来、運命の再会というのはもっとこう、心が躍るような、弾けるような、喜ばしいもののはずだ。


なのに——


今の真守の中にあるのは、不安しかない。


「会長、二学年が来たことですし、一旦、楽々浦くんの件は後に回した方がいいのではないでしょうか?」


真守と会長のやり取りを横で見ていて、さすがに苛立ったのか。黒ヶ峰が、無理やり話を進めるように口を挟んだ。


「あぁ、それもそうだな。それじゃあ、楽々浦君は明日、生徒会室に一人で来てくれないか?」


「ひ、一人っすか!?」


思わず裏返った声が出る。


密室で会長と二人きり。何をされるのかわかったものじゃない。


「あ〜……明日は何か用事があったような気がするので、無理かもしれません」


もちろん、無理に決まっている。会長と一対一なんて、精神がもたない。


「もう、あんたがいちいち口答えするから話が進まないんじゃない!」


突然、黒ヶ峰が机を叩いて立ち上がった。


「す、すみません……」


なんで俺が怒られてるんだ。

でも、ここで言い返せる空気ではない。


そんな真守の様子を見て、会長はすかさず畳みかけてくる。


「それじゃあ、明日は来てくれるってことだね?」


「……はい」


もう、そう答えるしかなかった。


黒ヶ峰が急に怒り出したことについて、周囲は特に驚いた様子もなかった。むしろ、あれが自然な流れであるかのような顔をしている。


つまり——


(全部、俺が悪いことになってるなこれ)


「……ゴホン」


三学年のクラス委員の一人が、わざとらしく咳払いをして席を立った。

場を切り替えるつもりなのだろう。


「えー、それでは二学年のクラス委員は、一学年の向かい側に座ってください」


その指示に従って、二学年の面々が何事もなかったかのように黙々と席に着いていく。

そして自己紹介は白ヶ崎から再開し、一学年全員がなんとか無事に終わった。


「えー、続いては二学年のA組から自己紹介をお願いします。……まあ、あまりメンバーは変わっていないようだけど」


その先輩の言葉に合わせて、A組の女子生徒が立ち上がる。


「あ、あの人……A組だったのか……」


思わず口から漏れた。


きっと今、真守は相当間抜けな顔をしているだろう。


でも、それも仕方ない。


目の前に立っているその人は、入学式の日にぶつかった、あの先輩女子生徒だったのだから。


しかも——


この人は、二学年A組の特待生組。

つまり、この八ツ星高校が誇る“天才美少女”の一人だったのだ。


「2-A、クラス委員女子代表、赤坂あかさか) ゆいです。趣味は特になく、クラス委員を立候補した理由は、次期生徒会長を狙っているからです。以上です」


実にコンパクトな自己紹介だった。

無駄がないというか、思っていたよりずっとサバサバしている。


赤坂の自己紹介が終わると同時に、会長が足を組みながら、いかにも呆れたような顔で口を開いた。


「まだ君はそんなことを言っているのか……」


その一言に、周りの先輩たちも一斉にため息をついた。


「あの、こう見えて私は変わりましたから」


「はぁ……いったいどこが変わったっていうんだ?」


今にも喧嘩が始まりそうな空気だった。

そんな中、白ヶ崎だけは妙に楽しそうに見える。


たぶん、こういう修羅場を見るのが好きなんだろう。


「背が少しばかり伸びました!あと胸も僅かばかりですが大きくなりました!つまり、私は一年前より成長しました!」


「……」


周囲が笑いをこらえている。


そりゃそうだ。

A組の特待生がする発言には、あまりにも似合っていない。

どちらかというと、背伸びしたがる小学生みたいな反論だった。


会長は失笑し、そのまま赤坂を睨みつけるように視線を向けた。


「そんなんじゃ、生徒会長は務まらない。だから、君には立候補も許さないよ」


「なっ……そんなこと言っても、私は諦めません!!」


「無理なんだよ。どんなに君が抗ったって」


「そんなことないです……」


赤坂は小さく俯いた。


どれだけ会長が赤坂のことを嫌っているのかはわからない。なぜそこまで冷たいのかもわからない。


でも、立候補すら許さないというのは、さすがにひどいと真守は思った。むしろ、あの黒ヶ峰より赤坂の方がよほど“やる気”はあるように見えたからだ。


「いい加減に自分を見つめ直したらどうなんだ?」


会長は容赦なく言葉を重ねる。


それに乗るように、周囲の生徒たちも嘲笑を向け始めた。


「そうだそうだ、赤坂。お前は会長の器じゃないんだよ」

「本当にバカね」

「あの先輩、本当にA組なの?」


赤坂が、一人で晒し者にされていた。


真守の隣では、白ヶ崎が相変わらず楽しそうに笑っている。


なんなんだ、この空間は。


あまりにも異様だった。

たぶん、みんなにとっては“会長が正しい”のだ。だから、会長が笑う相手は、自分たちも笑っていい存在になる。


会長が見下す相手は、自分たちも見下していい存在になる。そうやって空気が出来上がっている。


(……気持ち悪いな)


黒ヶ峰を見る。

きっと、また話を変えてくれると信じて。


「くすくす……」


笑っていた。


(ダメかよ……)


もう、誰も止める気がない。


だったら——


俺がやるしかない。


「あの、もう時間がないですし、早く自己紹介を終わらせちゃいましょう!」


思い切って声を上げた瞬間、会議室中の視線がこちらに集中した。


「何、お前が言ってるんだよ」とでも言いたげな目だった。


たしかにそうだ。

俺が言うことじゃないのかもしれない。でも、これしか思いつかなかった。


「あはは、急に喋り出したと思えば、君はやっぱり面白いね」


また会長が手を叩いて笑う。

この人、俺を何だと思ってるんだ。


「それで、君はなんでそんな発言をしたんだい?」


急な質問だった。

当然、答えの準備なんてしていない。


「え、あ、あの……俺、このあとすぐ用事があって、早く終わらせてくれるとありがたいなと……」


また嘘をついてしまった。

テンパると、どうしてもこうなる。


本当は、赤坂先輩が可哀想になって助けたくなったからだ。でもそんなこと、口が裂けても言えない。

言ったところで、赤坂先輩の性格を見る限り、助けられたなんて思われたくもないだろう。


「また嘘だ。君はわかりやすいな。全くもう、本当のことを言ってごらん?」


会長は、俺にだけ妙に優しい口調でそう言った。それが逆に気味が悪い。


「……」


言うしかないのか。言わなきゃいけないのか。

今の俺に、そこまで正しい判断はできなかった。

けれど、このままだと赤坂先輩だけが嫌な思いをして終わる。それだけは、なんとなく違う気がした。


(……じゃあ、もういい)


ここは俺が悪役になればいい。


「じゃあ、遠慮なく言います」


真守は小さく息を吐いた。


「なんで赤坂先輩が嫌われてるのか、俺は知りません。それに、周りのみんなが一緒になって笑ってるのも理解できません。いや、理解したくありません」


会議室の空気が、はっきりと変わる。

でも、止まらない。


「あと、会長個人の権限で、生徒会選挙の立候補をしてはいけないって決めるのは、おかしいと思います」


「おい、お前!会長に向かってその口はなんだ!」


三学年の男子の一人が立ち上がる。


けれど会長は、その動きを手で制した。


「まあまあ。意見を聞いてあげようじゃないか。それで、君の本当に言いたいことは何かな?」


それが、最後の引き金だった。


「なら、とことん言ってやるよ……」


止まらない。


昔から俺はそうだ。

一度スイッチが入ると、もう止められない。

嫌われようが、どう思われようが関係ない。

ここまで来たら、全部吐き出すしかなかった。


「うざいんだよ!みんないい顔しやがって!俺だって最初はそのつもりだったけどよ、この会長のせいで全部崩れたんだよ!」


会議室がざわつく。


「そんなに嬉しいのかよ!こんな会長に気に入られて!」


「貴様、黙らんか!!」

「この恥知らずが!」

「会長を汚すな!!」


三学年たちが一斉に叫び出す。


「黙りません!」


自分でも驚くくらい、声が出た。


「会長、赤坂先輩に嫌な思いをさせたことについて謝ってください!」


「いい加減にしろ一年ガァァァア!!」


次の瞬間。


一番ガタイのいい三学年の男が、真守の目の前まで踏み込んできた。


拳が振り抜かれる。


一瞬だった。


見えたと思った時には、もう遅い。

右ストレートが、真守の頬にまともに入った。


鈍い衝撃。


遅れてやってくる、激痛。


視界が揺れる。

こんなに綺麗に殴られたのは初めてだった。


「ちょっと、君たち、落ち着け!」


会長の制止が飛ぶ。けれど、一足遅い。


「真守!真守、真守っ!」


赤坂が、周囲を振りほどいて駆け寄ってくる。


「あはは……めちゃくちゃ痛いっつーの……」


冗談みたいに笑ったその瞬間、意識がふっと遠のいた。


そして、そのまま——


真守は気を失った。

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