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俺×恋=0になります。  作者: 黒猫
第一章 俺×春=新しい出会いが待っています。
9/16

8話 俺×先輩女子生徒=運命の再会?をしました。

会議室に流れる不穏な空気。


本来、運命の再会とは心が躍るような、弾けると言ったらいいのか、とにかく喜ばしい出来事のはずだ。


なのに、不安しかない。


「会長、二学年が来たことですし、一旦、楽々浦君の件は後に回したほうがいいのではないでしょうか?」


真守と会長のやりとりを側から見ていてイライラしていたのか、黒ヶ峰が無理に話を進めようとする。


「あぁ、それもそうだな。それじゃ、楽々浦君は明日、生徒会室に一人で来てくれないか?」


「ひ、一人すか!?」


密室で会長と二人きり。何をされるのかわからんぞこれは……


「あ〜、明日は何か用事があったような気がするので無理かもしれません」


無理に決まっている。


毎回のごとく、グダグダ話を長引かせていると、黒ヶ峰が机を叩き、立ち上がった。


「もう、楽々浦君がいちいち口答えするから話が進まないんじゃない!」


突然キレだす黒ヶ峰。


「す、すみません……」


真守はどうしようもない状況に陥った。

それを狙った会長はすぐさま真守に言い迫る。


「それじゃあ、明日は来てくれるってことだね?」


「は、はい……」


黒ヶ峰が突然キレだしたことについては、周りは特に驚いた様子もなかった。きっと、黒ヶ峰の意見に賛同したのであろう。

つまりそれは、俺が全て悪いことになる。


「う゛ん゛」


三学年のクラス委員が、咳払いをし、話を変えるべく、席を立ち台本らしき紙を持ち上げた。


「えー、それでは二学年のクラス委員は一学年の向かい側に座ってください」


三学年の先輩の言う通り、二学年は何食わぬ顔で黙々と席に座りだす。


そして、自己紹介は白ヶ崎から再開し、無事に一学年全員やり終えた。


「えー、続いては二学年のA組から自己紹介お願いします。まぁ、あまりメンバーは変わっていないようだけど」


先輩がそう言うとA組の女子が席を立った。


「あ、あの人、A組だったのか……」


自分で口が開いているのかわかる。きっと今、とても間抜けな顔をしているのだろう。


それも仕方ない……


その例の先輩女子生徒は二学年A組の特待生組枠、つまり、この八ツ星高校が誇る天才美少女だったのだ。


「2-A、クラス委員女子代表、赤坂(あかさか) (ゆい)です。趣味は特になく、クラス委員を立候補した理由は、次期生徒会長を狙っているからです。以上です」


なんと実にコンパクトな自己紹介だ。無駄がないと言うか、意外とあの人の性格はサッパリしているんだな。


赤坂の自己紹介が終わると同時に、会長が呆れた顔で足を組み、彼女に向け言葉を発した。


「まだ君はそんなことを言っているのか……」


会長がそう言うと、周りの先輩方も一斉にため息を吐く。


「あの、こう見えて私は変わりましたから」


「はぁ……いったいどこが変わったって言うんだ?」


今にでも喧嘩が始まりそうな雰囲気。そんな状況にも関わらず白ヶ崎は楽しんでいる様子。きっと、こういう修羅場とかが好きなのだろう。


「背が少しばかり伸びました!あと胸も僅かばかりですが大きくなりました!つまり、私は一年前より成長しました!」


周りが笑いをこらえる。


それもしょうがない。だって、A組の特待生枠の人が発言するような事ではないからだ。

まるで女子小学生が大人の女性に憧れて、慌てながら自分はまだ成長期なのだと、意地を張っているみたいな発言だ。


会長は失笑すると同時に赤坂を威嚇をした。


「あはは、そんなんじゃ生徒会長は務まらないよ!だから、君は立候補は許さない」


「なっ、そんなこと言っても私は諦めません!!」


会長は赤坂を見下すように顔を斜めに上げた。


「無理なんだよ、どんなに君が抗ったって」


「そんなことないです……」


会長の威圧に赤坂は俯いてしまう。


どんだけ会長は赤坂先輩のことが嫌いなのか、なぜそうなったのかはよくわからんが、立候補すらできないのはさすがに可哀想だろう。下手したら黒ヶ峰より赤坂先輩の方が生徒会長のやる気があるのではないかと思うほどだ。そんな人を排除するなんて。


「いい加減に自分を見つめ直したらどうなんだ?」


会長は相変わらず赤坂に対して冷たい態度を示す。


「そうだそうだ、赤坂、お前は会長の器じゃないんだよ」

「あはは、本当にあなたはバカね」

「あの先輩、本当にA組なの?」


周りはバカにした態度で笑っている。俺の隣の白ヶ崎も相変わらず笑っているが。


真守はこの空気に耐えきれず、黒ヶ峰の方を見る。きっと、また話を変えてくれると信じて……


「くすくす……」


笑ってやがる。


なんだ、この異様な空間は。こんなんじゃ、赤坂先輩が一人で戦っているみたいじゃないか。

そんなの見ていて気持ち良くはない。きっと、みんなは会長が第一なんだ。だから、会長がバカにしている人がいるのなら、そこにいる人たちも同じようにバカにし、うまく会長に合わせるのだろう。まぁ、白ヶ崎は例外だと思うが。


だけどこんな状況許せない。俺が変えなきゃ……


「あの、もう時間がないですし、早く自己紹介を終わらしちゃいましょう!」


真守が勇気を振り絞り発言した途端、みんながこっちを見て「何、お前が言ってるんだよ」と言わんばかりの顔を浮かべ睨みつける。


確かに特大ブーメランかもしれないが、これしか方法はない。


「あはは、急に喋り出したと思えば、君はやっぱり面白いね」


またもや、会長は手を叩き真守を絶賛する。


わけのわからないやり取りは二度目なので省略。


「それで、君はなんでそんな発言をしたんだい?」


唐突な質問。もちろん真守は答えの準備はしていない。


「え、あ、あっ、あの、俺、このあとすぐ用事があって、早く終わらしてくれるとありがたいなと……」


また嘘をついてしまった。いつもテンパるとこうなるが、本当は赤坂先輩が可哀想になって、助けるために発言したとは口が裂けても言えない。いや、発言したところであの赤坂先輩だ、まだよくわからんがプライドが高いのは確かだ。自分をかばう発言なんてしたら打ち首か、軽く済んで切腹の刑が処されるだろう。


「また嘘だ、君はわかりやすな!全くもう、本当のことを言ってごらん?」


真守には優しく問いかける会長。周りが唯一理解できないことだろう。


はぁ、言うしかないのか、言わなければならないのか。今の俺には正しい状況判断できないが、このままでは赤坂先輩が可哀想な結末になるのは間違いない。


ここは俺が一つ、悪役になるか。


「では、遠慮なく……なぜ赤坂先輩が嫌われているのか俺は知りません。それに、周りのみんなが一緒になって笑っているのも理解できません。いや、理解したくありません。あと、会長個人の権限で生徒会選挙の立候補をしてはならないのは違うと思います」


「おい、お前!会長に向かってその口はなんだ!」


「まぁまぁ、意見を聞いてあげようじゃないか。それで、君の本当に言いたいことは何かな?」


三学年の男子生徒が何人か立ち上がり、こちらに走ってこようとしたが会長がそれを止め、真守に本音を要求してきた。


「なら、とことん言ってやるよ……」


止まらない、もう止まることはない。俺は昔から悪い癖がある。一度喋り出したら止まらない癖だ。どんなに嫌われようともう関係ない。ここまできたら突っ走るのみだ。


「うざいんだよ!みんないい顔しやがって!俺だって最初はそのつもりだったけどよ、この会長のせいで全てが崩れた。そんなに嬉しいのかよこんな会長に気に入られてよ」


「貴様、黙らんか!!」

「この、恥知らずめ!!」

「会長を汚すな!!」


相変わらず三学年が口を揃えてそんなことを唱えている。


「俺は黙らない!会長、赤坂先輩に嫌な気持ちをさせたことについて謝ってください」


「いい加減にしろ一年ガァァァア!」


三学年の一番ガタイのいい男が目の前に来て拳を振り抜く。


一瞬の出来事だった。


気付いた時には俺の頬を右ストレートが通過していた。鈍い衝撃から、少しの間もなく激痛が走る。まさに、顔面にクリーンヒットしてしまっていた。


こんなに振り抜かれた経験は真守にはなく、意識を失いかけてしまう。


「ちょっと、君たち、落ち着け!」


会長の一足遅い号令がかかる。そんな中、一直線にこちらへ向かってくる女の子がいた。


「真守、真守、真守っ!」


赤坂は周りを振りほどき、真守のそばに駆け寄り息を途切らすことなく名前を呼んだ。


「あはは、めちゃくちゃ痛いっつーの……」


そして、そのまま真守は気を失った。

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