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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第三章 俺×過去=探し出します。〜過去探索編〜
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84話 俺×夜の公園=心が解けます。

部屋のドアが勢いよく開いた。


「まーくん!」


「うるさ——」


言いかけて止まる。


「……ノックしろよ」


「したよ〜」


「してねぇだろ絶対」


ベッドに寝転がったまま、ため息をつく。


そんな真守をよそに、真希那は勝手に部屋に入り込み、そのまま椅子に腰を下ろした。


「なにその顔」


「どの顔だよ」


「死んでる顔」


「生きてるわ」


軽く返す。


けど。


「……」


そのあとが続かない。


真希那はしばらく何も言わずに、じっと真守の顔を見ていた。


「……なに」


「いや」


少しだけ、声のトーンが落ちる。


「元気ないなって」


「……」


図星だった。

誤魔化そうとして、やめる。


「……転校生」


ぽつりと呟く。


「ん?」


「結城ってやつ」


「うん」


「なんか……無理」


「雑だなぁ」


「説明できないんだよ」


起き上がり、頭をかく。


「距離近いし、変な呼び方するし……なんか、違和感あって」


「ふーん」


真希那は軽く頷きながら、足を組み直す。


「でもさ」


「……?」


「その子、まーくんが思ってるほど悪い子じゃないんじゃない?」


「……」


言葉が止まる。


「ほら、第一印象で決めつけるのってよくないっていうかさ〜」


「……」


何も返せない。


「まーくん、そういうの嫌いじゃん?」


「……」


否定できない。


けど。


「……わかんねぇよ」


小さく呟く。


「だから困ってんだろ」


「そっか」


あっさりと引く。それ以上は踏み込まない。


「……」


沈黙が落ちる。


少しだけ、空気が重くなる。


「……散歩行ってくる」


ぽつりと立ち上がる。


「え、今から?」


「気分転換」


「ふーん」


真希那はそれ以上何も言わなかった。


ただ。


「気をつけてね」


それだけ、少しだけ優しく言った。


夜の街。昼間の喧騒が嘘みたいに静かだった。

コンビニで適当に飲み物を買って、袋をぶら下げながら歩く。


風が少しだけ涼しい。


(……落ち着くな)


頭の中が、少しだけ整理されていく。


そのとき。


見慣れた公園の前を通りかかる。


「……」


自然と足が止まる。


そして。


「……あ」


「祇園先輩?」


「……楽々浦くん」


顔を上げる。


少しだけ驚いたような、それでいてどこか安心したような表情。


「こんな時間にどうしたの?」


「散歩です」


軽く袋を持ち上げる。


「そっか」


小さく笑う。


その笑顔は、すごく自然だった。

怪我も、ほとんどわからない。あのときの痛々しさは、もう残っていなかった。


「祇園先輩こそ」


「……ちょっと、暇で」


少しだけ視線を逸らす。


「夜、好きなんだよね」


「……なんかわかります」


自然に言葉が出る。


無理に考えなくてもいい会話。

それだけで、少し楽になる。


「……」


ベンチの隣に座る。距離は、近すぎず遠すぎず。ちょうどいい。


「……最近、どう?」


祇園が静かに聞く。


「……普通です」


一度はそう答える。


けど。


「……いや」


少しだけ間を置く。


「普通じゃないかも」


自分でも驚くほど、自然に言葉が出た。


「転校生が来て」


「うん」


「なんか、色々めんどくさくて」


「……へぇ」


「距離近いし、変な呼び方するし」


「ふふ」


小さく笑われる。


「楽々浦くん、困ってるね」


「……はい」


正直に頷く。


そのまま、少しだけ言葉が続く。

愚痴みたいなものだった。まとまってもいないし、結論もない。ただ、思ったことをそのまま口にするだけ。


それでも。


「……」


祇園は、ちゃんと聞いていた。


途中で遮ることもなく、否定することもなく。ただ、静かに。


「……」


言い終わってから、少しだけ驚く。


(……なんでこんな話してんだ俺)


真希那に話したときとは、全然違う感覚だった。


「……どうしたらいいと思います?」


思わず聞いていた。


「うーん」


祇園は少しだけ考えてから、


「楽々浦くんが思った通りにするのが、一番じゃない?」


と、柔らかく言った。


「……」


「無理に合わせる必要ないと思うよ」


「……」


その言葉が、妙にしっくりくる。


「楽々浦くん、ちゃんと考えてるし」


「……そんなことないです」


「そんなことあるよ」


あっさりと言い切られる。


「だから大丈夫」


その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


「……ありがとうございます」


「どういたしまして」


軽く笑う。


その距離が、ほんの少しだけ近く感じる。


風が吹く。


静かな時間が流れる。


「……あのさ」


祇園が、少しだけ視線を逸らしながら口を開く。


「はい?」


「楽々浦くんって……好きな人とかいるの?」


「……は?」


一瞬、思考が止まる。


「な、なんでその話になるんですか」


「なんとなく」


少しだけ照れたように笑う。


「……」


困る。


どう答えればいいかわからない。


「……いないです」


とりあえず誤魔化す。


「ほんとに?」


「ほんとです」


「ふーん」


少しだけ疑うような目。

それから、くすっと笑う。


「わかりやすいね」


「なにがですか」


「全部」


「……」


返す言葉がない。


「……」


そのまま、また静かな時間が流れる。

さっきまでの重さが、嘘みたいに軽くなっていた。


同じ話をしたのに。真希那に話したときよりも、ずっと楽だ。

胸の奥の引っかかりが、少しだけほどけている。


「……」


立ち上がる。


「そろそろ帰ります」


「うん」


祇園も軽く頷く。


「またね、楽々浦くん」


「……はい」


手を振る。


そのまま、公園を後にする。

夜風が、さっきよりも心地よかった。

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