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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第三章 俺×過去=探し出します。〜過去探索編〜
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70話 俺×夏休み=少しだけ離れます。

みんなは夏休みに入り、学校全体がとても静かになっていた。

そんな中、生徒会室の空気は、今日も静かだった。紙をめくる音、ペンを走らせる音、誰かが小さく息を吐く音。生徒会だけは変わらない。


「……」


真守は自分の席で書類を見つめたまま、小さく指を止める。


昨日、公園で祇園と話した時間。あの時だけは、不思議なくらい気持ちが軽かった。


でも——


今、この部屋にいると。また少しずつ、胸の奥が重くなっていく。


「……」


周囲を見る。


山影は三宝と一緒に大量の資料を運んでいる。


「おい山影、それそっちじゃっど!」


「え、マジっすか!?」


「マジじゃ!」


そんなやり取りをしながらも、作業は止まらない。


坂下はアリスと並んで会計処理を進めている。


黒ヶ峰と池鶴も、淡々と書類整理を続けていた。


そして——


「楽々浦くん」


葵の声。


「その資料、終わったらこっちお願い」


「あ、はい」


反射的に返事をする。


それだけ。


何も変わっていない。


葵は相変わらず普通に接してくれるし、生徒会も問題なく回っている。


それなのに。


(……やっぱ、疲れてんのかな)


真守は小さく目を伏せる。


何の役にも立ってないのに、一人でとても情けなくなる。


「……」


その時だった。


「楽々浦君」


不意に、会長が声をかけてくる。


真守は顔を上げた。


「はい?」


会長は穏やかな笑みを浮かべたまま、こちらを見ている。


「少し、疲れているように見えるね」


「……」


図星だった。


真守は小さく苦笑する。


「そんな顔に出てました?」


「少しだけね」


会長は立ち上がる。


そして、ゆっくりと真守の席の近くまで歩いてきた。


「最近、頑張りすぎだよ」


静かな声。


責めるでもなく、優しすぎるくらい自然な声音だった。


「楽々浦君は真面目だから、自分で思っている以上に無理をしてしまう」


「……」


否定できなかった。


「だから——」


会長は少しだけ微笑む。


「少し休むといい」


「……え?」


予想外の言葉だった。


真守は目を瞬かせる。


「休むって……」


「夏休みだよ」


会長は当然のように言う。


「気分転換さ。数日、生徒会から離れてみるのも悪くないと思う」


「で、でも……仕事が」


「問題ない」


即答だった。


「今の生徒会なら回る」


その言葉に、真守は一瞬だけ黙る。


視線が、自然と周囲へ向く。

確かに今の生徒会は、異様なくらい安定していた。


自分がいなくても、回ってしまうくらいに。


「……」


胸の奥が、少しだけ痛む。


会長はそんな真守を見て、小さく笑った。


「寂しそうな顔をするね」


「……してません」


「してるよ」


さらりと言われる。


真守は少しだけ視線を逸らした。


「別に……ただ」


言葉を探す。


「なんか、自分だけ置いていかれてる気がして」


ぽつりと漏れる。


その瞬間。


生徒会室の空気が、少しだけ静かになった。


「……」


誰も茶化さない。誰も否定しない。ただ、静かだった。


そして。


「そんなことないよ」


最初に口を開いたのは、葵だった。


真守が顔を上げる。


葵は少しだけ困ったように笑っている。


「楽々浦くん、ちゃんと頑張ってるし」


「でも——」


「むしろ、頑張りすぎなんだよ」


言葉を被せられる。


「今の楽々浦くん、ちょっと余裕なさそうだもん」


「……」


何も言い返せない。


「だからさ」


葵は柔らかく笑う。


「少しくらい休んでもいいと思う」


「……」


その時だった。


「そうじゃ!」


三宝が急に大きな声を出す。


「楽々浦! 休みなら実家帰ればよか!」


「え?」


「気分転換は大事じゃっど!」


山影も乗っかる。


「それいいっすね!」


「……」


急に話が広がっていく。


坂下まで小さく頷いた。


「……少し休んだ方がいいと思います」


アリスも、おずおずと続ける。


「楽々浦くん……最近、ずっと張り詰めてる感じしますし……」


黒ヶ峰ですら、作業を止めずに小さく言った。


「倒れられる方が迷惑」


相変わらず言い方は刺々しい。


だが、否定ではなかった。


「……」


真守は少しだけ息を吐く。


なんだこれ。


少し前まで、こんな空気じゃなかったはずなのに。


「……」


気を張り詰めていたせいか、みんなの言葉に安心する。そして少しだけ、肩の力が抜けた。


会長が静かに問いかける。


「どうする?」


真守は少し考えてから——


「……少しだけ」


小さく笑った。


「休んでみます」


その瞬間。


「決まりだね」


会長が穏やかに笑う。


「では、楽々浦君は明日から夏休みだ」


「いや急ですね!?」


思わずツッコむ。


すると。


「よかったじゃん、楽々浦くん」


葵が小さく笑った。


「少しは楽になれるかもよ?」


「……そうだといいですけど」


真守は苦笑する。


けれど。


ほんの少しだけ。


本当に少しだけ——


胸の奥が、軽くなった気がした。

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