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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第二章 俺×鐘の音=不幸が聞こえます。〜不幸の手紙編〜
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50話 俺×夜道=少し違う雰囲気です。

夜は、妙に静かだった。


住宅街の街灯はまばらで、足元に伸びる自分の影がやけに長い。真守はポケットに手を突っ込みながら、あてもなく歩いていた。


「……はぁ」


ため息が漏れる。最近、嫌な予感が当たりすぎている。

偶然にしては出来すぎているし、かといって理由も分からない。


狙われている——そんな感覚。

しかも、一人じゃない気がする。


「……考えすぎ、か……」


ぽつりと呟き、空を見上げた。


「夜の散歩とか、珍しいじゃん」


「うわっ!?」


不意に後ろから声がして、真守は思い切り肩を跳ねさせた。


振り返ると、そこにいたのは祇園だった。夜の空気に溶け込むように立ちながら、どこか柔らかく笑っている。


「ぎ、祇園先輩……びっくりしました……」


「ごめんごめん。そんなに驚くと思わなかった」


くすっと軽く笑う。


「ていうか楽々浦くん、無防備すぎ。今の普通に危ないよ?」


「……すみません」


反射的に頭を下げてしまい、自分でも苦笑する。


「で?眠れなかったの?」


「まぁ……そんな感じです」


自然と並んで歩き出す。

しばらく無言が続くが、不思議と気まずさはなかった。


「……最近、ちょっと変なことが多くて」


真守は少し迷いながら口を開いた。


「変なこと?」


「はい。なんていうか……誰かが狙われてる、みたいな感覚があって」


言葉にすると、やっぱり曖昧だ。

それでも祇園は、茶化したりはしなかった。


「自分が、じゃなくて?」


「それもあるかもしれないですけど……一人じゃない気がするんです」


根拠はない。ただの勘だ。けれど、口にしてしまった。

祇園は少しだけ考えるように視線を落として、それから小さく頷いた。


「そういうの、意外と当たるよ」


「……そうなんですか?」


「うん。特に楽々浦くんみたいなタイプはね」


軽い調子のままだけど、否定はしない。


「無理に理由探すより、その違和感ちゃんと覚えといた方がいいと思う」


真守は少しだけ驚いた。

否定されると思っていたからだ。


「……ありがとうございます」


「いいって。でもさ——」


祇園は少しだけ真剣な目になる。


「無茶はしないでよ?」


「……はい」


「巻き込まれるのと、自分から突っ込むのは別だから」


「それが出来たら苦労しないんですけどね……」


苦笑すると、祇園は肩をすくめた。


「まぁ、それも楽々浦くんっぽいけど」


その後は、本当に他愛のない話をした。授業のこと、クラスのちょっとした出来事。

どうでもいいはずの会話なのに、気づけば気持ちは少し軽くなっていた。


「じゃあ、俺こっちなんで」


「そっか。気をつけて帰りなよ」


「祇園先輩も」


軽く頭を下げて、真守は歩き出す。

背中越しに、少しだけ視線を感じた気がした。



翌日。


「おい、A組やばいぞ!」

「またかよ!?」


廊下がやけに騒がしい。

真守は嫌な予感を覚えながら、人の流れに引き寄せられるようにA組の前まで来てしまった。


「……うわ」


教室の中は、想像以上だった。


机が倒れ、椅子が散乱している。その中心で——


「いい加減にしろよ、てめぇら」


黒ヶ峰が立っていた。


制服はすでにボロボロで、息も荒い。それでも、目の奥にはまだ闘志が残っている。

対するは女子五人。


「調子乗んなよ!」

「一人でイキってんじゃねーよ!」


怒号とともに、再び衝突する。


「ちょ、止めないと——!」


真守は思わず前に出た。


「やめてくださいって!」


割って入ろうとした、その瞬間。


「——やめとけ」


腕を掴まれる。


「山神……!」


振り返ると、山神が静かに首を振っていた。


「今入ると、余計こじれる」


「でも……!」


「これはあいつらの問題だ」


低く、強い声だった。普段とは違う圧に、真守は一瞬言葉を失う。

その間にも、殴り合いは続いていた。黒ヶ峰は一対五にも関わらず、引かない。むしろ前に出ている。


だが——


「っ……!」


ついに大きく弾き飛ばされ、机に叩きつけられる。

教室が静まり返った。


「……はぁ、はぁ……」


女子たちも息を切らしているが、それ以上手を出す様子はない。


「……チッ」


黒ヶ峰は舌打ちしながら立ち上がる。

足元はふらついているが、それでも倒れない。


「……終わりかよ」


吐き捨てるように言って、そのまま教室を出ていった。


「……」


真守は山神の手を振りほどく。


「……追います」


「やめといた方がいいと思うけど」


そう言いながら、山神は止めなかった。

廊下の先、黒ヶ峰の背中が見える。今にも倒れそうな足取り。


「黒ヶ峰さん!」


呼びかけても、返事はない。

それでも彼女は止まらず、まっすぐ進んでいく。

やがて保健室の扉を開けて、中へと消えた。


「……っ」


真守は一瞬だけ迷い——すぐにその後を追った。


何が起こるかも分からないまま、それでも足は止まらなかった。

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