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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第二章 俺×鐘の音=不幸が聞こえます。〜不幸の手紙編〜
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47話 俺×真犯人=真相までまだ遠いです。

自室のベッドへ腰を下ろしながら、真守は深く息を吐いた。


首には、まだ奏に締め上げられた時の痛みが残っている。頬も少し腫れていた。だが、それ以上に頭の中がぐちゃぐちゃだった。


「……誰なんだよ」


ぽつりと呟く。


机の上には、何度も読み返した怪文書。


【お前の大切なものを一つずつ壊していく】


その文字が、まるで呪いみたいに脳裏へ焼き付いていた。

考えれば考えるほど、嫌な想像ばかりが膨らんでいく。


真守は両手で顔を覆った。


(奏先輩じゃなかった……)


少なくとも、昨日の反応は演技には見えなかった。あの人は真っ直ぐ怒っていた。

むしろ、あそこまで真正面から怒れる人間が裏でコソコソやるとは思えない。


となると——。


自然と、一人の顔が浮かぶ。


黒ヶ峰姫花。


鋭い目。真守を避ける態度。妙に張り詰めた空気。そして、時折見せる異常なほどの攻撃性。


「……黒ヶ峰」


真守は拳を握った。


確証はない。でも、今一番怪しいのは彼女だった。


(確かめないと……)


もし本当に黒ヶ峰が関係しているなら、止めなければならない。

誰かが壊される前に。


翌日。


真守は葵と並んで廊下を歩いていた。


「……本当に黒ヶ峰さんだと思う?」


葵が小さく尋ねる。


真守は少しだけ考えてから答えた。


「わからないです。でも、今のところ一番怪しいので」


「……そっか」


葵も不安そうだった。


昨日の件で奏との関係は多少落ち着いた。


だが、それで事件が解決したわけじゃない。


むしろ、振り出しに戻った感覚に近かった。


「今日は自然に様子を見るだけにしましょう」


真守が言う。


「うん」


二人は一年A組の前へ向かった。


もちろん、堂々と入るわけじゃない。


“生徒会の巡回”という名目で、教室の近くを見回る形にする。


廊下側の窓から、中の様子をさりげなく確認する。


教室の空気は、どこか張っていた。


「……あれ」


葵が小さく呟く。


真守も違和感に気づいていた。


黒ヶ峰の様子がおかしい。いつもなら堂々としている彼女が、今日は妙に苛立っていた。

頬杖をつきながら、机を指でトントン叩いている。


視線も鋭い。


周囲のクラスメイトたちも、どこか距離を取っているように見えた。


その少し離れた席では、山神隼人が静かに本を読んでいる。相変わらず冷静そうな顔だった。


すると。


黒ヶ峰の席へ、女子生徒が数人近づいていく。


空気が変わった。


「あんたさ、最近ほんと感じ悪いんだけど」

「ちょっと空気悪くしすぎじゃない?」

「クラス全体ピリついてるんだけど」


刺々しい声。


黒ヶ峰の眉がピクリと動く。


「……は?」


「山神くんともずっと揉めてるしさ、もう少し自重したら?」


その瞬間だった。


ガタンッ!!


黒ヶ峰が勢いよく立ち上がる。椅子が大きな音を立てた。


教室が一気に静まり返る。


黒ヶ峰の目は完全に怒りで染まっていた。


「うるさいッ!!」


怒鳴り声が響く。


女子たちがビクッと肩を震わせる。黒ヶ峰は髪を振り乱しながら叫んだ。


「あんたら全員殺すわよ!!!」


空気が凍った。


教室中の視線が黒ヶ峰へ集まる。


誰も喋れない。


「……っ!」


真守も思わず息を飲んだ。


怖い。怒鳴っただけなのに、異様な迫力があった。

黒ヶ峰自身も、どこか限界寸前に見える。


その時、教室の奥から椅子を引く音がした。


山神だった。


彼はゆっくり立ち上がる。そして、冷たい目で黒ヶ峰を見る。


「クラスを乱すな」


静かな声。でも、教室中へ響くほど冷たかった。


「お前みたいなのがいるから、みんな迷惑してるんだ」


黒ヶ峰の表情がさらに険しくなる。


「……っ!」


今にも飛びかかりそうだった。


教室の空気が完全に壊れ始める。そんな様子を見て、真守は思わず前へ出そうになる。


だが、その瞬間。

後ろから、冷たい声が飛んできた。


「あんた」


「っ!?」


真守の肩が跳ねる。


振り返ると、そこには奏が立っていた。


相変わらず綺麗すぎるくらい整った顔。だが、目はめちゃくちゃ冷たい。


「私の妹を危険なことへ巻き込むなって言ったはずだけど?」


「奏先輩……!?」


いつの間にいたのか全然気づかなかった。


奏はそのまま真守へ近づく。


そして、ぺしっと軽く頭を叩いた。


「痛っ」


「ほんとバカね、あんた」


呆れた声。でも前回ほど刺々しくはない。


真守は慌てて頭を下げた。


「す、すみません……でも、本当に大事なことで……」


「だからって葵を巻き込む理由にはならないでしょ」


「うっ……」


正論だった。


葵が慌てて二人の間へ入る。


「お姉ちゃん!楽々浦くんを責めないで!」


「葵は黙ってなさい」


「でも——」


そんなやり取りをしているうちに、教室の中で小さなざわめきが起きた。


「あれ、黒ヶ峰は?」


真守たちがハッとする。


教室を見る。


——黒ヶ峰がいない。


「っ!?」


真守は目を見開いた。

さっきまでいた席が空になっている。


「いつの間に……!」


奏も眉を寄せた。


「……チッ」


真守はすぐに走り出す。


「探しましょう!」


葵も続く。


奏も面倒そうにしながら後を追った。


三人で校内を走る。


廊下、階段、空き教室、トイレ。だが、どこにもいない。

真守の胸がどんどんざわついていく。


(嫌な予感がする……!)


走り回るうちに、校舎裏まで来ていた。


そこは人気が少ない。


古い倉庫が並ぶ、少し薄暗い場所。風が吹くたび、錆びたフェンスがギシギシ鳴る。


その時。


葵が小さく声を上げた。


「あっ……!」


真守たちの視線が向く。


倉庫の近く。そこに、黒ヶ峰姫花が立っていた。

一人で、うつむいたまま。


夕陽が彼女の横顔を赤く染めている。


その姿を見た瞬間。真守の胸に、冷たいものが走った。


まるで。


ここから、何かが始まってしまうような——。


そんな嫌な予感だった。

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