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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第一章 俺×春=新しい出会いが待っています。〜新生活編〜
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3話 俺×後ろ席のクラスメイト=危険人物です。

教室の雰囲気は最悪だった。


なぜ最悪かというと——


「……あの、すみません。生徒を保健室に連れて行っていて、遅れてしまいました」


一応、教室に入ったときにそう説明はした。

したのに。

クラス全員から、まるで不良を見るような目で見られている。


(いや信じてくれよ……)


しかも、全員だ。

担任の先生にまでそんな目で見られている気がする。


「えーっと、楽々浦くんだっけ?とりあえず、空いてる席に座ってくれるかしら」


担任にそう言われ、真守はすぐに頭を下げた。


「は、はい!失礼します!」


速やかに席へ向かう。

空いていたのは、教室の廊下側、前から四番目の席だった。

前すぎず後ろすぎず、良くも悪くも中途半端な位置だ。


担任は女性で、黒髪のショートにシャープな眼鏡をかけていた。年齢はそこまで上ではなさそうだが、見た目からしてかなり気が強そうだった。


(怖そうだな……)


「なぁ、なぁ」


トントン、と肩を叩かれる。


振り返ると、後ろの席に座っている坊主頭の男子生徒がこちらを見ていた。


(入学式を欠席した俺に話しかけてくるとか、物好きだな……)


とはいえ、無視する理由もない。

真守はそっと耳を傾けた。


「ど、ど、ど、どうしたの?」


思わずキョドる。

自分でも情けないくらい、不自然だった。

身内以外とまともに話すのは、たぶん数か月ぶりだ。緊張しない方がおかしい。


「あのさ、入学式欠席した理由って本当なのか?」


「はぁ?」


いきなりそこか。

いや、そりゃそうか。今の俺に話しかける理由なんて、それくらいしかない。

きっとこいつは、さっきの“保健室に運んだ”って話を疑っているんだろう。


まあ、俺だって自分のことじゃなければ信じない。


「生徒って、もしかして先輩か?」


「あぁ、先輩しかいないだろ。入学式を欠席したの、俺くらいなわけだし」


「ま、まじかよ!しかも、もしかして女子の先輩だったりするのか!?」


妙にテンションが高い。


(……こいつ、もしかしてウザいやつか?)


「そ、その……先輩女子生徒だったよ」


少しだけ言うのをためらった。

どうせ絶対、からかってくると思ったからだ。


「うひょー!!羨ましいですな!!」


「ちょ、お前声でかい!」


思った以上の声量に、真守は慌てた。

口を塞ぎたかったが、後ろの席なのでそれもできない。


「そこ、うるさいです。今から一人ずつ自己紹介してもらうので、そういう妨害行為はやめてください」


担任に睨まれる。


完全に巻き込まれた。

ただでさえ最初の印象が最悪なのに、さらに評価が下がった気がする。


「おっと、ごめんな!ちなみに俺の名前は神宮丸(じんぐうまる) 清樹(せいじゅ)。よろしくな!」


急な自己紹介だった。


今から一人ずつ自己紹介するって言われたばかりなのに、こいつはウザい上にアホなのかもしれない。


(……これ、俺も返した方がいいのか?)


「お、俺の名前は——」


「おいおいっ!」


「な、なんだよ!」


せっかく返してやろうとしたのに、急に止められる。


「次、お前の番だぞ!席立って自己紹介しろよ!」


「えっ、まじかよ」


やばい。

気づいたら俺の順番になっていた。というか、こいつのせいで全然気づかなかった。


「あの、楽々浦くん。次、君だから早く席を立って自己紹介してもらえるかしら」


「は、はいっ!!」


完全に呆れられていた。


(終わった……)


きっとこれから俺は、担任に“問題あり”としてマークされる。


「えっと、俺の名前は楽々浦真守です。好きな食べ物は——」


自己紹介のコツ。


姿勢を正しく、ハキハキとした声で、なにより笑顔が大事。内容は無難でいい。

最初の自己紹介から変に目立って火傷したら、この先が大変だ。


そんなやつには、誰も近寄らない。


「……ふぅ」


練習しておいてよかった。

珍しい趣味や変な特技を作らなくて正解だった。なんとか無難に終われた。


……まあ、ちょっとした問題は残っているが。


そう思った矢先だった。


「えーっと、とくに楽々浦くんに質問とかないと思うけど、一応聞くわね。質問ある人?」


(質問!?)


そんなの聞いてない。

しかも今、さらっと傷つくこと言ったよなこの担任。絶対性格悪いだろ。


「はーい!」


元気よく手を挙げたのは、やっぱりあいつだった。


神宮丸。


「へんな質問だけはやめてくれよ……」


そんな願いは、当然のように打ち砕かれる。


「あのー、保健室に運んだ生徒って女子の先輩だったって本当ですか?」


「お前、まじかよ……」


さっき聞いた話を、クラス全員の前でぶっ放すのか。

別にやましいことはない。


ないけど——そんな話、誰が信じるんだよ。


「えっ、あぁ……まぁ、そうですけど」


教室の空気が、また少し重くなる。


(俺はお前を絶対に許さないぞ……神宮丸)


「いやー、いいなぁ!登校初日、しかも入学式当日に女子の先輩と仲を深められるなんて、羨ましい限りだ!」


一人で勝手にテンションを上げている。

周りはそんな神宮丸を見て、少し笑っていた。その笑いは悪いものじゃない。

場が、少しだけ和んでいる。


それはきっと、真守にはできないことだった。


「ということなので先生。楽々浦くんの遅刻は勘弁してあげてもらえませんかね?」


「……え?」


思わず声が漏れる。

今こいつ、俺をフォローしたのか?


「でも、遅刻は遅刻ですから」


担任は少し困ったように息をつく。


「まぁまぁ、初日からこんな扱いは可哀想でしょ!だからこの神宮丸に免じて許してあげてください!」


「神宮丸……」


こいつ——いいやつなのか?


見た目も言動もかなりウザいのに、まさか庇ってくれるとは思わなかった。


「まぁ……たしかに初日っていうこともあるから、今回は見逃してあげるわ」


意外だった。


あんなに冷たそうな担任でも、一応人間らしい判断はするらしい。


(……助かった)


後ろの席のこいつは、かなりウザい。


かなりウザいが、なんだかんだ、悪いやつではないのかもしれなかった。


その後、特に大きな問題もなく自己紹介は終わった。真守の第一印象は最悪のままだったが、ここから挽回していくしかない。


「……よし」


真守は一人、クラスの端で静かに作戦会議を始めた。

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