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俺×恋=0になります。  作者: 黒猫
第一章 俺×春=新しい出会いが待っています。
4/16

3話 俺×後ろ席のクラスメイト=危険人物です。

教室の雰囲気は最悪だった。


なぜ最悪かというと、入学式に俺が遅刻したから……いや、無断放棄してしまったからであって、まるで俺のことを不良扱いするような眼差しで見つめられていた。


しかも、クラス全員だぞ!担任の先生にもそんな目で見られてるし……


「えーっと、楽々浦君だっけ?とりあえず、空いてる席座ってくれるかしら」


担任から指示が出る。


「は、はい、失礼します!」


真守は速やかに席に座る。空いていた席は教室の廊下側、前から3番目の席だった。

まぁ、悪いか悪くないかで言ったら、どちらでもない中途半端な位置だ。


担任の先生は女性の方で、黒髪ショートにシャープなメガネをかけている。見た目からして気の難しそうな人だ。年はそんなに高いわけではなさそうだ。


「なぁ、なぁ」


トントンと肩を叩かれる。後ろ席の坊主頭の男子生徒に話しかけられたのだろう。

入学式を欠席した俺に話しかける奴なんて、とんだ物好きもいたもんだ。

まぁ、無視する義理は俺にはないからそっと耳を貸してやろう。


「ど、ど、ど、どうしたの?」


俺としたことがキョドッてしまった。自分以外の人間、身内も含め、他人と話すのは数ヶ月ぶりぐらいなもので、変な緊張をしてしまう。


「あのさ、入学式欠席した理由って本当なのか?」


「はぁ?」


いきなりその話題か、いや、その話題くらいしかないか。

きっとこいつは、俺の遅れた理由、つまり、生徒を保健室に運んだ出来事を疑っているわけだな。まぁ、俺も自分のことじゃなかったら全く信じないんだがな。


「生徒って、もしかして先輩か?」


「あぁ、先輩しかいないだろ。入学式を欠席したのは俺ぐらいなわけだし」


「ま、まじかよ!もしかして、女子生徒の先輩じゃないだろーな!」


妙なテンション。こいつ、もしかしてウザいやつか?


「そ、その……先輩女子生徒だったよ」


少し言うのを躊躇った。だってこいつ、絶対からかってくるに違いないからだ。


「うひょー!!羨ましいですな!!」


「ちょ、お前声がでかい!」


思った以上の声量で慌てる。口を抑えたかったが、そいつの席が後ろだったため、それは不可能だった。


「そこ、うるさいです!今から一人ずつ自己紹介してもらうので、そう言った妨害行為はやめて下さい」


担任に睨まれる。


完全に巻き込まれた。最初の印象が最悪なだけに、余計に俺の評価が落ちている気が……


「おっと、ごめんな!ちなみに俺の名前は神宮丸(じんぐうまる) 清樹(せいじゅ)、よろしくな!」


急な自己紹介。今から一人ずつ自己紹介をするって言うのに、こいつはウザい上にアホなのか?


それにしても、これって、俺も自己紹介をしたほうがいいのか?神宮丸ってやつに……


「お、俺の名前はーー、


「おいおいっ!」


「な、なんだよ!」


人がせっかく自己紹介に答えてやろうとしたのに、急に止めるなんて礼儀知らずもいいところだ。


「次お前の番だぞ!席立って自己紹介しろよ!」


「えっ、まじかよ」


やばっ、気づいたら俺の順番になっていたか……こいつのせいで全然気づかなかった。


「あの、楽々浦君、次君だから早く席から立って自己紹介してもらえるかしら」


「は、はいっ!!」


完全に呆れられている。俺はきっとこれから担任の先生にマークされるだろう……問題生徒として。


「えっと、俺の名前は楽々浦真守です。好きな食べ物はーー、


自己紹介のコツ。姿勢を正しく、ハキハキとした声で、そしてなによりも笑顔が大切だ。

内容自体は無難でいい。こんな最初の自己紹介で勝負に出てヤケドなんてしたらこの先が大変だ。


そんなやつ誰も近寄らなくなるからな……


「ふぅ……」


練習しといてよかった。特に珍しい趣味や特技に設定をしていなかったおかげで問題なく終われた。

まぁ、ちょっとした問題は払拭できないがな。


と、思っていた矢先……


「えーっと、とくに楽々浦君に質問とかないと思うけど一応聞くわね。質問ある人?」


し、質問!?そんなの聞いてないぞ!

しかも、あの担任、さらっと傷つくこと言いやがって、あれは絶対性格悪いぞ。


「はーい!」


手を挙げたのはやはりあの男。


神宮丸だった。


「へんな質問だけはやめてくれよ……」


そんな俺の期待は見事に打ち砕かれる。


「あのー、保健室に運んだ生徒は女子の先輩だったって本当ですか?」


「お前、まじかよ……」


さっき聞いたことを公衆の面前、つまりクラスメイト全員に公表するってことか?

とくにやましいことは無いにしろ、そんなぶっ飛んだ話し誰が信じるんだよ!?


「えっ、あぁ、まぁ、そうですけど……」


教室の空気がまたもや重くなる。


俺はお前を絶対に許さないぞ……神宮丸め。


「いやー、いいなぁ、登校初日、しかも入学式当日に女子の先輩と仲を深められるなんて羨ましい限りだ!」


またこいつは一人でテンションを上げている。周りはそんな神宮丸を見て笑っている。

その笑いはそんな悪い雰囲気ではない。場が少し和むような、とにかく、俺にはできない至難の技だった。


こいつ、どこまで俺をムカつかせるんだよ。


「と言うことなので、先生。楽々浦君の遅刻は勘弁してあげてもらえますかね?」


「えっ?」


な、なんだ?何かの聞き間違えか?今こいつ俺をフォローするようなこと言ったような。


「でも、遅刻は遅刻ですから」


担任は少し困ったようにため息をつく。


「まぁまぁ、初日からこんな扱いは可哀想でしょ!だからこの神宮丸に免じて許してあげて下さい!」


「神宮丸……」


こいついい奴だった!見かけや先ほどの言動によらず俺をかばってくれるなんて。


だが、きっと先生は「こんな妄想話は信じられません」とか言うんだろうな。


「誰がこんな妄想話を信じろと?」


ほら、予想的中。


「先生、そんなこと言わないでさ、今回は信じてあげましょうよ!」


神宮丸はさらにお願いをする。


「まぁ、たしかに初日って言うこともあるから、今回は見逃してあげるわ」


意外な答え。あんな冷徹な担任も、一応人間だったんだな。


俺の席の後ろのやつは、かなりウザいやつだが、なんだかんだいいやつなのかもしれないな。


とくに大きな問題はなくクラスの自己紹介が終わった。俺の評価は最悪だけど、ここから挽回していくしかない。


俺は一人、クラスの端っこで作戦会議を始めた。

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