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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
最終章 俺×愛の形=それぞれの道へ進みます。〜答え合わせ編〜
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223/224

222話 俺×報告=したくありません。

222話 俺×報告=したくありません。


特待生寮の廊下を歩きながら、真守は大きく息を吐いた。


疲れた。


心の底からそう思う。


赤坂の件で施設まで行き、帰りには意味の分からない少女に付きまとわれ、最後は咲宮に怒鳴られる。

情報量が多すぎた。今日は一日が長かった気がする。


部屋の前に立ち、鍵を取り出す。


ようやく帰れる。そう思いながら扉を開けた瞬間だった。


ガチャ。


「真守くん!」


慌ただしい足音が響く。


パタパタと駆け寄ってきたのは白ヶ崎だった。


真守は思わず目を丸くする。


「咲音?」


「咲音じゃない」


「いや咲音だけど」


「そういうことじゃない」


少し怒っている。だが、本気で怒っている訳ではない。どちらかと言えば心配している時の顔だった。


「遅かったから」


白ヶ崎はそう言う。


「連絡も無かったし」


「……ごめん」


素直に謝る。


今日は本当に色々あった。


施設に行き、赤坂と話し、その帰りに白彼岸と出会った。


簡単に説明しようとするが、結局、長く話してしまった。


「心配した」


白ヶ崎は小さな声でそう言った。


真守は少しだけ視線を逸らす。


こういう時、どう返せばいいのか分からない。ただ、悪い気はしなかった。


「ただいま」


だからそう返した。


白ヶ崎は一瞬だけ目を瞬かせる。それから少しだけ表情を緩めた。


「……おかえり」


そのやり取りを聞いていた真希那がリビングから顔を出した。


「うわ、なに今の」


「なにが」


「新婚?」


「違う」


即答だった。


「いや、もう夫婦みたいだったじゃん」


「違う」

「違う」


二人同時だった。


真希那が吹き出す。


「息ぴったりじゃん」


「真希ねぇ、うるさい!」


「はいはい」


真希那は肩を竦める。


そして興味津々な顔で真守を見る。


「それで?」


「なにが」


「その子」


真守は少し考えた。


どの子かすぐ分かる。


「白彼岸のことか」


「そうそう」


真希那が身を乗り出す。


「どんな子だったの?」


「どんなって……」


説明が難しい。


真守はソファへ腰を下ろしながら改めて、今日の出来事を話し始めた。


白彼岸と出会ったこと。同じ中学だったと言われたこと。高校に入ってから探していたこと。会話が全く成立しなかったこと。特待生寮までついて来たこと。咲宮に追い返されたこと。


話を聞き終えた真希那は数秒黙り込んだ。


そして。


「怖っ」


率直だった。


「だろ」


「怖っ!」


二回言った。


「なにその子」


「俺も分からん」


「ストーカー?」


「多分」


「多分?」


「俺もよく分かってない」


真守がそう言うと真希那は頭を抱える。白ヶ崎も隣で静かに聞いていた。


「で?」


真希那がニヤニヤしながら聞く。


「可愛かった?」


真守は少しだけ考えた。


可愛いか、そう言われると違和感がある。


「可愛いっていうか」


「うん」


「整ってた」


真希那が反応する。


白ヶ崎も反応する。


「整ってた?」


「人形みたいだったな」


正直な感想だった。


白い肌、長い黒髪、整った顔立ち。確かに綺麗ではあった。だが、それ以上に怖かった。


「へぇー」


真希那が面白そうに笑う。


「整ってたんだぁ」


「?」


真守は首を傾げる。


何が面白いのか分からない。


すると横で白ヶ崎が静かにお茶を飲んだ。ほんの少しだけ。そして、無言になる。


真守は気付かない。だが真希那は気付いた。だから余計に面白そうな顔になる。


「ちなみに」


真希那が言う。


「咲音ちゃんとどっちが可愛い?」


真守は即答した。


「咲音だろ」


一秒も掛からなかった。


真希那が固まる。


白ヶ崎も固まる。


「即答じゃん」


「だって聞かれたから」


「いやそうだけど」


真希那が思わず笑う。


横を見る。白ヶ崎は無表情だった。だが、耳だけ少し赤い。


「……」


「咲音?」


「なんでもない」


機嫌は戻ったらしい。


次は、真希那だけが少しだけ不機嫌そうな顔をしている。


「チッ」


「なんで舌打ちした」


「別に」


意味が分からない。


真守は本気で意味が分からなかった。


しばらくそんなやり取りが続いた後、白ヶ崎がふと真面目な顔になった。


「その子」


「ん?」


「大丈夫なの?」


真守は少し考える。


咲宮の言葉を思い出した。


放っておいたら駄目な子。確かにそうかもしれない。手首の傷、焦点の合わない視線、噛み合わない会話。どれも普通ではなかった。


「分からない」


真守は正直に答える。


「でも」


言葉を探す。


「悪意があるようには見えなかった」


白ヶ崎は静かに頷いた。


「そうね」


短い言葉だった。


だが、その一言で十分だった。同じことを感じていたのだろう。怖かった。それでも、放っておけない。そんな感覚。


真希那も珍しく茶化さなかった。


「変な子だね」


それだけ言う。


やがて夜は更けていく。風呂に入り、それぞれが寝る準備を始める。


真守もベッドへ横になった。


目を閉じる。だが、眠れない。自然と、白彼岸の顔が浮かぶ。


長い黒髪、眠そうな目。


『楽々浦様ぁ』


思い出す。そして目を開ける。そのまま、天井が見える。


「……」


意味が分からない。


だが、自分の考えるべきことは別にあった。赤坂、会長、施設、今日の電話。そして、明日の報告。


「……」


正直、したくなかった。会長を信用していない。だからこそ伝えたくない。だが伝えなければもっと面倒なことになる。逃げることも出来ない。


真守は小さく息を吐いた。そしてそのまま眠りについた。


翌朝、目覚めは悪くなかった。途中で何度か目が覚めた気もするが、不思議と身体は軽い。


朝食を食べ、白ヶ崎と登校する。いつもの通学路、いつもの学校、いつもの景色。


けれど。


頭の中だけは全くいつも通りではなかった。


白彼岸、赤坂、会長と考えることが多すぎる。そんなことを考えているうちに校舎へ到着する。


そのまま授業を終え、放課後になると真守は一人、生徒会室の前へ立っていた。


扉を見る。


この向こうに会長がいる。


報告を待っている。だが、できればしたくなかった。だが逃げる訳にもいかない。


真守は小さく息を吐く。


そして。


生徒会室の扉へ手を掛けた。


ガラッ──。

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