表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
最終章 俺×愛の形=それぞれの道へ進みます。〜答え合わせ編〜
PR
219/225

218話 俺×再会前=まだ終わってません。

生徒会室を出た後も、会長の言葉が頭から離れなかった。


『僕に逆らったらどうなるか、分かってるよね?』


あの笑顔、あの目、思い出すだけで胃が重くなる。


校舎を出て寮へ戻り、施設へ向かう準備を整える。

鞄を肩に掛け、スマホを確認する。時刻は昼前。今から向かえば夕方前には戻れるだろう。


「……」


小さく息を吐く。


赤坂の事、今日で何か変わるだろうか。会える保証はない。それでも行くしかなかった。


そんなことを考えていた時だった。


スマホが震え、画面を見る。着信は葵からだった。


「……葵先輩?」


少し意外だった。


通話ボタンを押す。


「もしもし」


『あ、出た』


聞き慣れた声。


どこか安心する声だった。


『今忙しかった?』


「いや」


真守は首を振る。


「今から出掛けるところでした」


『出掛ける?』


少しだけ声色が変わる。


『どこに?』


真守は少し迷った。


だが隠す必要もない。


「赤坂先輩のところです」


数秒、電話の向こうが静かになる。


『……そっか』


葵は小さく呟いた。


そして。


『私も行く』


「は?」


思わず聞き返す。


『会える保証ないでしょ』


「まぁ……」


『一人より二人の方がいいよ』


当然のような口調だった。


『それに』


少しだけ笑う。


『私、施設の人と仲良いし』


「どうしたらそこまでの関係になれるんですか?」


『えへへ』


誤魔化された。


理由は分からなかったが、断る理由もなかった。結局、駅で待ち合わせることになる。


その前に、真守は教室へ向かった。白ヶ崎に伝えておきたかったからだ。

教室へ入ると、白ヶ崎は窓際で本を読んでいた。


真守に気付くと顔を上げる。


「どうしたの?」


「今から施設に行く」


白ヶ崎の表情が少し変わる。


「……そう」


「葵先輩も一緒」


その瞬間だった。


白ヶ崎の眉が僅かに動く。本当に僅かだった。だが真守は気付かない。


「二人で?」


「うん」


「……そっか」


少しだけ間、それから白ヶ崎は小さく息を吐いた。


「ちゃんと報告してくれてありがとう」


「え?」


「何でもない」


そう言って微笑む。少しだけ無理をしているようにも見えた。


「いってらっしゃい」


「……ああ」


真守は頷いた。


そのまま教室を出る。


残された白ヶ崎は窓の外を見ながら小さく頬を膨らませた。


「……二人で、か」


誰にも聞こえない声だった。


駅へ着くと、既に葵が待っていた。


私服姿だった。いつもより少しだけ大人っぽく見える。


「お待たせしました」


「全然待ってないよ」


葵が笑う。


二人で電車へ乗り込む。車内は比較的空いていた。並ぶように座る。


次第に、会話が始まる。最初は赤坂の話だった。だが、そればかりだと空気が重くなる。


自然と話題は別の方向へ移った。


「そういえば」


葵が真守を見る。


「付き合ってどう?」


「……何がですか」


「白ヶ崎さんと」


真守が固まる。


葵は少しだけ笑った。


「そんな反応するんだ」


「まだ慣れてなくて……」


「ふふ」


葵は本当に楽しそうだった。前のような寂しさも、辛そうな様子もない。


それを見て少しだけ安心する。


「白ヶ崎さん大事にしなよ?」


「……はい」


「よろしい」


葵は満足そうに頷いた。


施設へ到着する。見慣れた建物だった。だが、以前来た時よりも緊張する。


受付へ向かう。


けれど、結果は予想通りだった。面会は断られる。


「申し訳ありません」


職員が頭を下げる。


真守は小さく息を吐いた。やはり難しい、そう思った時だった。


「あのー」


葵が前へ出る。


柔らかい笑顔。いつもより少しだけ猫を被っている気がした。


「電話だけでもダメですか?」


職員が困った顔をする。


葵はさらに畳み掛ける。


「お願いします」


「いや、その……」


「お願いします」


「……」


真守は唖然とした。


数分後、電話を繋いでもらえた。意味が分からなかった。


「なんでですか」


「愛嬌」


「怖いです」


「失礼だなぁ」


葵が笑う。


しばらくして、受話器の向こうから声が聞こえた。


『……もしもし』


赤坂だった。


久しぶりに聞く声。だが以前より弱々しい。疲れているようにも聞こえた。


真守は少しだけ目を閉じる。


「赤坂先輩」


『……真守か』


「……はい」


短い沈黙。


真守はゆっくり口を開いた。


「まず謝らせてください」


『……』


「俺」


言葉を探す。


「赤坂先輩の話をちゃんと聞かなかった」


二人が最後に面と向かってしたやり取り。拒絶、突き放した言葉、それらを全部思い出す。


「勝手に決めつけてました」


『……』


「すみませんでした」


電話の向こうは静かだった。


やがて。


『ううん』


小さな声。


『いいよ』


それだけだった。


その一言が妙に胸に刺さる。


真守は話を続けた。


会長のこと、最近の異常な行動、生徒会で起きていること、全部。


赤坂は黙って聞いていた。


そして。


「赤坂先輩の居場所」


真守が言う。


「教えてもいいですか?そうしないと生徒会のメンバーたちが──」


『……いいよ』


即答だった。


真守は驚く。


『でも』


少しだけ間。


『捕まったらどうしようとか、心配しないで』


「え?」


『私には当てがあるから』


意味が分からない。だが赤坂はそれ以上説明しなかった。


真守はもう一つ聞く。


「会長と昔何があったんですか」


沈黙。


少しだけ長い沈黙だった。やがて赤坂が口を開く。


『小学生の頃』


「……」


『出会った』


短い言葉だった。


『でも』


少しだけ笑う。


どこか悲しそうな笑みだった。


『私は何もしてない』


「……」


『向こうが勝手に嫌っただけ』


それ以上は続かなかった。


真守はさらに聞こうとする。


だが。


『やっぱり』


赤坂が言う。


『この話はやめとく』


「先輩?」


『長くなるから』


そして。


『またね』


通話は切れた。


結局、疑問は増えただけだった。それでも前進はした。そう思うしかない。


施設を後にする。


帰りの電車。


葵と別れた後、真守は一人で駅を歩いていた。夕方だった。人混みの中を進む、その時だった。


「……」


誰かが立っている。


女の子だった。


見覚えのない制服。


黒髪、腰まで伸びた長い髪、綺麗に揃えられた姫カット、やけに細い。


そして、袖から覗く手首には、薄い傷跡が見えた。


「……?」


真守が足を止める。


すると少女が顔を上げる。


目が合う。


その瞬間、ふわりと笑った。


「やっと見つけたぁ……」


力の抜けた声、眠そうな声、なのに妙に耳に残る。


「探したんだよぉ……?」


真守は首を傾げる。


知らない。


少なくとも会った記憶はない。だが、少女は当たり前のように続けた。


「楽々浦様ぁ」


名前を呼ばれる。


真守の動きが止まる。


その横で、偶然まだ改札付近に残っていた葵の表情も僅かに強張った。


知らない少女。


なのに、その視線だけは異様だった。まるでずっと前から知っているみたいに。


少女は嬉しそうに笑う。


「久しぶりぃ……」


真守には、その言葉の意味が分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ