表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
最終章 俺×愛の形=それぞれの道へ進みます。〜答え合わせ編〜
PR
218/224

217話 俺×味方=まだ残っていました。

昨夜は何度も目が覚めた。アリスと黒ヶ峰から聞かされた話が頭から離れなかったからだ。


会長、赤坂、盗聴器、監視カメラ、生徒会。どれも現実味が薄い話だったはずなのに、今では全部が現実として目の前にある。


隣を見る。白ヶ崎が静かに歩いている。いつも通りだった。けれど、昨日までとは少し違う。

手を伸ばせば届く距離にいるだけで、不思議と気持ちが落ち着く。


だからこそ思う。


絶対に巻き込みたくない。守りたい。そんなことを考えながら学校へ向かっていた。


教室へ入った瞬間だった。


空気がおかしい。妙に騒がしい。いつもの朝の雑談とは違う。

何人もの生徒がスマホを見ている。そして、その視線が一斉に真守へ向いた。


「……?」


嫌な予感がした。


次の瞬間、神宮丸が走ってきた。


「楽々浦!」


「なんだよ」


「大丈夫か!?」


いきなり肩を掴まれる。


真守は思わず眉をひそめた。


「何が」


「これだよ!」


神宮丸がスマホを突き出す。


画面を見る。


そして。


「……あぁ」


思わず目を閉じる。


例の動画だった。


繁華街、不良達、土下座する自分。最悪だった。しかも再生回数が妙に伸びている。


「これお前だろ!?」


「俺だな」


「なんでそんな冷静なんだよ!」


神宮丸が叫ぶ。


だが、予想していなかったわけではない。撮影されていた。だから拡散もされると思っていた。ただ、予想外だったのは周囲の反応だった。


「でもさ」


後ろの男子が言う。


「白ヶ崎を守るためだったんだろ?」

「そうらしいな」

「なら別によくね?」

「俺もそう思う」


次々に声が上がる。


真守は少しだけ目を見開いた。


すると神宮丸が振り返る。


「おーい石井!」


教室の奥から一人の男子が歩いてくる。


真面目そうな黒髪、整った制服。B組の特待生枠の石井だった。


正直あまり話したことはない。


石井は真守の前まで来ると静かに口を開いた。


「楽々浦」


「……あ、うん」


少しだけ気まずい。


すると石井は真っ直ぐ真守を見る。


「君のやったことは正解じゃないかもしれない」


「……」


真守は黙る。


「でも」


石井は続ける。


「守ろうとした相手は間違っていない」


教室が静かになる。


「だから安心してくれ」


石井が言った。


「君のことは僕が庇う」


真守が目を瞬かせる。


石井はさらに続けた。


「クラスの男子には僕から話を通しておく」


その声に迷いは無かった。


「少なくとも僕達は、君を笑う気はない」


真守は言葉を失う。


すると今度は女子側から声が飛ぶ。


「それ、女子もだから」


振り返る。


白ヶ崎とよく話している女子生徒だった。腕を組みながらこちらを見ている。


「咲音ちゃん泣かせたら、楽々浦でも許さないけど」


「おい」


神宮丸がツッコむ。


「今そこじゃないだろ」


「大事なことでしょ」


女子生徒は肩をすくめた。


それから白ヶ崎を見る。


「それと、咲音ちゃんは女子全員で守る」


「……え?」


白ヶ崎が固まる。


「だから安心しな」


他の女子達も頷く。


「そうそう」

「うちら味方だし」

「変な噂流れたら言って」


白ヶ崎の目が少しだけ揺れる。


真守も同じだった。予想していなかった。もっと冷たい反応をされると思っていた。


神宮丸がニヤリと笑う。


「あと担任も味方にしようぜ」


「は?」


「俺が説得する」


「いや」


真守は反射的に止める。


その瞬間だった。


頭の中に黒ヶ峰の言葉が蘇る。盗聴器、監視カメラ、誰が聞いているか分からない。


真守は無意識に天井を見上げた。それを見た神宮丸が、不思議そうな顔をする。


「どうした?」


「……いや」


少し考える。


それから首を振った。


「この話は一旦終わりで」


「え?」


「担任には俺から話す」


神宮丸が納得していない顔をする。だが、それ以上は聞かなかった。


真守は小さく息を吐く。


「みんなありがとう」


その言葉を残して、教室を出た。


生徒会室へ向かう。廊下を歩くたびに気分が重くなった。


教室では味方がいた。だが、ここにはいない。そんな予感がしていた。


扉の前で立ち止まる。


そして開く。


「失礼します」


その瞬間だった、異様な空気が肌を刺した。


「っ……」


坂下が壁際に追い詰められていた。


会長が目の前に立っている。


笑顔だった。いつも通りの優しい笑顔。それなのに坂下の顔は青ざめている。


「だからね坂下君」


会長は穏やかに言う。


「僕は何度も聞いているんだ」


坂下が震える。


「ち、違います……」


「違わないよ」


優しい声だった。


次の瞬間、会長の手が坂下の髪を掴んだ。


「っ!?」


坂下が声を漏らす。


真守の目が見開かれる。


「会長!」


黒ヶ峰が立ち上がる。


だが、会長は坂下から手を離すと、今度は黒ヶ峰へ視線を向けた。


ずっと、笑顔だった。


「黒ヶ峰君」


優しい声。


そして、髪を掴む。


「っ……」


黒ヶ峰が顔をしかめる。


「やめてください!」


真守が飛び出した。


会長の腕を掴む。


その瞬間、会長がこちらを見る。変わらず笑顔だ。だが目だけが笑っていない。


「……楽々浦君」


静かな声。


背筋が寒くなる。それでも真守は離れなかった。数秒の沈黙。やがて会長が手を離す。


「ごめんね」


穏やかな声。


まるで本当に反省しているみたいだった。だから余計に気味が悪い。


その横で三宝は黙っていた。山影も黙っていた。誰も止めなかった。


しばらくして、真守は会長室へ呼ばれる。


扉が閉まる。


二人きりの空間。そのまま、会長は机へ腰掛けながら言った。


「楽々浦君」


声は穏やかだった。


だが、以前より明らかに冷たい。


「赤坂の件だ」


真守は黙る。


「もう待てない」


会長が言う。


「早急に解決してほしい」


その声には焦りが混じっていた。


初めてだった。会長がここまで感情を出すのは。


「……はい」


真守は短く返す。


すると会長が笑う。


「僕に逆らったらどうなるか」


少しだけ間。


「分かってるよね?」


脅しだった。


はっきりとした脅し。それでも、真守は表情を崩さない。


「今日中に」


静かに言う。


「居場所を掴みます」


会長が目を細める。


真守は頭を下げ、そして部屋を出た。


外へ出ると、作業をしている三宝と山影がいる。真守はそのまま二人へ向かった。


「聞きたいことがあります」


三宝が顔を上げる。


「なんじゃ」


「なんで止めなかったんですか」


空気が止まる。


真守は続けた。


「坂下さんも、黒ヶ峰も、なんで見てるだけだったんですか」


三宝は少しだけ目を閉じた。


それから言う。


「会長のやり方じゃ」


「……」


「昔からそうじゃ」


真守は何も言わない。


山影も黙っていた。


「俺達は関係ない」


三宝が続ける。


「生徒会の問題じゃ」


その言葉を聞いた瞬間、真守の中で何かが冷めた。


「……そうですか」


それだけ言う。


もう何も期待していなかった。真守はそのまま背を向け、生徒会室を出る。


向かう先は決まっていた。


赤坂の全部を知るために、真守は一人、施設へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ