表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
最終章 俺×愛の形=それぞれの道へ進みます。〜答え合わせ編〜
PR
210/224

209話 俺×彼女=まだ慣れません。

昨夜は、妙に眠りが浅かった。眠ったと思ったら目が覚める。


時計を見る。まだ数十分しか経っていない。そんなことを何度も繰り返していた。

理由は分からない。疲れているはずなのに、なぜか深く眠れなかった。


隣から聞こえてくる静かな寝息に安心して、再び目を閉じる。それでもまた目が覚める。


結局、何度目かも分からない寝返りを打ったあとで、ようやく朝を迎えた。


だから当然、寝不足だと思っていた。


けれど——


「……あれ」


目を開いた真守は小さく首を傾げる。


頭は意外なほど冴えていた。


体も重くない。


むしろ最近の中では調子がいいくらいだった。

何度も目が覚めたはずなのに、不思議と眠気は残っていない。


「……なんでだ」


小さく呟く。


答えは分からない。


ただ、胸の奥にずっと溜まっていた何かが、少しだけ軽くなっている。そんな感覚だけはあった。


昨夜の嫉妬の話。


ちゃんと理解して、前に進めた気持ち。それが思っていた以上に大きかったのかもしれない。


ベッドから体を起こす。


窓の外では朝日が昇り始めていて、部屋の中を淡く照らしていた。


その光をぼんやり眺めながら、真守は小さく息を吐く。


「……今日も学校か」


呟いて立ち上がる。


いつもと同じ朝。けれど、昨日までとは少しだけ違う朝だった。


制服に着替えてリビングへ向かう。ドアを開けると、真希那と白ヶ崎が先に朝食の準備をしていた。


「おはよう」


「おはよう真守くん」


「おはよう、まーくん」


いつも通りの挨拶。


それなのに、どこか落ち着かない。


視線が合うだけで妙に意識してしまう。白ヶ崎も同じなのか、少しだけ視線を逸らした。


「はいはい」


真希那がニヤニヤしながら二人を見る。


「朝から静かだねぇ」


「誰のせいだよ」


真守が呆れたように返す。


「私じゃないもん」


そう言いながら笑っている時点で信用できない。


「というか二人とも会話しなよ」


「……」


「……」


二人同時に黙る。


真希那が吹き出した。


「ほら、付き合った途端これだよ」


「うるさい」


即答する。


その横で白ヶ崎が小さく笑う。


そんな他愛もないやり取りをしながら朝食を済ませ、二人は学校へ向かった。


教室へ入る。いつも通りの朝だった。そして、席へ向かおうとした時だった。


「おい楽々浦」


神宮丸が声をかけてくる。


「……なんだよ」


「白ヶ崎さ」


神宮丸がちらりと視線を向ける。


その先では、白ヶ崎が女子たちと話していた。


「なんか最近機嫌良くね?」


「……は?」


意味が分からない。


「いやだから」


神宮丸が続ける。


「ここ一週間くらい、ずっと機嫌悪かったじゃん」


「……そうだったか?」


「そうだっただろ」


即答だった。


「話しかけても塩だったし」


「元からだろ」


「いや最近さらに塩だった」


失礼な話である。


「でも今日は違う」


神宮丸が断言する。


「なんか柔らかい」


「……」


真守は白ヶ崎を見る。


正直よく分からない。


いつも通りに見える。


「お前分かってねぇなぁ」


神宮丸が呆れた顔をする。


「彼氏だろ?」


「まだ慣れてねぇんだよ」


「彼氏がそれ言う?」


「うるせぇ」


ため息を吐く。


すると、向こうで女子と話していた白ヶ崎が、ふとこちらを見る。


目が合う、ほんの一瞬だけ。


それから——


少しだけ笑った。


本当に少しだけだった。けれど、神宮丸はそれを見逃さなかった。


「ほら」


ニヤニヤしながら言う。


「今の」


「……」


真守は何も言わなかった。


ただ、胸の奥が少しだけ落ち着かなくなった。


ホームルームが始まる。


先生の話を聞きながらも、真守の頭の中には別のことが浮かんでいた。


赤坂、施設、そして葵から聞いた話。


墓参り。


施設から少し離れた街にある墓地。そこへ定期的に通っているという話。

大した情報じゃないかもしれない。それでも、今ある手掛かりの中では一番具体的だった。


チャイムが鳴り、ホームルームが終わった。


生徒たちが立ち上がり始める。その中で真守は席を立たち、真っ先に白ヶ崎の元へ向かう。


「咲音」


「……なに?」


白ヶ崎がこちらを見る。


名前を呼ぶ。それだけで少し照れくさそうに目を細めた。


「今日の放課後、少し付き合ってほしい」


「……?」


白ヶ崎が首を傾げる。


真守は周囲に聞こえないよう声を落とした。


「赤坂先輩の件で、気になる場所がある」


その瞬間、白ヶ崎の表情が変わる。


「……何か分かったの?」


「まだ分からない」


正直に答える。


「でも、手掛かりかもしれない」


少しだけ間を置く。


「墓地だ」


「……墓地?」


「ああ」


真守は頷く。


「葵先輩から聞いた。赤坂先輩が定期的に行ってる場所らしい」


白ヶ崎は少しだけ考え込む。


それから小さく頷いた。


「……分かった、一緒に行く」


その返事に迷いはなかった。


真守も小さく頷く。


一人で行くより、白ヶ崎がいてくれた方がいい。そんなことを自然に思っている自分に気付いて、少しだけ苦笑した。


窓の外を見る。青空が広がっている。平和な景色だった。けれど、その先に待っているものはきっと平和じゃない。


そんな予感だけがあった。


放課後、二人は学校を出る。向かう先は、施設から少し離れた街にある墓地だった。


そこで何が待っているのか。


まだ誰も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ