表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
PR
204/224

203話 俺×違う夜=落ち着ける気がしません。

夜になった。夕食も終わり、三人はいつものようにリビングへ集まっていた。


いつもと同じ時間、いつもと同じ場所、いつもと同じ顔ぶれ。本来なら何も変わらないはずだった。


それなのに、空気だけがまるで違う。


「……」


真守はソファに腰を下ろしたまま、小さく息を吐く。


落ち着かない。


とにかく落ち着かなかった。理由は分かっている。今日の昼までは違った。いや、正確には今日の放課後までは違った。


けれど今は違う。


白ヶ崎はもうちょっとした幼馴染でも仲の良い同級生でもない。


彼女だ。


そう考えた瞬間、隣に座っているだけで妙に意識してしまう。


「……」


ちらりと横を見る。


白ヶ崎はテレビの方を向いていた。だが全く内容は見ていないのだろう。


耳が真っ赤だった。頬も少し赤い。多分、自分も似たような顔をしている。

視線が合いそうになって、慌てて前を向く。そんなことを何度も繰り返していた。


「……」


向かいでは真希那が体育座りをしている。そして、ずっとこちらを見ていた。


「……なんだよ」


真守が耐え切れずに聞く。


「……」


返事はない。


ただ見ている。


しかも真顔だ。


「怖ぇよ」


「……」


真希那はしばらく黙っていた。


そして数秒後。


「……ねぇ」


静かに口を開く。


「今日、どうするの?」


「……何が」


「寝る場所」


「……」


空気が止まった。


真守の思考も止まった。


白ヶ崎も固まった。


真希那だけが真顔だった。


「いやだって」


当たり前のことを確認するように続ける。


「今まで三人で寝てたじゃん」


「……」


確かにそうだった。いつからか当たり前になっていた。


事件のため、護衛のため、気分を安らげるため、色々理由はあった。


でも気付けばそれが日常になっていた。


「……」


真守は横を見る。白ヶ崎と目が合うが、一瞬で逸らされた。


無理だ。


二人とも同じことを考えている。


「……」


沈黙が流れる。


その中で。


「……今日は」


白ヶ崎が小さく口を開いた。


真守も真希那も反応する。


「……」


「真希那さん」


白ヶ崎が顔を真っ赤にしたまま言う。


「自分の部屋で寝てください」


「……え?」


真希那が固まる。


真守も固まる。


「……え?」


思わず同じ声が出た。


白ヶ崎はさらに顔を赤くしながら続ける。


「だ、だって……」


声が少し震えていた。


「彼氏と彼女なので」


「……」


「……」


「……」


数秒間、本当に誰も動かなかった。


そして。


「うわあああああああああああああん!!」


真希那が泣いた。


「まーくんがぁぁぁぁぁ!!!」


「だからなんで泣くんだよ!!」


「だってぇぇぇ!!」


ソファに突っ伏して本気で泣いている。


「ほんとに!?ほんとに二人で寝るの!?」


「言い方!!」


「変なことするの!?」


「するか!!」


「っ……!」


白ヶ崎の顔がさらに真っ赤になる。


耳どころか首まで赤い。


「ま、真守くん!!」


「俺のせいじゃねぇだろ!!」


「まーくん女性経験ないもんねぇぇぇ!!」


「うるせぇ!!」


「絶対テンパるよぉぉぉ!!」


「もう黙れ!!」


騒がしい。


本当に騒がしい。さっきまでの甘い空気が全部吹き飛ぶくらい騒がしかった。


それなのに、白ヶ崎は途中から小さく笑っていた。真守も呆れながら笑っていた。

真希那がいると、どんな空気でも長続きしない。それが少しありがたかった。


しばらくして。


「……うぅ」


真希那が涙を拭きながら立ち上がる。


「……分かったもん」


「全然分かってない顔してるぞ」


「お姉ちゃん空気読むもん……」


「絶対納得してねぇだろ」


「……」


真希那は少しだけ黙る。そして、さっきまでとは違う顔で二人を見る。


「……幸せになってね」


ぽつりと呟いた。


「……」


真守が少し目を見開く。


白ヶ崎も驚いたような顔をしていた。


「……真希ねぇ」


「でも寂しい」


即答だった。


「台無しだよ!!」


「だって寂しいんだもん!!」


真希那は涙目で叫ぶ。


「今までずっとまーくん中心で生きてきたんだから!!」


「重いな!!」


「重くて何が悪い!!」


開き直った。


真守は頭を抱える。白ヶ崎も困ったように笑っていた。


けれど、その言葉は本音だった。真希那はずっと真守を見てきた。だからこそ今日という日が嬉しくて、だからこそ少し寂しかった。


その気持ちが伝わるから、真守も強くは言えなかった。


「……」


やがて真希那は部屋へ向かう。


扉の前で立ち止まり。


「まーくん」


「なんだよ」


「本当に変なことしたらダメだからね」


「だから何もしねぇよ!!」


「ほんとぉ?」


「寝ろ!!」


真希那はケラケラ笑いながら部屋へ消えた。


扉が閉まる。


静かになる。


さっきまでの騒がしさが嘘みたいだった。


「……」


「……」


誰も喋らない。


妙に静かだった。


「……あの」


先に口を開いたのは白ヶ崎だった。


「……すみません」


「何が?」


「勢いで言っちゃった」


恥ずかしそうに俯く。


「……」


真守は少しだけ笑う。


「俺も断れなかったし」


「……」


白ヶ崎がこちらを見る。


少しだけ安心したようだった。


「……嫌だった?」


恐る恐る聞いてくる。


「いや」


真守は即答する。


「嫌じゃない」


「……っ」


また赤くなる。


付き合う前なら見られなかった顔だった。そんな白ヶ崎を見るたびに、少しだけ胸が温かくなる。


やがて二人はベッドへ入った。


距離は空いている。けれど、不思議なくらい近く感じる。


「……」


天井を見上げる。


眠れる気がしない。


隣から聞こえる呼吸、シャンプーの香り、意識しない方が無理だった。


「……落ち着かないな」


思わず呟く。


すると。


「……私も」


すぐ隣から返事が来た。思わず少し笑ってしまう。白ヶ崎も同じだったらしい。


その後は静かだった。


呼吸の音だけが聞こえる。ほんの少しだけ距離が近付く気配がした。けれど、それ以上は何もない。


「……おやすみ」


「……おやすみ」


小さなやり取り。


それだけだった。それでも、今までで一番安心できる夜だった。




翌朝。


「おはようカップル」


リビングへ入った瞬間だった。


「「っ!?」」


二人同時に固まる。


真希那がニヤニヤしていた。


「朝からうるせぇ!!」


「だって面白いんだもん」


「面白くねぇよ!!」


白ヶ崎は既に顔を逸らしている。


耳が真っ赤だった。


「……」


真守は悟った。


もう無理だ、隠せる気がしない。


そして、そのまま登校する。教室へ入った瞬間、神宮丸が固まった。


「……お前ら」


「……」


「付き合った?」


鋭すぎた。


白ヶ崎が硬直する。


真守は小さく息を吐いた。


もう隠す意味もない。


「……まぁ」


肩を掻く。


「そういうことになった」


「マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


校舎中に響きそうな声だった。


「うるせぇ!!」


「だって!!」


神宮丸は本気で喜んでいた。


「うわぁぁぁ青春してんなお前ぇぇぇ!!」


「朝から疲れる……」


「白ヶ崎!!おめでとう!!」


「……ありがとう」


照れながら返す白ヶ崎を見て、真守は少しだけ笑った。本当に付き合ったんだなと、ようやく実感が湧いてくる。


騒がしい。


昨日も今日も騒がしい。けれど、そんな日常が、少しだけ嬉しかった。


「じゃあ俺、生徒会行くわ」


「うん」


白ヶ崎が小さく頷く。


その表情は昨日までより柔らかかった。


真守も自然と笑う。そして背を向け、生徒会室へ向かう廊下を歩く。


昨日までとは少し違う。


守りたいものができた。そんな実感が、胸の奥に静かに根付いていた。


そして真守は、生徒会室の扉の前で足を止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ